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知っておきたい年金のはなし    第254号 2010年10月18日発行

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いつのまにか、すっかり秋になりました。
思わぬアクシデントでメルマガもお休みしてしまいました。

さて、年金相談で一番つらいのは、結果が「もらえない」となったときです。
もちろん、手を尽くしますが、思い通りにならないこともあります。

自己責任といえばそうかもしれませんが、もう少し、年金のことに関心を持っていれば、救われたようなケースもあります。
たった1ヵ月でも、どうにもならないことは、どうにもなりません。

だからこそ、情報の発信も必要でしょう。
そう思って、メルマガを続けていきます。

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第254号 障害厚生年金と老齢厚生年金
★★★ 厚生年金に入りたくない! ★★★
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会社で人事担当として仕事をしている直美さんは困っています。
61歳で採用したAさんの社会保険加入手続きをしようとしたところ、Aさんからは加入したくないと言われました。

Aさんは言います。
国民健康保険に加入しているからそれでいい。
それに、厚生年金に入っても、保険料分、損するだけだから、入りたくない。

61歳のAさんは、現在、障害基礎年金と障害厚生年金を受給しています。
そして、その障害の状態は、今後よくなる見込みがないのです。

障害年金を受給しているから、今さら、厚生年金に加入しても、何のプラスにもならないと言うのがAさんの言い分です。

ほんとにそうでしょうか。
Aさんは、1時間800円の時給ですが、週に40時間は働きます。

なんといって、Aさんを説得すればよいのか、直美さんは困ってしまいました。

●厚生年金への加入は?

厚生年金に加入している会社にお勤めし、フルタイムで働くのであれば、厚生年金へは強制加入です。
パートであっても、労働時間や労働日数が正社員の4分の3以上であれば、加入しなければなりません。

●年齢は?

厚生年金への加入は70歳まで。
だから、61歳のAさんも強制加入です。

●選択の余地なし

対象となる人は、「入る」「入らない」を自分で選択することはできません。

●障害年金受給中

Aさんには、老齢厚生年金と障害厚生年金の権利があり、現在は、障害厚生年金を選択しています。
その結果、障害基礎年金を障害厚生年金を受給しています。

●障害年金を選択した理由は?

障害年金を選択しているのは、年金額が多いからです。

●こんなメリットも!

その他にもメリットがあります。
障害年金は在職老齢年金には関係ありません。
どんなに収入が増えても、年金には影響なし。
少しでも収入を増やしたいと思っているAさんは、老齢厚生年金受給中の人のように、働けば年金が減るということはありません。
また、障害年金には、所得税がかかりません。

●65歳以降は?

65歳になると、選択の方法が変わります。
このまま障害基礎年金と障害厚生年金を受け取る。
自分の老後の年金である、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取る。
障害基礎年金と老齢厚生年金を受け取る。(違う種類の年金を組み合わせる)

●一番年金額が多いのは?

Aさんにとっては、このまま障害基礎年金と障害厚生年金を受け取るのが、年金額では有利です。

●60歳以降、厚生年金に加入すると?

60歳以降、厚生年金に加入すれば、確かに、自分の老齢厚生年金は増額します。
しかし、Aさんの場合は、その増額分を計算に入れても、はるかに、障害厚生年金が多いのです。

●病気がよくなったら

病気がよくなり、障害の状態に該当しなくなれば、障害年金はもらえません。
しかし、Aさんの状態からそのような可能性もありません。
一生、障害の状態は続くでしょう。

●厚生年金加入の意味はなし?

今後も障害年金を受給するのが有利なら、今さら厚生年金に加入しても、意味がないということになります。
保険料を払う意味なしとわかっていれば、入りたくないですね。

●それでも強制

しかし、それでも、強制加入です。

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複数の年金の権利が発生すると、ますます年金は複雑になります。

遺族年金を受給している人もそうですね。
遺族厚生年金を受給している人にとっても同じことが考えられます。
少々自分の老齢厚生年金が増えても、65歳以降、実際に受け取る年金額は増えません。

60歳未満の人であれば、老齢基礎年金を増やせますが、60歳以降の人が厚生年金に加入しても、老齢基礎年金は増えません。

年金額が増えないとわかっていても、加入しなければならない・・・

年金は保険だからです。
助け合いの制度ですので、「年金が増えないから入らない」ということが通れば、制度が成り立たなくなります。

直美さんは、Aさんをどうやって説得しようかと考えました。
どうしても加入したくないのなら、短時間で働くしかありません。
でも、Aさんは、それでは収入が少なくなるので困るというでしょう。
根気よく、制度を理解してもらうしかありませんね。