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知っておきたい年金のはなし    第256号 2010年11月1日発行

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年金が少ない、これでは生活していけないという声を多くの方からお聞きします。
40年近くサラリーマンをしていた人でも、月に20万円あればよい方です。

ところが、そのわずかな年金を受け取らない方が、結果として得になったというケースがあるのです。

年金の受取を自ら辞退する制度があります。
いったい誰が辞退をするのか、
収入の多い国会議員が自主的に年金を返上するしくみかと感じていましたが、そんなことはなさそうです。

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第256号 年金受給辞退
★★★ 年金をもらわない方が得? ★★★
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道子さんは、高齢のお母さんと一緒に暮しています。
お母さんは、脳梗塞の後遺症から、体が不自由です。 道子さん自身も病気がちですので、お母さんが入れる施設を探していました。

ところが、お母さんの年金だけでは、施設での費用をまかないきれません。
不足する分は、道子さんが負担することになりますが、子どももいない独り身の道子さんは、自分の老後が心配です。
経済的な負担が気になります。

そんなとき、年金を辞退して、特別養護老人ホームの利用料が安くなったというニュースを聞きました。
こんなことってあるのですか。

●年金を受け取る権利

条件を満たした人は、支給開始年齢になると、老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取ることができます。
手続きしなければ、年金は入ってきませんが、それは手続きしないからであって、受け取りを拒否していることにはなりません。

●年金を辞退する制度

本人の自主的な申し出により、年金を支給停止する制度は、平成19年4月から実施されています。
「その年金、受け取りません」という申し出は聞き入れてあげようという制度です。

●月単位で

辞退は月単位です。 辞退した月については年金をもらえなくなりますが、そのあと、また受け取りを開始することもできます。
いったん辞退すれば、その後、永久にもらえなくなってしまうということではありません。

●支給停止後の取扱い

年金を辞退して、支給停止となっても、受け取っているものとして扱われることもあります。
たとえば、妻の年金をもらうより、夫に加算される加給年金の方が多いので、妻が自分の年金を辞退して、夫が加給年金を受け取れるようにしたいと思っても、そうはなりません。
年金をもらうと児童扶養手当がもらえないから、年金を辞退して、児童扶養手当をもらうというようなこともできません。

●支給停止による効果

つまり、年金辞退による支給停止でプラスになることは、所得が減るということです。

●所得が減ることによる効果

所得が減る以上に効果がある場合、年金辞退は有利になるのです。

●この制度を利用している人ってどのくらいいるの?

全国でも100人程度だということです。

●制度の趣旨

もともとは、年金がなくても十分に生活していける人は、自主的に返上してくださいということだったと思います。
年金財政に貢献してくださいということですね。

●低所得の人の利用が増える?

ところが、低所得の人が利用してプラスになることも・・・
次の記事を読むと、わかります。

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9月23日富山新聞に掲載された内容です。

特別養護老人ホームの利用料が年収によって差が出る関係で、本来受け取ることができる年金の一部をあえて返上しようとする事例が石川県内で初めて確認された。
平成19年創設の「公的年金支給停止制度」に基づき、金沢市内の無職男性(80歳)の家族が金沢北年金事務所に申請する。
返上により、利用負担額が年50万円以上軽減される計算。

男性は認知症で要介護4と判定され、今月上旬から特別養護老人ホーム(ユニット型個室)に入居している。

 本来、男性は国民年金792,100円と厚生年金84,000円の計876,100円を1年間に受け取ることができる。
このうち、国民年金11、12月分の受給を辞退。さらに来年1月から厚生年金を受け取らない手続きを取る予定だという。

 辞退する理由は、ホーム利用料の負担が、年金とその他の収入の総額が年80万円を超えるか超えないかで、大きく違うため。
石川県長寿社会課によると、80万円以下の場合、ユニット型個室の負担額は「高額介護サービス費」が支給されて月51,300円(月30日で計算)で済む一方、超えた場合は95,130円となり、月43,830円の差が出る。

日本年金機構の担当者は「男性のケースは全国的にも珍しいのではないか。制度の本来の趣旨からは外れているが、活用しないでとは言えない」としている。

以上、記事をまとめてみましたが、こんなこともあるのです。
今後、このようなケースはもっと増えていくかもしれません。