★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

知っておきたい年金のはなし    第212号 2009年4月11日発行

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

先日、書店で、「老後は手取りで考えよう」というような内容の本を見ました。
これはとても大切な視点だと思います。

年金や雇用保険の受取りを考えると、1円でも多くとか、総額で多くなるようにというふうに考えてしまいます。
しかし、人の寿命は誰にもわからないので、一番よい方法もわかりません。

働き続けると確かに、在職老齢年金のしくみで年金はカットされます。
でも、給料という収入は入ってきますね。
入ってくるお金で考えてみることが大切です。

年金か、給料か、入っているお金の種類は異なりますが、全部でいくら収入があるかで考えていく方がよいのではないかと思います。

では、今日は、加給年金についてのお話です。
入ってくるお金を意識して読んでみてください。

……………………………………………………………………………………………
第212号 退職改定
★★★ 加給年金を考えれば ★★★
……………………………………………………………………………………………

綾子さんは60歳で老齢厚生年金の請求をしました。
綾子さんは、最初はOLでしたが、結婚・出産で退職。しばらく専業主婦でした。
そのうち、夫が自営業をはじめました。
経営は大変で、綾子さんは、家計の足しにと、パートに出ることになりました。その後、働く時間も増えて、勤め先で厚生年金に加入し、60歳まで働いてきました。

60歳で年金の手続きをした時の状況です。
綾子さんの厚生年金加入期間は19年。19歳から26歳まで7年間。48歳から60歳まで12年間です。
その他は国民年金の保険料を払ったり、免除を受けたりしていました。
未納期間はありません。
ですから、60歳から報酬比例部分の老齢厚生年金をもらうことができました。

定額部分(1階の年金)開始は62歳。
60歳時点で厚生年金加入期間は19年ですが、62歳時には厚生年金加入期間も20年になっています。
2歳年下の夫は、自営業で、厚生年金加入期間は10年ほどしかありません。
綾子さんは、62歳から加給年金額が加算されるものと思っていました。

しかし、このままでは、65歳になるまで加給年金額は加算されないと言われ、びっくり。
いったいどういうことになっているのだろうと綾子さんは思いました。

●配偶者加給年金とは

年金の配偶者手当(家族手当)と考えてください。

●配偶者加給年金の条件は

厚生年金加入期間が20年以上(中高齢の特例で15年〜19年)あること。
生計維持関係のある65歳未満の配偶者がいること。

●いつから加算される?

1階と2階の年金が支給されるようになってからと考えてください。
定額部分と報酬比例部分が支給されるようになったときからです。
生年月日によっては定額部分のない人もありますが、その場合は65歳からです。

●60歳時点で19年の場合

綾子さんは60歳の受給権発生時には、厚生年金加入期間が19年でした。
若い頃にも厚生年金加入期間があるので、中高齢の特例には該当しませんでした。
ですから、60歳時点では、加給年金額の要件は満たしていないことになります。

●61歳では20年になる

綾子さんはこれからも働く予定なので、61歳で厚生年金加入期間は20年になります。
しかしその後、定額部分(1階の年金)が開始される62歳から、加給年金額は加算されません。

●年金額の再計算

年金額の再計算は、退職後、1ヵ月を経過した日の属する月からとなっています。
つまり、1度、退職しないと、年金額は再計算されないのです。
退職しなければ、65歳になるまで、60歳時点の厚生年金加入期間19年のままで計算されます。

●このままでは加給年金額は加算されない

綾子さんがこのまま働き続けると、次に年金額が再計算されるのは65歳です。
ですから、65歳になるまで、加給年金額は加算されないことになります。

●一度退職したほうがお得?

配偶者加給年金額は年額396,000円です。けっこう大きい額です。
いったん退職し、1ヵ月が経過すれば、加給年金額がプラスされます。

●都合よくはいかないもの

そして、またお勤めする・・・
しかし、そんなに都合のよいことにはなりませんね。
加給年金額のために仕事を辞めるより、働いて収入を得る方がずっとお得だと考えるといいでしょう。
いったん退職し、1ヵ月後に同じ条件で再雇用してくれるのであれば、都合よくいくでしょうけれど。

……………………………………………………………………………………………
これまで60歳以降の生活設計をテーマにセミナーをしてきました。
60歳の定年をむかえて、リタイアする場合、働き続ける場合、年金や雇用保険はどうなるか、どのように生活設計をしていくかという内容です。

今年は、65歳以降をテーマにして、新しいセミナーをさせていただくことになりました。
60歳と65歳では、社会保険についても異なるのです。

そこでは、実際に入ってくる収入で考えていくことが大切だと思います。
年金で得をしたいと思っていても、結局は、トータルでは得にならないこともあります。
そんな視点で、「65歳以降の生活」も大切なテーマとして、新しいセミナーに取り組んでいきたいと思います。
また、ご案内しますので、そのときは、ご参加ください。