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知っておきたい年金のはなし    第260号 2011年1月5日発行

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて、今年最初のメルマガでは、新刊のご案内を致します。
私にとっては4冊目の本となりますが、主婦の友社より、年金の本を出版することになりました。

「年金1年生」です。

この本は定年を1年後にひかえた夫婦の物語です。
年金なんて人ごとだと感じていた夫婦に、いろいろなできごとが起こります。
そして、だんだんと定年後の生活を考えていくというストーリー。

年金の解説書ではなく、物語です。
題名のとおり、難しい言葉はいっさいなし。
年金1年生が、すらすらと読める内容となっています。

年金を物語にしたいという思いが本になりました。
イラスト、デザインともに、とてもかわいらしく、しあがっています。

まもなく、発売です。
発売日はお知らせしますので、お手に取っていただければうれしく思います。

さて、今回は、老齢基礎年金の繰下げについてです。

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第260号 老齢基礎年金の繰下げ
★★★ 迷っています、繰下げすべきか? ★★★
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信恵さんは今年65歳になります。
65歳から老齢基礎年金を受け取ることができますが、受け取りを遅らせると年金が増えると聞いて、迷っています。

信恵さんの夫は68歳です。
現在、個人事業主として仕事を続けていますので、生活は安定しています。

57歳で自営業を始めた夫は、事業も順調にすすんできたので、会社組織にすることも検討しました。
しかし、年金のことも考え、個人事業主として続けたほうが得策だと判断。
今は、老齢厚生年金、老齢基礎年金をもらいながら、収入もあるという状況です。

ですから、信恵さんも、自分の年金を受け取らずとも、生活できます。
もうしばらく待って、夫が仕事をやめたときに、割増のついた年金を受け取った方がよいのではないかと思います。

さて、信恵さんの場合は、どうでしょうか。

●信恵さんの受け取り額

老齢基礎年金の満額は792100円です。
信恵さんは20歳からずっと国民年金の保険料を納付してきました。
昭和61年4月からは第3号被保険者に。
そして、夫が退職したあとは、第1号被保険者としてきちんと納付してきました。
そのが甲斐あって、満額の年金がもらえます。

●繰下げ

老齢基礎年金の繰下げとは、本来65歳から受け取れる年金を66歳以降(70歳になるまで)に遅らせること。
1ヵ月遅らせるごとに、0.7%の割増がつきます。

●メリットばかりではない

繰下げによって年金額は増えますが、その間、年金はもらえません。
早く死んでしまうと、受け取り総額では損をすることも。
何歳まで生きればお得になるか、それが損益分岐点です。

●損益分岐点

仮に70歳まで受け取りを遅れらせたとしましょう。
その場合、少なくとも82歳までは生きて年金をもらわなければ、受け取り総額で不利益になります。
つまり、82歳までに死亡すれば、繰下げしない方がよかったということになります。

●覚悟がいるね!

人の寿命はわかりませんので、長生きするぞと覚悟を決めてかからねばなりません。
(覚悟だけではどうにもなりませんが)

●その他に考えることは?

サラリーマンの妻であった人は、もうひとつ注意点があります。
振替加算です。

●サラリーマンの夫の年金

信恵さんの夫は厚生年金に20年以上加入したので、老齢厚生年金には、加給年金額(396,000円)が加算されています。
しかし、その加算は、信恵さんが65歳になるまで。
信恵さんが65歳になると、加給年金は消えてなくなります。

●そのかわりに振替加算

加給年金のかわりに、信恵さんの老齢基礎年金に、振替加算という加算がつきます。
昭和21年3月生まれの信恵さんの振替加算額は112,400円です。

●年金額は

つまり、792,100円の満額の年金に、さらにおまけが112,400円つきます。

●繰下げをすると

本来の老齢基礎年金は割増がつきますが、振替加算には割増がつきません。
つまり、繰下げを選択し、老齢基礎年金の受け取りを70歳まで遅らせたとすると、112,400円の5年分が消えてなくなることになります。
ただ、消えるだけです。

●損益分岐点がもっとかなたに

その分を取り戻そうとすると、損益分岐点はさらに遠くなっていきます。

●繰下げは慎重に

年金額が増えるということと、トータルでどれだけメリットがあるいうことは別モノです。
信恵さんの場合は、もらえなくなる振替加算も含めて考えなければなりません。

●繰下げのメリットはある?

あくまでも本人が決めることであり、人の寿命は誰にもわからないのですが、信恵さんの場合は、繰下げにメリットがあるともいえないようです。

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「テレビで繰下げがお得だと言ってました」といって、年金相談に来られる方も多いです。
もちろん、間違ったことは言っていないのですが、年金は、個別の事情で異なってきます。
自分はどうなのかをよく考えてみないと、とんでもないことになりかねません。

年金では、個別に確認することが大切です。
そして、さらに大切なことは、年金記録の確認です。

年金記録の紙台帳とコンピュータのつきあわせ作業がすすめられています。
サンプル調査では、6000人中で、不一致が8.1%あったとか。
とくに75歳以上に不一致率が高いとのことでした。
コンピュータに紙台帳の記録が入力されていない人が1.9%ということです。

どれだけ不利益を受けている人がいることか。
今年こそ、年金問題の解決へ必要なA手立てを講じてほしいものです。

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