★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第276号 2011年8月22日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんの著書「がんとお金の本」を読みました。 ご自身の闘病経験を通じて、がんとお金について、やさしく書かれています。 私はこれまで、自分ががんになったときのことを考えていませんでした。 がんを患うことがどういうことか、そしてお金とのかかわりについて、よくまとめられています。 おすすめしたい一冊です。 医療保険への加入や見直しを検討されている方は、まず、この本を読んでください。 私の著著「ねんきん定期便がよくわかる本」でお世話になった株式会社BKCさんからの出版です。 アマゾンで「がんとお金の本」で検索してください。 さて、年金確保支援法が成立し、8月10日に交付されました。 いろいろと批判もありましたが、この法律により、無年金となっていた人が救済される可能性が出てきました。 今日は年金確保支援法についてお話ししましょう。 …………………………………………………………………………………………… 第276号 年金確保支援法が成立 ★★★ 保険料は10年納付が可能に ★★★ …………………………………………………………………………………………… 花子さんは65歳です。 実は年金をもらうことができません。 独身時代に3年間厚生年金に加入。退職時には一時金で全部受け取りました。 その後、結婚しましたが、国民年金に加入していません。夫はサラリーマンでしたが、転職もし、自営業期間もありました。 年金の手続きをした覚えはなし、保険料を払った覚えもありません。 8年前に離婚。 それからあとは、パートで働いていましたが、社会保険はなく、また、国民年金の手続きもせず、そのままになってしまいました。 年金についてはあきらめていましたが、65歳を前にして、少しでも年金がほしいと思い、年金事務所で問い合わせました。 元夫との婚姻期間を入れても、年金を受け取るのに必要な25年(受給資格期間)には不足します。 もっと早く相談すればよかったのですが、今後、納付しても年金の受給権にはつながらないと言われました。 未納期間が長すぎたのです。 ところが、今度、法律が改正されたと聞きました。 過去10年さかのぼって納付すれば、年金がもらえるとか。 花子さんはこれで救済されますか? ●花子さんの加入歴 老齢基礎年金は、保険料を納めた期間や免除を受けた期間、カラ期間が25年ないともらえません。 花子さんは、脱退手当金を受け取った期間、昭和61年3月までのサラリーマンの妻の期間、その後の第3号被保険者期間などを合わせても18年しかありませんでした。 夫の自営業期間は、単なる未納期間にしかなりません。 ●あと7年不足 あと7年国民年金に加入すれば年金をもらうことができます。 60歳時点で、国民年金に任意加入していれば、67歳で老齢基礎年金をもらうことができました。 ところが何もしなかったので、このままでは年金をもらうことはできません。 ●現在64歳 64歳になった今、ここで任意加入の手続きをしても7年の不足を補うことはできません。 任意加入は過去にさかのぼることはできず、申請したときからです。 また任意加入できるのは70歳までですので、今からでは無理です。 ●65歳以降 65歳以降の任意加入については、昭和40年4月1日以前に生まれた人が対象です。 65歳以降、25年を満たすまで国民年金に加入できます。 ●年金確保支援法 今回成立した法律では、未納期間がある場合、10年以内の保険料を納めることができます。 花子さんは現在64歳。 54歳以降の未納期間については、今から納付が可能です。 54歳から60歳まで6年間分を納付できれば、7年のうち、6年を埋めることができます。 ●不足はあと1年 過去の未納期間を埋めると、あと1年、任意加入すれば年金につながります。 ●3年間の時限措置 この法律は施行日から3年間という期限があります。 ぐずぐすしてはいられません。 ●65歳未満 65歳未満の人は、10年以内の未納分を納めて、年金をもらう権利につなげていくことや、年金額を増やすことができます。 ●65歳以上 65歳以上の人も過去10年以内の保険料を納付することはできますが、25年を満たすまでの期間しか納付することはできません。 すでに25年を満たして年金を受給している人は、10年以内に未納期間があっても、年金額を増やすことができないのです。 ●対象外の人とは つまり、25年を満たしている人や65歳以上で老齢基礎年金を受給中の人は、対象外だということです。 ●保険料には利息あり 保険料を納付する場合は、3年以上前の分については、当時の保険料に利息がつきます。 そうですよね。無利息というわけはないですよね。 ●効果 年金確保支援法により、無年金の人が年金をもらえるようになったり、年金額が増えたり、その効果はあります。 ●該当者は判断を 該当者であっても3年を経過すると納付できなくなります。 納付するか、このままにしておくか、よく考えてみてくださいね。 …………………………………………………………………………………………… さて、花子さんはどうしますか。 今から保険料を納付するか、無年金のままとなるか。 どちらがお得かは言えませんが、しっかり考えてみましょう。 年金確保支援法は来年の秋から施行予定です。 …………………………………………………………………………………………… 私ごとですが、6月に入院した父(90歳)の容体が悪くなり、最近は、福岡と京都(実家)を往復しています。 私が行っても何の役にも立たないのですが、父が不安な気持ちになっているので、なるべく行きたいと思っています。 私は年金セミナーで、死ぬ間際には、自分の年金の損得なんて考えないだろうと話してきました。 数日前、父が私にこんなことを言いました。 もう人生の終わりがせまっていることがわかっているのです。 「これまで経済的には誰にも迷惑をかけなかった。年金を残していく。(妻が)受け取れるように相談にのってやってくれ」 現役時代は一生懸命働いて貯蓄し、年金を受け取っている父は、自分のお金で生きていくことができました。 そして、遺族年金を妻に残すこともできます。 私が年金を専門的にしていることがわかっていて、そのような頼みをしたのでしょう。 「わかったから安心して」というのが私の返事でした。 父から遺族年金について頼まれるとは思いませんでした。 でも、妻に遺族年金を残せることは、父にとって安心できることでしょう。 年金をもらえるということは、こういうことでもあるのです。 病気は重くても意識ははっきりし、理路整然とした話をするので、かえってつらくなります。 博多と京都を往復して、ときどき顔を見せることが、何もできない私にできることかもしれません。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ セミナーのご案内 ■□■ ●日本FP協会佐賀支部の継続教育研修を担当します。 9月10日(土)14:00〜16:30 佐賀市文化会館 「相談事例から学ぶ公的年金の基礎」 日本FP協会会員のみ。FP協会ホームページからお申込みください。 よくある年金相談事例からお話しますので、基礎を復習したいという方もどうぞ! ●エフピー研究所 継続教育セミナーを担当します 9月23日(金)10:00〜16:00 福岡開催 「5時間でわかる公的年金 年金達人FPになるために」 http://www.fplabo.jp/seminar/index.php#tugaku 基礎から応用、そして法改正情報もお届けします。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。 詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません) 電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。 すべての相談について、菅野美和子がお答えします。 返信可能なメールアドレスでご連絡ください。 |