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知っておきたい年金のはなし    第280号 2011年11月1日発行

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先日、予定どおり、社会保険審査会の公開審理を傍聴してきました。
メルマガにも書いていたので、いろいろとお問い合わせをいただきます。
公開審理の様子、本日のメルマガの最後に書いておきますので、興味のある方はどうぞ。

ところで、忘れてしまいたい過去って、ありますね。
忘れることはできないけれど、時間の経過とともに、過去の傷がいやされていくこともあります。

でも、年金では、思いだしたくない過去を思い出さなければならないこともあるのです。

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第280号 年金の権利とカラ期間
★★★ 別れた夫との婚姻期間は有効? ★★★
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淑子さんは59歳です。
現在、年金の保険料を払っていません。
パートで働く淑子さんには、保険料を払う余裕はありません。

ねんきん特別便を数年前に受け取りましたが、その後、何度か住所も変わっており、年金の手続きもしていないので、「ねんきん定期便」は手元に届いていません。
保険料の請求もありません。

もうすぐ60歳。
先月病気をしてから、今後のことが心配になってきました。
できることなら、年金を受け取りたいと思うようになりました。

気になっているのは、年金をもらえるかどうかということです。
以前、25年の加入期間がないので、このままではもらえないということを聞いたのです。
年金事務所へ行けばよいのでしょうが、現在保険料を払っていないので、逆にまとめて請求されるかと思い、問い合わせにも行けません。

●淑子さんの年金記録

59歳の淑子さんは、国民年金と厚生年金加入期間があり、全部で260月。
厚生年金加入期間は120月です。
国民年金加入期間は未納が多いので、保険料納付期間と免除期間は140月です。

●現在の加入は?

現在はパートなので、勤め先でも厚生年金に加入していません。
3年前に会社をやめたあと、年金の手続きをせず、国民年金の保険料は払っていません。

●あと40か月不足

3年少しですね。全部で300月にならないともらえません。
25年なくてもよいという期間短縮の特例もありますが、淑子さんは該当しません。
なんとかしなくてはなりません。

●免除の手続き

11月現在、今から免除の手続きをしたとしても、さかのぼれるのは、今年の7月から。
60歳になるまで、あと1年は免除期間となったとしても、それでも、足りません。

●過去へのさかのぼり

2年以内なら保険料を納付できますが、2年をすぎると、納付できません。
淑子さんは、今からさかのぼって納付できる期間がありますので、納付することも検討してみましょう。

●60歳以降の任意加入

2年以内を納付しても、それでも300月には足りません。
60歳以降に300月になるまで任意加入するという方法があります。

●年金確保支援法

来年秋には年金確保支援法が実施されるので、そのときに、過去の保険料を納付してしまうというのも方法です。

●困ってしまった淑子さん

淑子さんは、現在、少ないパートの収入で暮らしているので、国民年金の保険料を払うゆとりがありません。
もっと前に、免除の手続きをしておいたらよかったのですが、今となっては遅いです。

●ちょっとまって! 淑子さんの婚姻期間は?

淑子さんはずっと前に離婚しました。
思い出したくないらしく、淑子さんの口からはなかなか出てきませんでしたが、平成5年頃離婚しました。

●結婚はいつ? 元夫の職業は?

結婚したのは昭和55年ごろ。そのとき夫は職人でした。
家業を手伝っていました。

●夫は厚生年金に加入していたか?

家業の手伝いではむずかしいかもしれませんが、当時夫が厚生年金に加入していたのなら、妻は国民年金へは任意加入。
任意加入していかなった期間は、カラ期間として25年(300月)にカウントされます。

●離婚していてもいい?

離婚していても関係ありません。
淑子さんの場合は、婚姻したときから、平成61年3月までのカラ期間が証明できればよいのです。

●別れた夫のことはわからない

淑子さんは今さら元夫と連絡を取りたくありません。
でも、元夫と連絡など取る必要はありません。

●カラ期間はどうやって調べるの

まず、離婚前の戸籍謄本を取りましょう。
そこには、結婚した日、離婚した日、夫の名前も書いてあります。
それで元夫の記録を調べてもらうのです。
戸籍を持っていかないと、年金事務所では確認できません。

●出てきました!

淑子さんが調べてみた結果、夫は厚生年金に加入していました。
家業は、法人となっていて、厚生年金に加入していたのです。

淑子さんのカラ期間は取れました。
これで、任意加入なしに年金を受け取れます。
(ただし、2年以内の未納分の保険料の支払い義務はあります。払わなくよいといっているのではありません。)

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年金相談では、配偶者がいるかどうかを最初にお聞きしなければなりません。
結婚している人はいいのですが、離婚したということは、言いにくい方が多いようです。

そうですよね、初対面の人に、昔の離婚の話などしたくないでしょう。
それが年金に関係あるとは思っていないでしょう。

だんだん話をしていくうちに、心を開いてくださいます。
だから、離婚の話も出るのです。
そして、夫のカラ期間を利用して、年金につなげていくアドバイスもできます。

離婚のあと、多くの方は、元夫のことは忘れてしまいたいと思います。
そして、誰にもふれてほしくないと思います。
私もそうですから。

でも、年金というのは、そんな古い傷に触れていかねば、解決しないこともあるのです。

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●公開審理を傍聴して(その1)
私が傍聴した日は、24件で、全件が障害基礎年金でした。
午後13:15開始で、終わったのは17:30ごろ。
この間に24件もできるのかと思われる方が多いのですが、半分ぐらいは、請求人(当事者)も代理人も来られません。そうでしょう、東京ですものね。

言葉は悪いけれど、「欠席裁判」のような感じを受けました。
当事者がいない審理は、5分とかかりません。
特に誰からも意見がないと、すぐに終わってしまいます。
誰からも意見がないということは、大半は厚生労働省の主張が通るということでしょう。

こんなに簡単に終わっても「公開審理」をしたということになります。
だから、24件もできるのです。

請求人や代理人が来られると、意見を述べることができます。
代理人は家族が多いですが、社労士や弁護士も。
専門家に依頼するとお金がかかるので、依頼できない人もおられるでしょう。
また、「これはどう考えても無理」という案件には、専門家はつきません。
私も、可能性がまったくないと思われることは引き受けません。

いったん決定したことをくつがえすのは並大抵でないことがわかります。
(続く)
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