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知っておきたい年金のはなし    第269号 2011年4月29日発行

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仕事として行っている社会保険労務士業。
ボランティアではありません。
無料のメール相談は、私のポリシーとして行っていますが、それはメール相談だからできること。

お電話をいただくこともありますが、電話や面談による相談まで、無料でできません。
しかし、中には、「お金がありません」と言われる方も・・・

国選弁護士ってありますね。
「国選社労士」など、困っている人をたすけるような制度は無理なのでしょうか。
いずれにしても、お金の出所は必要なのですが・・・

今日は、遺族年金受給中の女性のお話です。

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第269号 65歳になると減額
★★★ 遺族年金があるから安心? ★★★
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睦子さんは64歳になりました。
夫を亡くして15年。
子どもたちも独立し、ほっとしています。

突然夫が亡くなったあとは大変でした。
子どもを育てていけるか心配でした。

そんなとき、たすかったのは、遺族年金があったこと。
会社員の夫の死亡で、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受け取ることできました。
子どもが大学生になったあとは、遺族厚生年金のみ受け取っています。

夫が亡くなったとき、役場の窓口で言われました。
「遺族年金があるから、奥さんは国民年金の保険料を払わなくていいですよ。」

睦子さんは確かにそう言われたのです。
そうか、遺族年金があるからいいのだなと思い、自分の年金については何の手続きもせず、そのままになっていました。

ところが、65歳になると年金が減るという話を聞きました。
心配になって年金事務所へ行った睦子さん、65歳から年金額が下がるということがわかりました。
「遺族年金はずっともらえるのではなかったのですか、65歳以降、年金額が下がるなんて聞いていません」と睦子さんは言います。

ほんとに年金が減ってしまうのでしょうか。
睦子さんは、なんともわりきれない気持ちになりました。

●遺族基礎年金と遺族厚生年金

サラリーマンの夫が死亡した当時、高校生の子どもがいた睦子さんは遺族基礎年金と遺族厚生年金をもらうことができました。

●子どもが18歳になって

下の子どもが高校を卒業すると、遺族基礎年金はなくなりました。
約100万の減額です。

●中高齢寡婦加算

ここからは、中高齢寡婦加算が登場。約60万円の年金が加算されたので、遺族基礎年金(約100万円)が減額されても、合計では約40万円減となるにとどまりました。

●65歳になると

ところが、中高齢寡婦加算(約60万円)は65歳までの加算です。
65歳以降は、生年月日によって、経過的寡婦加算が加算されます。
経過的寡婦加算は、睦子さんの場合は、約17万円。
65歳以降は、40万円以上も減額となります。

●老齢基礎年金

ここで自分自身の老齢基礎年金があれば、老齢基礎年金と遺族厚生年金を合わせてもらえます。
満額の老齢基礎年金をもらえる人なら、年金額は増えます。

●老齢基礎年金がもらえない

ところが、睦子さんは、夫の死後、保険料を払うこともなく、免除の手続きをすることもありませんでした。
独身のころに加入した厚生年金やサラリーマンの妻の期間(第3号被保険者やカラ期間)を合わせても、21年。
25年の受給資格期間がないと年金はもらえません。
老齢基礎年金をもらうには、あと4年の期間が不足しています。

●任意加入しかない

64歳の睦子さんは任意加入を決めました。
今から4年間保険料を払い続けると、68歳から老齢基礎年金がもらえるようになります。
遺族厚生年金の減額分を少しカバーできます。

●手続きをしておけばよかった

夫が死亡したあと、免除などの手続きをしておくと、こんなことにならなかったのです。
睦子さんは後悔しましたが、睦子さんにアドバイスした役所の人こそ問題です。
行政の責任を問うことは別として、今、睦子さんは、任意加入の保険料を払うしかないのです。

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遺族年金があるから、国民年金の保険料を払わなくてもよいと思っておられる方もたくさんあります。
もちろん、60歳までは強制加入ですので、払わなくてはならないのですが、払わないと睦子さんのように、65歳以降の年金が減ってしまいます。
また、免除制度を利用する人もいますが、免除では年金額が減ります。
遺族年金を受給中の人も、支払うことができるのであれば、免除より支払う方がよいのです。
しかし、相談を受けていると、遺族年金をもらっているからと、免除をうけている人が多いです。
老後の年金のためには、保険料の納付を考えてほしいと思います。

睦子さんのように64歳で任意加入を選択した場合は、何がなんでも25年になるまで保険料を払い続けなければ、それこそ損をしてしまいます。

一度に全部払えないのかというご質問もありますが、睦子さんの今後4年分を、まとめて全部払うことはできません。
決められた時期に1年分を前納することはできます。

これから4年、道のりは長いですね。

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「年金事務所での年金請求書の受付・点検事務/遺族給付編」
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福岡会場 5月22日(日) 福岡市 中央市民センター(福岡市中央区赤坂)
熊本会場 6月4日(土) 熊本県民交流館パレア
岡山会場 6月12日(日) 岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館
埼玉会場 6月19日(日) 埼玉会館
高知会場 6月25日(土) 高知市立自由民権記念館
松山会場 6月26日(日) 松山市 コムズ

「年金に係る知識でできる仕事はビジネスにつながるか?」
広島会場 7月18日(祭日) 広島市文化財団 東区民センター
時間はいずれも13:00〜16:30

会員は無料 会員外のオープン参加5,000円
お問い合わせは、アサヒSR年金研究会へ info@asahi-sr.com

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