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知っておきたい年金のはなし    第277号 2011年9月1日発行

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年金相談を受けていると、様々な人生に出会います。
原則どおりの回答ができない場合もあります。
それは、人生が様々で、対応も様々だからです。

60歳で老齢厚生年金の権利が発生したら手続きだけはしておくというのが原則で、そのとおりに説明します。
ところが、先日は、今はまだ手続きしないほうがよいというアドバイスをしました。

60歳以降も厚生年金に加入すれば年金は増えるという説明をします。
ところが、先日は、厚生年金に加入しないほうがよいというアドバイスをしました。

こんなにいろいろな対応が必要だなんて、やはり制度が難しすぎるのです。
そして、まだまだ、制度そのものが信頼されていないなあと感じます。

制度への信頼の程度は、国民年金保険料の納付率となって表れるのでしょうか。

7月に発表された数字ですが、国民年金保険料の納付率が6割を切りました。
今回は国民年金保険料の納付状況についてお話します。

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第277号 国民年金保険料の納付率
★★★ 6割切って過去最低 ★★★
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由美さんは25歳。
半年前に会社を辞めました。希望を持って就職した会社ですが、残業が多く、残業代も支払われないし、嫌気がさして辞めました。

雇用保険の失業給付を受けながら、資格を取るために勉強をしています。
資格を取って、目標を持って、働きたいと思っています。

そんなとき、国民年金保険料を督促する電話がかかってきました。
年金事務所から委託を受けた〇○会社だと言われました。
あやしいと思ったので、それ以上何も聞かずに電話を切りましたが、国民年金の手続きをしていないし、保険料を払っていないのも事実です。

お金もないし、払えと言われたら困るし、まだ若いし、このままでいいだろうと、簡単に考えてきました。
ところが督促の電話があると、なんだか落ち着きません。

国民年金の保険料を納めている人は6割もいないという話を、最近新聞で読んだことがあります。由美さんは、督促の電話が気になってきました。

●国民年金保険料の納付率

22年度の現年度納付率は、過去最低で59.3%です。(7月13日公表)
現年度とは、22年度での納付率ということです。未納となっている国民年金の保険料は、2年以内であるなら納付できるので、今後の納付率が上がる可能性はあります。

●納付率ってどうして計算するの?

納付対象月数分の納付月数で計算します。
納付対象月数が1億6679万月。納付月数が9893万月。
割算すると、59.3%となりますよ。

●分母に注意!

分母は、法定免除、申請全額免除、学生納付特例、若年者納付猶予という全額免除になった月数を除いた数です。

●実際の納付率はもっと低いよね?

免除者まで入れると、実際の納付率はもっと低くなります。

●免除が増えると納付率も上がる

実際に納付する人が減少しても、免除者が増えると納付率が上がります。
免除を勧めて免除者が増えると、実際に納付しなくても納付率が上がり、実績が上がるということですね。

●納付率だけでは見えない現状

国民年金制度の現状は納付率だけでは見えません。
未来も見えてきません。
実際に保険料を納める人が増えていかないと、年金財政はきびしいままでしょう。

●督促はどうするの?

由美さんに電話を掛けてきたのは、日本年金機構から委託を受けた業者です。
年金事務所の職員が督促をするのではなく、督促等の業務は民間業者に委託されています。

●それで納付率は上がるの?

日本年金機構によると、戸別訪問重視がない契約では、かえって納付率が低下していたとのこと。
戸別訪問を重視するように業務改善をはかったということですが、年度の途中だったので、間に合わなかったという見方もあります。

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民間委託業者を決めるのは入札によります。
より低コストでの企画を出す業者に決定されるのでしょう。
国民のお金を使うのですから、低コストは大切です。
しかし、最近、私は入札制度には疑問を感じています。

低コストの企画をあげる。
どこでそのコストを下がるのか。
いろいろあるでしょうけれど、物件費を削減するには限度があります。そうなると人件費の削減です。
そこで働く労働者の条件が切り下げられるのです。

労働条件を切り下げられた労働者は、国民年金保険料を納付することができないかもしれません。
これでは、いつまでたっても、よくならないように思います。

何はともあれ、由美さんは、このままでいけません。
失業中で保険料を払うゆとりがないのなら、免除申請しかないですね。

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