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知っておきたい年金のはなし    第276号 2011年8月22日発行

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ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんの著書「がんとお金の本」を読みました。
ご自身の闘病経験を通じて、がんとお金について、やさしく書かれています。

私はこれまで、自分ががんになったときのことを考えていませんでした。
がんを患うことがどういうことか、そしてお金とのかかわりについて、よくまとめられています。

おすすめしたい一冊です。
医療保険への加入や見直しを検討されている方は、まず、この本を読んでください。
私の著著「ねんきん定期便がよくわかる本」でお世話になった株式会社BKCさんからの出版です。
アマゾンで「がんとお金の本」で検索してください。

さて、年金確保支援法が成立し、8月10日に交付されました。
いろいろと批判もありましたが、この法律により、無年金となっていた人が救済される可能性が出てきました。

今日は年金確保支援法についてお話ししましょう。

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第276号 年金確保支援法が成立
★★★ 保険料は10年納付が可能に ★★★
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花子さんは65歳です。
実は年金をもらうことができません。

独身時代に3年間厚生年金に加入。退職時には一時金で全部受け取りました。
その後、結婚しましたが、国民年金に加入していません。夫はサラリーマンでしたが、転職もし、自営業期間もありました。
年金の手続きをした覚えはなし、保険料を払った覚えもありません。

8年前に離婚。
それからあとは、パートで働いていましたが、社会保険はなく、また、国民年金の手続きもせず、そのままになってしまいました。

年金についてはあきらめていましたが、65歳を前にして、少しでも年金がほしいと思い、年金事務所で問い合わせました。
元夫との婚姻期間を入れても、年金を受け取るのに必要な25年(受給資格期間)には不足します。

もっと早く相談すればよかったのですが、今後、納付しても年金の受給権にはつながらないと言われました。
未納期間が長すぎたのです。

ところが、今度、法律が改正されたと聞きました。
過去10年さかのぼって納付すれば、年金がもらえるとか。

花子さんはこれで救済されますか?

●花子さんの加入歴

老齢基礎年金は、保険料を納めた期間や免除を受けた期間、カラ期間が25年ないともらえません。
花子さんは、脱退手当金を受け取った期間、昭和61年3月までのサラリーマンの妻の期間、その後の第3号被保険者期間などを合わせても18年しかありませんでした。
夫の自営業期間は、単なる未納期間にしかなりません。

●あと7年不足

あと7年国民年金に加入すれば年金をもらうことができます。
60歳時点で、国民年金に任意加入していれば、67歳で老齢基礎年金をもらうことができました。
ところが何もしなかったので、このままでは年金をもらうことはできません。

●現在64歳

64歳になった今、ここで任意加入の手続きをしても7年の不足を補うことはできません。
任意加入は過去にさかのぼることはできず、申請したときからです。
また任意加入できるのは70歳までですので、今からでは無理です。

●65歳以降

65歳以降の任意加入については、昭和40年4月1日以前に生まれた人が対象です。
65歳以降、25年を満たすまで国民年金に加入できます。

●年金確保支援法

今回成立した法律では、未納期間がある場合、10年以内の保険料を納めることができます。
花子さんは現在64歳。
54歳以降の未納期間については、今から納付が可能です。
54歳から60歳まで6年間分を納付できれば、7年のうち、6年を埋めることができます。

●不足はあと1年

過去の未納期間を埋めると、あと1年、任意加入すれば年金につながります。

●3年間の時限措置

この法律は施行日から3年間という期限があります。
ぐずぐすしてはいられません。

●65歳未満

65歳未満の人は、10年以内の未納分を納めて、年金をもらう権利につなげていくことや、年金額を増やすことができます。

●65歳以上

65歳以上の人も過去10年以内の保険料を納付することはできますが、25年を満たすまでの期間しか納付することはできません。
すでに25年を満たして年金を受給している人は、10年以内に未納期間があっても、年金額を増やすことができないのです。

●対象外の人とは

つまり、25年を満たしている人や65歳以上で老齢基礎年金を受給中の人は、対象外だということです。

●保険料には利息あり

保険料を納付する場合は、3年以上前の分については、当時の保険料に利息がつきます。
そうですよね。無利息というわけはないですよね。

●効果

年金確保支援法により、無年金の人が年金をもらえるようになったり、年金額が増えたり、その効果はあります。

●該当者は判断を

該当者であっても3年を経過すると納付できなくなります。
納付するか、このままにしておくか、よく考えてみてくださいね。

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さて、花子さんはどうしますか。
今から保険料を納付するか、無年金のままとなるか。
どちらがお得かは言えませんが、しっかり考えてみましょう。

年金確保支援法は来年の秋から施行予定です。

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私ごとですが、6月に入院した父(90歳)の容体が悪くなり、最近は、福岡と京都(実家)を往復しています。
私が行っても何の役にも立たないのですが、父が不安な気持ちになっているので、なるべく行きたいと思っています。

私は年金セミナーで、死ぬ間際には、自分の年金の損得なんて考えないだろうと話してきました。

数日前、父が私にこんなことを言いました。
もう人生の終わりがせまっていることがわかっているのです。

「これまで経済的には誰にも迷惑をかけなかった。年金を残していく。(妻が)受け取れるように相談にのってやってくれ」

現役時代は一生懸命働いて貯蓄し、年金を受け取っている父は、自分のお金で生きていくことができました。
そして、遺族年金を妻に残すこともできます。

私が年金を専門的にしていることがわかっていて、そのような頼みをしたのでしょう。
「わかったから安心して」というのが私の返事でした。

父から遺族年金について頼まれるとは思いませんでした。
でも、妻に遺族年金を残せることは、父にとって安心できることでしょう。

年金をもらえるということは、こういうことでもあるのです。

病気は重くても意識ははっきりし、理路整然とした話をするので、かえってつらくなります。
博多と京都を往復して、ときどき顔を見せることが、何もできない私にできることかもしれません。

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