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知っておきたい年金のはなし    第247号 2010年7月16日発行

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前回のメルマガ発行から1ヵ月もたってしまいました。
気を取り直して続けます。

先日、とてもいいお話を聞きました。
もうすぐ60歳になる女性から聞いたお話です。

20歳から就職するまで、お母さんが、自分の国民年金保険料を払ってくださったとのこと。
20歳になったとき、おかあさんは、こう言われたそうです。

「年金は自分のためだけではない。
今、あなたたちが払う保険料がお年寄りを支えている。
そしてあなたたちが年を取ったときに、若い世代が支えてくれる。
だから、年金の保険料を払うことは義務なんだよ」

学生であったその方は、そう言われても保険料を払うことはできません。
(当時、学生は国民年金へは強制加入ではありませんでしたが。)
しかしながら、就職するまで、おかあさんが払ってくださったそうです。

おかあさんは、年金制度が「世代間扶養」であることを、わかっておられたのですね。
それをきちんと娘に伝えています。
「すごい!」と思いました。

さて、今日は、ある相談を取り上げます。

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第247号 振替加算と年金額
★★★  働けば年金は増える? ★★★
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京子さんは、58歳です。
いろいろな事情があって、半年前に会社を辞めました。
会社を辞めたあとは、夫の扶養になり、第3号被保険者として国民年金に加入しています。

お勤めしている間は、毎日いそがしくて、家の中は片付きませんでしたし、掃除も行き届きませんでした。
退職したら、家の中をピカピカにしようと思っていました。

そして退職。
今では、家の中はピカピカです。子どももいないので、汚す人もいません。
ところが、きれいになった家にいるのに、だんだんとつまらなくなってきました。

やはり、働く方が楽しい。
それに、働けるうちに、年金をもっと増やしたい。

これから、厚生年金に加入すれば、もっと年金は増えますね?
58歳なので、給料は1ヵ月15万ももられるでしょうか・・・
もっと少なく、12〜13万円ぐらいでしょうか。
それでも、年金は増えますよね?

●厚生年金加入月数が増えれば

厚生年金の加入月数が増えるほど、年金も増えます。
増える金額は人によってまちまちですが、増えることには間違いありません。

●老齢基礎年金は?

全国民共通の1階の年金(老齢基礎年金)は、厚生年金に加入しても、第3号被保険者として国民年金に加入していても、増え方は同じです。
第3号は保険料を払うことなく、年金が受け取れるので、有利な制度です。

●厚生年金に加入したほうが有利?

ところが、ここからが難しい。
厚生年金に加入すれば、トータルとして、年金が増えるとも言えません。

●夫婦で年金額が決まるしくみ

独身の人は、わかりやすいです。
加入期間によって年金が増えるといえます。
しかし、夫婦の場合は異なります。
配偶者に対する加給年金、振替加算という夫婦ならではの加算があるからです。

●妻に対する加給年金

原則20年以上厚生年金に加入している人に、65歳未満の配偶者があれば、加給年金額が加算されます。
(ただし、加算されるのは1階と2階の年金をもらえるようになってからです)

●加算は妻が65歳になるまで

妻が65歳になると、夫への加給年金額の加算は終わりです。
そのかわり、妻の老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。

●振替加算額

振替加算額は、妻の生年月日によって異なります。
京子さんは75,900円です。(平成22年度価格)

●京子さんの厚生年金加入期間が増えると

厚生年金加入期間が20年以上になれば、振替加算は加算されません。
現在の京子さんの厚生年金加入期間は、230月です。
今からお勤めして厚生年金に加入し、厚生年金加入期間が240月以上になれば、振替加算はつきません。

●比較をする

京子さんの再就職後の給料は、15万円も給料があればよい方でしょう。
今後厚生年金に加入し増える年金額と、厚生年金に加入することによって加算されなくなる振替加算を比べてみます。
厚生年金に加入するのは、お得だとはいえないようです。
パートで働く方がよいのかなと、京子さんは、複雑な気持ちになってきました。

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このようなケースでは、「厚生年金に加入すれば年金が増えますよ」と言えません。
厚生年金に加入するデメリットもあるのです。
厚生年金に加入しないような短時間パートで働く方が、年金の受け取り総額ではお得になることもあります。

私はこの相談を受けて、考えました。
確かに現時点での数字上はそうでしょう。
しかし、家の中をピカピカにして、京子さんは、もう主婦の生活にあきてしまっているのです。
仕事をしたいというのが、京子さんの気持ちです。

こんな京子さんに、年金のためにフルタイムで働くことをあきらめて、厚生年金に加入しないような働き方をすればよいとは言えるでしょうか。

それに、夫の死亡や離婚など、人生には何があるかわからないのです。
今はよい選択に思えても、それが最後までよいとは限りません。

やはり、自分のやりたいことを大切にしたほうがいいのではないか。
しかし、それでは、年金は増えないかもしれない。増えてもわずかかもしれない。
いつまで働くかにより、増え方、減り方も違っているので、結果次第・・・

なんとも複雑な気持ちになった相談でした。

(お断り:このケースは中高齢の特例に該当しないケースとして考えてください)

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