★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第253号 2010年9月21日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 先日、お手続きさせていただいた方から遅延加算金が振り込まれたと連絡ありました。 年金時効特例法によって、記録に間違いがあった場合には、5年以上前にさかのぼって年金を受け取ることができるのですが、受け取り金額は当時の金額です。 それではいくらなんでもあんまりだと言うことになって、物価上昇分が追加されることになりました。 でも、平成21年4月末までに、時効特例法による年金を受け取った人は、遅延加算金の手続きをしなければ、自動的にはもらえないことになっています。 どう考えても変ですね。 わかっているのだから、本人の請求がなくても、振り込めばよいものを… 気がつかない人もたくさんいるでしょう。 私が手続き代行した方は、時効特例法による受け取り額は60万円程度でした。 遅延加算金は4万円弱ありました。 どういう計算になっているのかは、わかりませんが… 受け取った本人は、得したかのように、喜んでおられました。 でも、もらえて当然なのですよね。 気がつく、気がつかない、それが大きな違いとなります。 さて、今日は、年金の選択とその結果ということでお話します。 …………………………………………………………………………………………… 第253号 繰上げ支給と寡婦年金 ★★★ 何もなかった遺族年金 ★★★ …………………………………………………………………………………………… 一郎さんは61歳まで、自営業を続けてきました。小さな八百屋です。 自分の代で終わりだろうと思っていましたが、息子があとをつぐことになりました。 これで安心と思ったときに、体調が悪くなり、病院でみてもらったところ、すぐに入院となりました。 がんがみつかったのです。 手術をしました。そのあとは化学療法です。 化学療法の副作用で、毎日、倦怠感がひどく、どうしようもありません。 店を手伝おうとしますが、少し動くと、きつくなってしまい、仕事ができません。 妻と息子がしっかりやっていますので、ゆっくり療養すればよいのですが、一郎さんの心はだんだん後ろ向きになっていきました。 治療費もかかるし、長生きできそうにないので、老齢基礎年金を早くもらうことにし、手続きをしました。 一郎さんに厚生年金の加入期間はなく、国民年金の加入期間のみです。 保険料はきちんと払ってきました。 ところが、繰上げの手続きをしたのち、病気が悪化し、1年後に亡くなってしまいました。 さて、残された妻には、遺族給付があるのでしょうか。 ●老齢基礎年金の繰上げ支給 老齢基礎年金は65歳からです。 60歳から早くもらうこともできます。「繰上げ支給」といいます。 ●減額率は 1ヵ月早く開始することに、0.5%減額されます。 60歳の誕生月に請求すれば、年金額は70%になります。 一郎さんは62歳で請求しました。 62歳の誕生月に請求したので、36月早くもらうことになり、年金額は82%です。 (請求月で減額率は異なります) ●繰上げ支給の年金額は 満額の年金が792,100円なので、82%で計算すると、649,500円になります。 ●長生きできない 一郎さんは感じていたのです。病気がよくならないと。 治療費もかかるので、家族に少しでも迷惑をかけたくないと思って、年金の繰上げ支給を選択しました。 生きている間に年金をもらっておこうと思ったのです。 ●遺族への給付 一郎さんは60歳になるまで、ずっと国民年金に加入し、保険料を支払ってきました。 国民年金の第1号被保険者であった人が死亡した場合の遺族給付としては、遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金です。 ●子どもがいない 子どもはいますが、すでに成人しています。 年金法上の子どもがいないということになりますので、遺族基礎年金はもらえません。 ●寡婦年金 第1号被保険者としての保険料納付期間は25年以上あるし、婚姻期間も10年以上あります。 妻は寡婦年金をもらえるかと思いますが、実はもらえません。 死亡した夫が繰上げ支給の老齢基礎年金を受給していた場合は、寡婦年金の権利は発生しません ●死亡一時金 死亡一時金も、繰り上げ支給の老齢基礎年金を受け取っていたのでありません。 ●何もないの? そうです、一郎さんの妻には何もないのです。 一郎さんの未支給の年金は妻がもらえますが、遺族給付はまったくありません ●一郎さんが受け取った総額は? 一郎さんは繰り上げ支給の老齢基礎年金を1年間受け取っただけでした。 自分自身が年金を受け取るということはよかったのかもしれませんが、そのために、残された妻は寡婦年金を受け取れません。 ●寡婦年金があるとすれば 寡婦年金は夫の老齢基礎年金の4分の3です。 現在、59歳の妻は、60歳から5年間寡婦年金をもらえたはずです。5年間で約300万円です。 300万円が、繰上げ支給の老齢基礎年金を65万円ほどを受け取ったために、もらえなくなりました。 ●結果はわからない これはあくまでも結果です。 結果を迎えないとわかりません。 だから年金は難しいのです。 …………………………………………………………………………………………… いろいろと考えだすと答がでません。 長生きしないと思ったからから繰上げをし、実際に長生きしなかったのです。 繰上げをしなかったら、生きている間に年金をもらうことは、かないませんでした。 しかし、そのことで、残された妻の取り分が少なくなってしまったのです。 妻に何もないというのは、酷ですね。 国民年金の遺族給付は、もともと子どもの養育が目的なので、このような結果にもなるのです。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ●エフピー研究所の継続教育講座 ★最終ご案内! 5時間でわかる公的年金 年金達人FPになるために 9月25日(土)福岡(担当講師:菅野美和子) 年金を事例で学びます。 基礎から、重点ポイントまでをわかりやすく、お話します。 http://www2.fplabo.co.jp/school/school922_nenkinseido3_apply.html お席はあと少しです。お申し込みはお早目に。 FPの方は、継続単位を取得できます。 |