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知っておきたい年金のはなし    第281号 2011年11月16日発行

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先日、ある方が「障害厚生年金3級をもらえるようになった」とお話してくださいました。
請求のきっかけは、「障害年金の請求をしてみたら?」という上司からのアドバイス。
アドバイスを受けるまでは、障害年金など、考えたことがなかったそうです。

アドバイスを受けて、主治医と相談して年金の請求をすることになり、その結果、3級と認定されたとのことでした。

その上司とお話したのは、私です。
本人に伝えてくださったのですね。

アドバイスというと、ものすごく難しいことのように考えがちです。
しかし、「年金をもらえるかもしれない」という一言で、年金につながっていくこともあるのです。

仕事がら、いつも人の年金のことが気になります。
定年退職する、病気になって長期の療養が必要になった、亡くなったという話を聞くと、すぐに「年金は?」と考えてしまいます。

時には「よけいなお世話」となることもあるので、相談されない限り、アクションは起こしませんが、やはり、ていねいな気配りは必要だと思いました。

今回のお話も、ある方のことを聞いて、気になったことです。

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第281号 60歳以降の選択
★★★ 障害の状態になったとき ★★★
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冬彦さんは来月60歳になります。

2年前、脳梗塞で倒れ、マヒが残りました。現在は左半身が不自由で、車椅子の生活です。
自宅では生活できないので、有料の施設で暮らしています。

現在は会社に籍がありますが、傷病手当金も終了したので、60歳の定年で退職することになりました。
60歳以降も働き続ける予定でしたが、病気になってしまい、定年退職するしかありません。

退職金はあるというものの、収入はなくなります。
年金暮らしで生活していけるかどうか、心配です。
60歳からの年金はどうなるのでしょうか。

●老齢厚生年金

35年間サラリーマンとして厚生年金に加入してきた冬彦さんは、60歳から2階部分の老齢厚生年金(報酬比例部分)をもらうことができます。
退職するので、年金カットはありません。

●満額の年金はもらえませんね

冬彦さんが1階の年金(老齢基礎年金)と2階の年金(老齢厚生年金)をもらえるようになるのは、65歳からです。

●2階の年金だけでは生活が大変!

そうですね。
支給開始年齢が遅れていくので、冬彦さんの年代が60歳からもらえる年金は2階の年金だけです。それだけでは生活が大変です。
でも、冬彦さんは障害年金の請求もできます。

●障害年金の条件は

初診日が厚生年金の加入中にあり、3級に該当すれば、障害厚生年金がもらえます。
2級以上に該当すれば、1階の年金に該当する障害基礎年金と2階の年金に該当する障害厚生年金がもらえます。

●障害年金の可能性はある?

冬彦さんが突然倒れたのは2年前です。厚生年金加入中に初診日があります。
それに保険料も滞納していません。
左半身が不自由で車椅子生活となっているので、2級以上にはなるでしょう。

●60歳からふたつの年金がもらえるの?

老齢年金と障害年金、ふたつはもらえません。
どちらかを選択します。
60歳の冬彦さんが2級以上に該当するのであれば、障害年金が有利です。

●もうひとつ、別の方法

それは、障害者の特例を利用して、老齢厚生年金を受け取ることです。
障害者の特例とは、3級以上に該当している人は、60歳から1階の年金(定額部分)と2階の年金(報酬比例部分)がもらえるという特例です。
簡単にいうと、障害者の特例で、60歳からの年金額が増えるということです。

●手続きはどうすればいい?

障害年金の請求をし、障害者の特例で老齢厚生年金を請求します。
そして、60歳以降は金額の多い方を選択します。

●年金額が同じくらいであれば

障害年金を選択します。
障害年金に所得税はかかりません。

●手続きは難しい?

冬彦さんの障害年金の請求は、初診日もはっきりしているので、そんなに難しいことではないですよ。
ただ、もともと障害年金の手続きは、いろいろと書類も必要なので、老齢厚生年金みたいに簡単ではありません。

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まだまだ、障害年金を請求できるということすら知らない方もたくさんおられます。
病気やケガで働けない状況が続いている場合は、障害年金の可能性もあるので、年金事務所などで相談してください。
原則として、初診日から1年6か月を経過したのち、障害の状況によっては請求できます。
(いろいろなケースがあるので、必ず、個別に確認してください。)

請求できるということに気がつき、受給できる可能性があるのなら、早めに手続きをしておくことをおすすめします。
障害年金は、時間が経過して有利になることは、まず、ありません。
あとで障害年金を請求するのは大変です。
気がつくか、つかないか、それがあとの結果に影響します。

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●公開審理を傍聴して(その2)

前回に続き、社会保険審査会の公開審理を傍聴しての報告です。

社会保険審査会の公開審理においては、請求人(代理人)、審査委員3名、保険者、参与数名が構成メンバーです。

保険者は、年金関係なら厚生労働省の担当職員が出席します。
案件によっては、厚生労働省の医師が出席し、医学的な内容について発言します。
障害年金では、医師の意見が重要となるでしょう。

審査委員3名のうち、委員長が中心となってすすめていきます。
参与とは、国が任命した国民の利益を代表する人です。
実際にどのような人選が行われているかわかりませんが、参与はいろいろと意見をのべたり、質問できたりします。
参与の方が、するどい意見を言われることもあります。

他に、録音係の人(公開審理は録音されています)、担当職員など、数名が控えています。

ちなみに傍聴人は、黙って座っているだけです。よけいなことは言えません。
(でも、手をあげて発言したくなりますよ。)

事前に「事件プリント」とよばれる厚い資料が配られています。
傍聴人は、そのプリントを見ることはできませんので、いったい何の話をしているのか、最後までよくわからないこともあります。

公開審理では、結果は出されません。「後日連絡します」ということで、終わります。

今後も、傍聴に行ってみたいと思っています。
次回は、11月24日に申し込みをしています。

傍聴は、事前に申し込みをしておく必要があります。
厚生労働省の入口で写真付きの身分証明書を提示して、予約を確認したあと、やっと中に入れます。きびしいなあという印象を受けました。

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■□■ お知らせ ■□■ 
●アサヒSR年金研究会からのお知らせ
11月20日(日)13:00〜16:30 福岡会場(中央市民センター)
「年金事務所での窓口受付事務処理と点検内容(障害給付編)」
会員以外のオープン参加もOKです。
詳細はアサヒSR年金研究会へお問い合わせ下さい。 info@asahi-sr.com 
全国の研修会はこちらから確認してください。
http://www.asahi-sr.com/new.html

●宗像市消費生活センター
「くらしに役立つお金のはなし」
12月16日(金)10:00〜正午まで 講師:菅野美和子
ちょっと知っていると役にたつ、お金についてのあれこれをお話する予定です。
宗像市消費生活センターへご連絡ください 0940-33-5454
会場はJR赤間駅前すぐです。

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■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 
「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。
詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません)
電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。
すべての相談について、菅野美和子がお答えします。
返信可能なメールアドレスでご連絡ください。