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知っておきたい年金のはなし    第239号 2010年3月23日発行

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連休といっても、休みのないお仕事の方もたくさんおられますが、私は3日間の研修を受けてきました。
受講料の高い研修でした。
「いくら出したの?」と夫に聞かれましたが、言えない料金でした。

もちろん、私はその価値があると思って受講するわけですが、お金を出すということは、最初から心構えが違ってきます。
これだけのお金を出すから、絶対に無駄にはできないと意気込みが違うのです。

せっかく行くのだからと、友人に会いたい気持ちもありました。
でも、会えば飲み会となります。
翌日の研修に差し障るので、今回は誰にも連絡しませんでした。
こっそり行って帰ってきたというわけです。

お金って、いろいろな力を持っているのですね。
無料がよいというわけではないと思いました。
お金を出したからこそ、成果が出ることもあるのです。

さて、今日は、めったにないけれど、興味深いお話です。

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第239号 寡婦年金
★★★ 死後に納付して年金を受け取る ★★★
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典子さんは現在58歳です。

典子さん夫婦は、フランス料理を中心とした、小さなレストランを営んできました。
ふたりで店を経営してきましたが、夫が死亡。がんの進行が早く、気がついたときは手遅れでした。

夫はずっと自営業でした。
大学を卒業したあと、海外で料理の修業。
本場のフランスで働きながら、修業をかさね、日本へもどって、フランス料理の店をはじめました。
小さな店を夫婦ふたりでやってきました。

夫婦が加入していたのは国民年金です。
海外暮らしの間、夫は国民年金には加入していませんでしたが、帰国してからは、ずっと保険料を納めてきました。
少しでも年金は多い方がよいと、付加年金の手続きもし、保険料を納めてきました。

夫婦に子どもはありません。
夫が亡くなり、遺族年金がもらえないかと思って調べてみたところ、寡婦年金ももらえないと言われました。
典子さんは65歳からの老齢基礎年金のみです。
それまで寡婦年金があればと思います。

夫の納めた保険料は、年金として受け取ることができないのでしょうか。

●遺族基礎年金

遺族基礎年金をもらえるのは、子どものいる妻か、子どもです。
子どもとは、18歳の年度末まで等の条件があります。
典子さんには子どもがいませんので、もらえません。
遺族基礎年金とは、子どもの養育を目的として年金なのです。

●子どものいない妻には何もないの?

寡婦年金があります。
しかし、寡婦年金をもらう条件はいろいろあります。

●寡婦年金をもらうためには

死亡当時、生計を維持されていた妻で、婚姻期間が10年以上

亡くなった夫の保険料納付済期間と免除期間が25年(300月)以上

●300月とは?

死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までに300月以上あることです。
典子さんの夫が亡くなったのは、3月27日でした。
前月の2月までの保険料納付済期間は、299月。
あと1ヵ月不足していたのです。

●寡婦年金がもらえない場合は?

死亡一時金のみです。
299月加入していた人の死亡一時金は、たった17万円です。
これでは、葬式代にもなりません。

●たった1ヵ月でも?

299月。あと1ヵ月だったのです。
それでも、寡婦年金はもらえないのでしょうか。

●年金はきびしい

要件を満たしていない限り、たとえ1ヵ月の不足でも年金はもらえません。
おまけをしてあげようというようなしくみはないのです。

●ところが・・・

典子さん夫婦は、国民年金の保険料を、口座振替で納めていました。
3月27日に死亡した夫の2月分の保険料は3月31日に口座から引き落としされました。
通常、本人が死亡した場合、銀行口座からのお金の出し入れには制限がかかります。
しかし、死亡直後だったので、死亡した夫の口座から保険料は引き落としされました。
ここで300月となったのです。

●さてどうなる?

原則は、死亡日の前日における保険料納付状況で判断します。
死亡後に保険料を納付しても、年金の受給権にはつながりません。

●典子さんの場合

結果だけをいえば、死亡後の納付で寡婦年金が支給されることになりました。
死亡後の保険料納付が認められたのですが、一言でいうと、口座振替だったからです。
口座振替の日は、当時の社会保険庁と金融機関の取り決めによるもので、本人が継続して納付する意思があったとして判断されました。

ちなみに、寡婦年金を受給するのは60歳からです。
58歳の妻は60歳まで待つことになります。

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このケースは、私が受けた相談ではありませんが、実際にあったケースで、社会保険庁が回答したものです。
2月分の国民年金保険料は3月末に納付することになっています。
典子さんの夫の場合も、死亡日までに納付することもできましたが、口座振替としていた納める意思があったのに、納付できなかったのです。
だから、死後の納付を認めました。
(詳細は省略していますが、死後の納付を認めるには、いろいろな検討がなされています)

そうですね、当然の取り扱いのように思います。
口座振替なので、決まった日に引き落としされます。
振替の日が決まっているのですから、これでもって1月不足とはあまりにも酷な話です。
特別に協議をして認められました。

しかし、ふと考えました。納付書による納付であったらどうでしょうか。
やはり、死亡日の前日で区切ることになるのではないでしょうか。
そうなると、300月などの節目には、とにかく、早く納付してしまうことがよいということになります。

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