★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第263号 2011年1月24日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 4月からの年金額が下がりました。 老齢基礎年金の満額は788,900円です。 現在は792,100円ですので、3,200円下がったことになります。 当初はマイナス0.3%とされていましたが、マイナス0.4%となりました。 詳細は、メルマガの最後に書いておりますので、必要な方はごらんください。 それにしても、暮らしはらくになりませんね。 さて、今日は、障害年金のお話をします。 …………………………………………………………………………………………… 第263号 初診日の証明 ★★★ あきらめた年金 ★★★ …………………………………………………………………………………………… 次郎さんは61歳になりました。 現在、障害者特例による老齢厚生年金を受け取っています。 子どものときでした。 体調不良が続き、心臓が悪いということがわかりました。 その後、病状はよくなったり、悪くなったり。 それでも、通院しながら、普通の生活を続けてきました。 ところが、50歳代中ごろから、病状は悪化しました。 59歳で、定年を待たずに仕事をやめました。 しばらくは、健康保険から傷病手当金をもらっていましたが、それも終わりました。 障害年金がもらえるかもしれないと思い、手続きに行きました。 窓口で、子どものときに発病したというと、当時の証明が必要だと言われました。 最初に見てもらったのは、村の診療所でした。その後、町の病院にもかかりましたが、今では、村の診療所も、町の病院もありません。 村の診療所は、当時60歳ぐらいの先生でした。すでに亡くなったと聞いています。 当時の証明は無理な話です。その後も、何度かの転居のために、病院もかわりました。 その後の病院で、当時のことを証明してもらうのも、無理がありました。 次郎さんは、いろいろとむずかしいことを言われるので、困っていました。 病院以外に、何か証明するものがあるかと考えてみましたが、なさそうです。 そんなとき、すでに退職していた次郎さんは、障害者特例による老齢厚生年金がもらえることがわかり、結局、障害年金は手続きしませんでした。 次郎さんは他の年金があるからよかったのですが、こんなときはあきらめるしかないのでしょうか。 ●障害基礎年金か、障害厚生年金か 障害基礎年金だけか、それとも障害厚生年金も合わせて支給されるのか、それは初診日が決め手です。 国民年金加入中に初診日がある人は、障害基礎年金のみ 厚生年金加入中に初診日がある人は、障害厚生年金が上乗せされる。 (ただし、3級の人には障害基礎年金はなく、障害厚生年金のみです) ●初診日が重要 そうです。初診日がどこにあるかで、受け取れる年金も異なります。 ●保険料納付要件 初診日の前日で保険料をきちんと納付しているかどうかを確認します。 だから、なおさら、初診日が重要です。 ●保険料を納めていなかったら? 初診日の前日で、本来加入すべき期間において、3分の1以上の滞納があれば、障害年金はもらえません。 そんなとき、ひとつだけ、救済措置があります。 直近の1年間に滞納がなければ救済されます。 ●初診日が20歳未満であれば? 20歳未満の人は、保険料納付要件は関係ありません。 あたりまえのことですが、保険料を納付しているわけはないので、保険料の納付について、とやかくいうことはありません。 ●次郎さんの場合は 子ども時代に初診日があり、20歳時点では病状も軽かったけれど、その後悪化して50歳代になって病状が重くなったということですね。 その場合は、「事後重症」として障害基礎年金を請求することができます。 ●請求にあたっては 初診日を特定することが必要です。 つまり、初診日の証明が必要です。 そうはいっても、ずい分前の話ですね。 病院もなくなり、医師も死亡、当時の関係者も不明となれば、証明そのものがむずかしいです。 ●証明が取れなかったら 「受診状況等証明書」が取れない場合は、証明が取れない「理由書」を出すようになっていますが、それでは解決しないこともあります。 初診日が特定できなければ、受給権があるのかないのか、確認できないのです。 ●障害者特例 次郎さんが困っているときに、障害者特例に該当するのではないかという情報が入りました。 障害者特例とは、障害等級3級以上に該当し、退職していれば、本来なら60歳からはもらえない特別支給の老齢厚生年金(1階と2階の年金)を60歳から受け取れるというしくみです。 