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知っておきたい年金のはなし    第270号 2011年5月16日発行

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障害年金のご相談を受けることもよくあります。

障害年金は老後の年金や遺族年金とは違い、困難なケースが多いです。
最終的には医学的な判断となるからです。

結果として受給につながらない場合もあります。
ただ、もう少し早く相談していただければよかったのにと思うこともあります。
前もって相談していただいてよかったということもあります。

さて、難易度の高い障害年金ですが、今年の4月から一部改正がありました。

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第270号 障害年金 妻や子への加算
★★★ そのあと結婚した妻は? ★★★
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明さんは健康診断で腎臓病がみつかり、その後症状がすすみ、人工透析を受けるようになりました。
仕事は続けていますが、通院があるため、パート勤務になりました。

収入ダウンで生活は大変です。そんなとき障害年金を請求することができると聞いて、障害年金の手続きをしました。
現在、障害基礎年金2級、障害厚生年金2級をもらっています。

明さんは、希望をなくして生活していましたが、病院の看護師をしていた女性と出会い、結婚しました。そして、子どもも生まれました。
家族ができたことで、明さんは、前向きに生きていけるようになりました。

障害年金を請求したとき、明さんは独身だったので、何の加算もありませんでした。
子どもが生まれたとき、子どもの加算はないのかと確認しましたが、あとで生まれた子どもは対象にならないという説明でした。

ところが、今年の4月から法律が改定されたと聞きました。
どのように改定されたのでしょうか。

●配偶者への加算

障害厚生年金にも配偶者加給年金があります。
受給権発生当時、生計を維持している配偶者があれば、「配偶者手当」というべきものを加算してあげましょうということです。

●生計維持とは?

生計を維持している配偶者とは、いっしょに暮している配偶者(収入850万円未満)と考えてください。
配偶者とは、妻だけではなく、夫も対象となります。

●受給権発生当時とは?

障害厚生年金は、原則として初診日から1年6か月が障害認定日で、その時点において、3級以上に該当するのであれば、請求できます。(認定日請求といいます)
その請求時点で妻がいればよいということですね。

●そのときは軽くて、あとで症状が重くなったら?

1年6か月時点で3級にも該当せず、あとで状態が重くなれば、重くなったときに請求できます。(事後重症といいます。)
その場合も、請求時点で妻がいればよいということです。

●子どもは?

子どもの加算は、障害基礎年金に加算されます。
障害基礎年金は2級以上です。
配偶者と同様に請求時点で対象となる子どもがいれば加算されます。

●お腹の中の赤ちゃんは?

請求時点で妊娠しているときは、生まれたときから、子どもとして加算の対象になります。

●4月から改定されたことは?

障害年金を請求した後に、結婚した、子どもが生まれたという場合、そのような配偶者や子も加算の対象となるようになりました。

●明さんの妻や子も?

そうです。今回の改正で加算の対象となります。

●これは「改正」ですよね?

そうです。
ただし、ちょっと問題も残ります。

●問題って?

障害年金は初診日から1年6か月で請求する(認定日請求)か、あとで状況が悪くなり事後重症で請求するか、いずれかです。
認定日で請求するのがよいのですが、その後、結婚し、子どもも生まれたという場合は、事後重症で請求したほうが、妻や子への加算がついて有利になることもありました。
だから、これまでは、事後重症で請求していた人もいるでしょう。

●そういうことですか!

このような改正を知らずに、妻や子の加算のために事後重症を選んだ人は、結局、もらえる年金額が少なくなったかもしれません。(これは計算してみないとわかりませんが)

●児童扶養手当との関係

今回の改正で児童扶養手当の取扱いも見直しされました。
障害基礎年金に子の加算がつくことで、児童扶養手当がもらえなくなり、結果として不利になる人もあります。
そこで、子の加算か児童扶養手当がいずれか額の多い方を受給できるようになりました。

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年金財政がきびしいと言われる中、これはプラスになる改正ですが、改正しても対象者は数多くないからでしょう。

これまでもそうでしたが、対象者が少ない場合は改正を、対象者が多い場合は改悪というふうに思えます。

今回は、年金法を改正したことで、児童扶養手当との調整も必要になってきました。

しかし、年金と児童扶養手当は、いろいろな問題をかかえています。
かなり前のメルマガですが、106号を読んでいただくとわかります。
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