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知っておきたい年金のはなし    第271号 2011年5月25日発行

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「運用3号」にはじまった第3号被保険者の不整合年金記録問題については、案が固まってきたようです。

ほんとは3号になれないのに間違って3号になっていた期間については追納(過去10年以内)を求める、追納しない場合は減額し、これまでの年金を返還するという方向性が示されています。

確かに不公平なのですが、間違っていたということを知らない人もいたはず。
高齢で年金額が減額されたら、生活していけない人もいるかもしれません。

国の責任をどう考えているのだろうと思います。
また、3号という制度がある限り、不公平感は消えないでしょう。

さて、今日は、カラ期間についてのお話です。

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第271号 カラ期間の果たす役割
★★★ なんとかして年金につなげたい ★★★
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春美さんは8月に60歳の誕生日を迎えます。
15年前、夫を病気で亡くしました。子どもはいません。

春美さんの夫は自営業で、大工でした。当時はかなりの収入がありました。
夫ががんばって働いてくれるので、将来のことは何も心配しなくてもよいと、春美さんは国民年金の保険料を払っていませんでした。

突然の夫の死亡で、春美さんは、途方にくれました。
遺族年金もありません。
夫も国民年金の保険料を払っていなかったので、それはしかたないことだと思ってきました。

しかし、春美さんは思いなおしました。
老後の生活のために、国民年金の保険料は払っておくのがよいとさとったのです。

国民年金の手続きをして、さかのぼって2年間支払い、それからはがんばって保険料を納付してきました。苦しいときは免除を受けたこともがありましたが。

ただ、未納期間が長かったので、今後、保険料を納付しても年金がもらえるかどうか心配でした。
当時の国民年金課で確認したところ、年金はもらえると言われたので、保険料を納めてきました。

60歳が近づき、最近になってもう一度確認したところ、期間が不足しているから、60歳以降、追加で加入していないと、もらえないと言われました。

なぜ、説明が違うのでしょか。
もらえると言われたので保険料を払ってきたのに、今になって期間が不足するとはどういうことでしょうか。

春美さんは何を信じてよいのやら、わからなくなってしまいました。
さて、春美さんの年金は?

●25年を満たすこと

これは老齢基礎年金を受け取る基本の話ですが、保険料を納付した期間などが全部で25年(300月)にならないと老齢基礎年金や老齢厚生年金はもらえません。(例外もあります。)

●春美さんは現在285月

春美さんは18歳から23歳まで会社に勤めていました。結婚退職しました。
厚生年金加入期間は5年(60月)あります。
国民年金の保険料納付済期間と免除期間が23年4月現在で225月。
60歳になるまで3か月納付したとしても全部で288月です。

●あと少し!

あと12月不足です。
とにかく300月にならないと1円ももらえません。
春美さんが年金事務所で相談したとき、期間が不足しているからもらえないと言われたのはこのためです。

●どうしたらいい?

現在、春美さんはお勤めしていません。厚生年金に加入するのはむずかしいです。
そうであれば、国民年金への任意加入という方法があります。
あと12月ですから、60歳以降、12ヵ月分だけ国民年金に加入すれば、そこで、年金をもらう権利ができます。

●ちょっと待って!

そのまえに確認しておくことがあります。
カラ期間です。

●サラリーマンの妻の期間は?

春美さんは同級生の夫と23歳で結婚しました。
当時、夫は勤めていました。
サラリーマンの妻であれば、その期間がカラ期間となり、25年にカウントすることができます。

●今となってはわからない!

夫は26歳で独立し、それからはずっと自営業です。
勤め先はわかっていますが、当時、厚生年金に加入していたかどうか、春美さんにはわかりません。
健康保険証があったのか、なかったのかも覚えていません。
すでに夫は死亡しています。

●夫の記録を調べてみること

戸籍謄本(除籍)を用意して、年金事務所で調べてみましょう。
夫の厚生年金加入記録が確認できれば、春美さんは任意加入せずとも年金をもらうことができます。
最初に「もらえる」と言われたのは、カラ期間を合わせればということだったのかもしれません。

●60歳からもらえる?

春美さんは、300月を満たせば、60歳から報酬比例部分の老齢厚生年金を受け取ることができる人です。
カラ期間が確認できれば、60歳から老齢厚生年金を受け取れます。

●カラ期間がなければ?

支給開始は300月を満たしたときです。61歳になりますね。

●任意加入は考えてみよう

カラ期間が確認できて、60歳から年金をもらうようになったとして、60歳以降の任意加入は検討してみましょう。
60歳から年金をもらえるとしても、老齢基礎年金額は少ないです。
少しでも多い額がよいのなら、保険料負担はありますが、任意加入も検討の余地がありです。

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年金をもらうのに期間が不足しているという相談は、実はよくあります。
そのときはカラ期間を探してみましょう。

春美さんは該当しませんが、20歳以降の学生の期間(平成3年3月まで)もカラ期間となりますので、忘れないでください。

春美さんの例でもわかるように、カラ期間は、年金をもらえるかどうかばかりではなく、支給開始年齢にも影響するのです。

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