簡単にいうと、通常は60歳から2階の年金だけなのに、特例で1階の年金ももらえるということですね。 ●またまた証明が? 3級以上の障害の状態にあるということは、現在の病院で証明してもらいます。 そんなにむずかしいことではありません。 ●65歳まで年金はひとつ 複数の年金の権利がある場合は、65歳になるまでは、いずれかひとつ。 次郎さんに2級の障害基礎年金の権利が発生したとしても、もうひとつの老齢厚生年金と比較してみて、有利なものを選びます。 すでに退職している次郎さんにとっては、老齢厚生年金が有利でした。 ●65歳以降 65歳以降は、障害基礎年金と老齢厚生年金を組み合わせてもらうこともできます。 障害の状態が1級になれば、なおさら、その組み合わせで受け取ったほうがいいでしょう。 だから、障害者特例に該当したから問題ないとも言えません。 …………………………………………………………………………………………… 障害年金は複雑です。 上記はあくまでも原則ですので、個々のケースで、確認してください。 あきらめないで、できるかぎりの方法を探ってみること。 年金につながる場合もあります。 次郎さんも、いろいろな手立てを取れば、障害基礎年金を受給できるようになったのかもしれません。 しかし、転居し、病院もいくつも変わったし、どうしてよいのかわかりませんでした。 次郎さんにとっては、それは大変なことでした。 次郎さんは、結局、あきらめてしまったのですが・・・ 1月13日、神戸地裁で判決が出ました。診断書の有無が争点でした。 ●「診断書なくても障害基礎年金支給」 医師の診断書がないことを理由に障害基礎年金を不支給としたのは不当であるとして、聴覚障害を有する女性がこの決定の取消しを求めていた訴訟で、神戸地裁は、「合理的な資料があれば障害の認定は可能」とし、原告の請求を認容する判決を下した。 診断書がないにもかかわらず不支給決定を覆した。きわめて異例のことである。 …………………………………………………………………………………………… ● 情報:平成23年度の年金額等 ・平成22年平均の全国消費者物価指数の対前年比変動率 ▲0.7% ・基準となる平成17年の物価と比較して▲0.4% → 年金額は0.4%引き下げ ・物価変動率 0.993 = 前年の物価指数(0.996)÷前々年の物価指数(1.003) ・老齢基礎年金 788,900円=804,200円×0.981(改正前のスライド率) ・加給年金額 227,000円 (子の加算 75,600円) ・配偶者加給年金額 394,500円(昭和18年4月2日以降生まれ 特別加算含む) ・中高齢寡婦加算額 591,700円 ・障害手当金の最低保障額 1,153,800円 振替加算額、経過的寡婦加算額もすべて変更になります。 上記は独自に計算していますので、正確な数値は発表後にご確認ください。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。 詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません) 電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。すべての相談について、菅野美和子がお答えします。 返信可能なメールアドレスでご連絡ください。 たまに、返信不可能でご連絡差し上げられないことがございます。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ 書籍のご案内 ■□■ 「年金1年生」 菅野美和子著 全国の書店で発売中! 主婦の友社発行 定価1,470円(税込) 書店等でお求めになれない方、また10冊以上まとめてご購入いただける方は、著者までご連絡ください。miwa-ss@nifty.com このほか、3作の著書があります。 ★1 ねんきん定期便の読み方をマスターしたい場合は 「ねんきん定期便がよくわかる本」株式会社BKC 定価1260円(税込) ★2 年金の基本について、わかりやすい本を読みたいという場合は 「年金、もっと知りたいな。」株式会社BKC 定価1,470円(税込) いずれも、アマゾンで購入できます。書名で検索してください。 http://www.amazon.co.jp/ ★3 夫婦の年金など「夫婦」をテーマにした年金について知りたいという場合は 「妻も年金 夫の年金」株式会社日本生活設計 定価1,470円 現在、書店では取り扱っておりません。著者が在庫を持っておりますので、著者よりお届けいたします 4冊(あるいは3冊など)まとめてご購入いただくこともできます。 著者までご連絡ください。(セット購入は送料サービス) |