★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第214号 2009年5月7日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 正しく年金をもらう、これはあたりまえの権利です。 その権利が侵害されていることから、年金問題は起こっています。 間違われてもらえなかった年金については、5年の時効にかかわりなく、最初から全部もらうということも、考えてみれば当然ですね。 そのために「厚生年金給付特例法」も制定されました。 しかし、この特例法は、実はいろいろな問題を持っているのです。 考えようによっては、年金記録問題の解決を妨げるものとなっているのかもしれません。 …………………………………………………………………………………………… 第214号 厚生年金給付特例法 ★★★ 会社に責任があるの? ★★★ …………………………………………………………………………………………… 彰さん夫婦にとっても、年金問題は他人事ではありませんでした。 彰さんの妻は、独身時代に働いていた会社の年金記録がもれていました。 そして彰さんには、学生時代の国民保険料が出てきました。彰さんは支払った記録はないのですが、両親が保険料を払ってくれていたのです。 わからなければ、損をしてしまうところでした。 ずさんな国の管理に腹が立ちました。 でも、すぐに見つかったので、彰さんの場合はよかったのです。 58歳の彰さんは、会社で総務・人事部長をしています。 ちょうど、年金記録問題が大きくなってきたころ、退職した元社員のAさんから30年前の給与台帳が残っていないかという問い合わせがありました。 彰さんの会社では、当時の資料は全部廃棄しています。Aさんに関わる記録は残っていませんし、誰も詳しいことは覚えていません。 Aさんが在籍したのは1年程度で、現在、Aさんは65歳です。 社員にAさんに関する記憶はありませんでした。 彰さんは「もう何も残っていません」とAさんにお話しました。 それが事実なのですから。 彰さんは、そのままAさんの問い合わせを忘れていました。 ところが、最近になって、Aさんが「厚生年金加入期間が短い」と言って第三者委員会へ申し出たこと、そして、Aさんの主張どおり認められたということを聞きました。 そして、会社に届いたのは、当時の社会保険料を払うようにという文書だったのです。 当時の保険料は少ないものですが、その何倍もの延滞金がついていました。 Aさんの申立て期間は3ヵ月ですし、金額としては、払えない金額ではありません。 しかし、これは、会社が納付しなければならないものでしょうか。 だいだい、会社が誤って保険料を払っていなかった証拠はどこにあるのでしょうか。 彰さんは対応に困ってしまいました。 ●保険料の徴収は2年が時効 保険料の徴収については2年が時効で、時効が消滅してしまうと、年金として給付する ことができません。 ●特例法とは 簡単にいえば、通常では時効にかかる場合であっても、年金として給付できるしくみを作ったものです。 ●特例法の対象はふたつのケース 事業主が被保険者の保険料を控除した事実があるにもかかわらず、保険料を納付しなかったことがあきらかな場合、 あるいは、保険料を納付する義務が履行されていたか否かが明らかでない場合 ●Aさんの主張は Aさんの厚生年金加入期間は3月末まで(4月1日喪失)となっていますが、実際には6月末まで働いていたという主張です。 Aさんは当時の給与明細などは持っていません。 しかし、何らかの証拠や証言を集めたのでしょう。 年金記録確認第三者員会では、Aさんの主張どおりになりました。 そして、会社に、その間の保険料納付の「勧奨」を行います。 ●保険料と延滞金 「勧奨」されるのは、3ヵ月分の保険料(本人負担分と事業主負担分)と延滞金です。 30年以上経過していますので、延滞金が保険料の数倍にもなります。 ●勧奨とは? 保険料の徴収権は2年で時効になっているので、強制納付の要請はできません。 あくまでも、任意による納付をお願いするということです。 ●応じなければ? 期限までに納付することを申し出しない場合は、会社名称、事業主の氏名、元役員の氏名をインターネットで公表するとしています。 ●申出後、納付しないとき 納付すると申し出て納付しない場合は、強制徴収の対象となります。 ●会社のミス? そうじゃない! 彰さんはこれまでの経験から会社のミスではないと思っています。 事実上の退職と資格喪失日が異なることなどありません。 ミスならミスで認めることになりますが、納得できないのに申し出するとは言えません。 かとって、申し出しないで企業名が公表されるのも、何か悪いことをしているようで困ります。 ●慎重に対応を 彰さんは、どのような事実でもって、Aさんの厚生年金加入期間の訂正が認められたのか、確認してみるとよいでしょう。 そして、会社がそうした事実を認めないというのであれば、保険料を納付するという書面による申出はしないということです。 まずは、すぐに書面で申出せずに、調査をすることからはじめていくべきでしょう。 …………………………………………………………………………………………… 社会保険庁が昔のことはわからない、記録がないと言っているように、企業でも何十年の前のことはわからないでしょう。 法律で定められた保存期間がすぎてしまえば、書類を廃棄しても問題ないのです。 記録間違っていれば訂正し、受給権発生時から年金を支給するということは大切なことです。 しかしながら、企業のミスがはっきりしないのに、企業にその負担を押しつけるというのも、問題があると思います。(当然、ミスだという根拠はあるのでしょうけれど) 第三者員会で認められたからといって、企業に責任があるとは言えません。 社会保険事務所や国に責任がある場合もあります。 違法を許すのではありません。 ミスはミスで正すということを前提にします。 しかし、この特例法には、すっきり納得できません。 この法律は、年金記録問題の解決を阻む一因となっているのではないでしょうか。 厚生年金給付特例法について詳しいことは、ここをみてください。 http://www.sia.go.jp/topics/2007/n1218.pdf …………………………………………………………………………………………… ●利息軽減法が成立 利息軽減法では、厚生年金、健康保険料、雇用保険料などの延滞利息を現行の年14・6%から引き下げて、国税の延滞利息(今年は年4・5%)並みにします。 景気悪化で資金繰りに苦しむ中小企業からの「利息が高すぎる」との訴えに配慮したものです。 来年1月1日に施行されます。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ●アサヒSR年金勉強会からのお知らせ 福岡での勉強会が、7月5日(日)に決定しました。 会場:福岡市中央区 中央市民センターです。 内容:共済年金です。 共済年金について学ぶ機会は多くありません。 詳細な資料もありますので、ぜひ、この機会にご参加ください。 お問い合わせ・お申し込みは、アサヒSR年金研究会 info@asahi-sr.com ※ アサヒSR年金研究会は大阪の社会保険労務士 小林賢介氏の主宰です。 |