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知っておきたい年金のはなし    第275号 2011年8月3日発行

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初めてお会いした方から「メルマガを読んでいます」とか、「うちの会社の同僚が菅野さんのメルマガのファンです」とかお聞きすることがあります。
とてもうれしいです。
発行を続ける力になります。
275回も書いてきました。最近は何を書こうかと、よく悩みますが・・・

年金相談を受けていると、90%以上は定型的なよくあるご相談です。
個人に合わせた説明をしていくとご理解いただけます。

ところが、1割もないかもしれませんが、難解なご相談があります。
無料の1時間程度の相談(金融機関などの相談会)では解決できないようなこともあります。

私が最近受けた相談で、60歳以降も働き続けるのに、年金見込額が減るというご相談がありました。
確かに年金事務所で出された65歳時点での年金見込額は減っているのです。

働き続けるのに年金額が減るとは?
納得できませんよね。
いったいどういうことだったのでしょうか。

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第275号 不可思議な年金額
★★★ 60歳以降も働いてなぜ年金額が下がる? ★★★
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年金相談に訪れた和夫さん。
60歳以降も仕事を続けています。
60歳まで働いたらどのくらい年金額が増えるかと思い、年金事務所で見込額を計算してもらいました。

そして、60歳時点の年金額と65歳時点での年金額を比べてみると・・・
65歳時点の年金額が60歳時点よりも減額となっています!

5年間働くので、5年分の厚生年金保険料を払います。
しかし、年金見込額は減ってしまう・・・

結局、働かない方が年金ではお得だということですか?
それはおかしいと、和夫さんは、わけがわからなくなってしまいました。

●和夫さんの年金加入履歴は

和夫さんはずっと会社勤めでした。
厚生年金の加入期間のみです。
60歳で、厚生年金加入期間は457月。
記録には「厚船2号 433月」と書いてあります。
つまり、20歳以上の厚生年金加入期間(国民年金第2号被保険者期間)が433月あるということです。
ここから、18歳から20歳まで24月、厚生年金に加入していたことがわかります。

●65歳まで働くと?

65歳時点では517月として計算されています。
60歳から65歳までで、ちょうど60月、厚生年金の加入月数が増えます。

●年金見込額

60歳で210,400円(報酬比例部分)
65歳で209,812円(報酬比例部分)+経過的加算77541円 合計287400円
経過的加算を含めて説明すると話がややこしくなるので、報酬比例部分だけを比べてみてください。
減っていますね。
●報酬比例部分とは

報酬比例部分とは、厚生年金から支給される年金で、年金制度の2階部分にあたります。
厚生年金の加入月数や給料・ボーナスによって算出されます。
厚生年金の加入期間が増えていくと、この2階の年金は増えていきます。

●ところで、なぜこんなに年金が少ないの?

サラリーマン期間は長いのに、2階の年金が20万円程度?
年金だから、年額です。(月額ではありません)
ちょっとおかしいですね。

●少ないのにはわけがある

それは、和夫さんには厚生年金基金加入期間があるからです。
全部で399月。(60歳時点)
お勤め先が途中で厚生年金基金に加入し、現在に至るまで基金に加入しています。

●基金加入者は要注意

年金見込額をみて驚かれる方がありますが、基金加入者は、国と基金の両方から年金を受け取ります。
年金事務所の見込み額には、国から受け取る額しか書いてありませんので、少なくて当然なのです。
しかし、本来国が支給する年金を、基金が国に代わって支給します。(代行)
基金から、国の年金もまとめてもらうと考えてください。

●基金のしくみ

基金は国の年金を代行し、さらにプラスアルファを加算します。
そうですよね、国の年金額と同じでは、基金を運営する意味がありません。
基金に加入している人は、基金に入っていない人よりも多くの年金がもらえるしくみになっています。

●代行部分

基金が国に代わって支給する年金については、物価スライドや再評価は考慮されていません。

●物価スライドとは?

物価スライドとは、毎年の物価の上がり下がりを年金額に反映させる仕組みです。

●再評価とは?

再評価とは、当時の標準報酬月額を現在の水準に置き換えて年金を計算するしくみです。
たとえば、30年前の給料1万円を現在価値に置き換えたらいくらになるか(再評価する)を計算した上で年金額を計算するのです。

●国がめんどうみるよ!

物価スライド分や再評価分は基金から支給されないので、その分は国から支給されます。
損をしているわけではありません。

●基金加入期間のある人の国からの年金額は?

本来、国が支給すべき報酬比例部分の額から、代行部分を除いた額を支給します。
和夫さんの210,400円という報酬比例部分の年金は、代行部分が除かれた金額です。

●では、65歳になってなぜ下がるの?

65歳時点の年金額も、本来の報酬比例部分から代行部分を引いて計算しています。
本来の年金額は5年分増えているのです。

●増えるのでは?

代行部分は増えます。
しかし、代行部分には再評価や物価スライドは反映されません。
物価や賃金が上昇すれば、その上昇分は国の年金に加算されます。
しかし、現在は、物価は下落、再評価率も1.0を割っていますので、そういったマイナス要因が、国からの年金額を下げているのです。

●和夫さんの年金

トータルでは増えます。
内訳がわかりにくいということです。
基金からの年金を受け取れる人は、ふたつを合わせた金額が自分の年金額だと考えてください。

●働くことで年金は増えると考えていい?

そのとおりです。60歳以降も働くことで、今後の年金額は増えます。
厚生年金の加入期間が長くなり、年金で損をするというしくみにはなっていません。

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厚生年金基金の代行返上で基金の数は減少しているものの、基金から年金を受け取る人は多いです。

基金にも年金を請求しなければならないということさえ、知らない方がたくさんおられます。
とにかく、基金という記録が出てくれば、国と基金と2ヵ所に手続きをとってください。
他のことを忘れてしまっても、手続きさえ忘れなかったら、損はしません。

こんなふうに書きつつも、わかりにくい年金制度だなと思います。

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