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知っておきたい年金のはなし    第283号 2011年12月19日発行

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ある女性の方からのご相談です。
現在61歳。厚生年金加入期間と国民年金加入期間を合わせても、25年ありません。
他の人から「前の夫の加入期間を合わせたらもらえるのでは?」と言われていました。

しかし、現在は再婚して幸せに暮らしています。
元夫に会って確認するくらいなら、もう年金はいらないと思ってきました。

たまたま、年金相談に来られて、元夫のカラ期間を使えることがわかりました。
年金のことを知っていれば、カラ期間確認のために元夫に会う必要がないということはわかりますが、この方はわからなかったのでしょう。

その女性は、年金のために元夫と会うか、年金を捨てるかと悩んで、年金を捨てるという結論を出されていました。
でも、一度相談してみたらというすすめに、年金相談に来られました。

結果は年金を捨てることはなかったのです。
戸籍謄本の取り方を説明して、手続きに行っていただくことになりました。

私にはこの方のお気持ちがよくわかりました。
いろいろなことがあって離婚し、今は再婚して幸せになっておられるのでしょう。
年金を捨てても元夫には会いたくないという気持ちは理解できます。

こんなふうに勘違いをしておられる方があるとしたら、力になってあげたいと思いました。

さて、今日は年金記録に関するお話です。

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第283号 年金記録の間違いと選択届
★★★ 選択はさかのぼれない ★★★
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友子さんは71歳です。
夫が亡くなり、一人で暮らしていいます。亡くなった夫の遺族厚生年金を受け取っています。

友子さんはアルバイトや家事手伝いのあと結婚し、子どもの手が離れたたあとは就職し、60歳まで働きました。ですから老齢厚生年金もあります。
ただし、比較すると、遺族年金の方が多いので、遺族年金を受け取ってきました。
つまり、老齢基礎年金+老齢厚生年金という組み合わせで年金を受け取ってきました。

ところが、年金記録問題が騒がれたときに、友子さんも自分の年金記録をよく確認してみました。
独身時代にアルバイトをしていた期間が、厚生年金加入期間としてみつかりました。姓が異なっていたので、わからなかったようです。

記録がみつかって、老齢基礎年金は増えました。しかし、遺族厚生年金をもらっていたので、その他はこのままでよいのだなと思っていました。

ところが最近、友子さんは年金相談に行き、年金記録がみつかったことにより、年金の選択方法を変更すると受取り額が多くなることがわかりました。

年金事務所にいって変更したいと申し出ましたが、変更は申し出た翌月からしかできないといわれました。

なんだか、おかしいですね。
記録があとでみつかったのです。
さかのぼって、変更してくれもていいのではないでしょうか。

●遺族厚生年金と老齢厚生年金

遺族厚生年金を受給中の人が、60歳になって老齢厚生年金を受給できるようになることがあります。
この場合、ふたつの年金は同時に受け取れず、いずれかを選択することになります。

●65歳以降

65歳以降はまた仕組みがかわります。
老齢基礎年金は全部受け取ります。
自分自身の老齢厚生年金がない人は老齢基礎年金と遺族厚生年金という組み合わせです。

●老齢厚生年金を受給できる人

老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給します。
なおかつ、遺族厚生年金の権利がある人は、本来の遺族厚生年金と老齢厚生年金に差額が生じるようであれば、差額を遺族厚生年金として受け取るということになります。

●単純に差額ではない

あきらかに遺族厚生年金が多い人は、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の差額となりますが、受給額によっては、自分の老齢厚生年金の2分の1と本来の遺族厚生年金の3分の2を合算して、その金額の差額を受け取るというような、ややこしい計算をします。

●わからない!

この計算方法はわからなくてもいいのです。
コンピュータが計算して、一番金額が多くなる方法で支給されます。

●平成19年に法律が変わった

ただし、このように自分の年金を優先し、差額を遺族厚生年金として受け取るという仕組みは、平成年19年4月1日以降に受給権の発生した人やその後65歳になる人。
それ以外は、3とおりの方法から選択することになります。

●3つの方法とは

老齢基礎年金と老齢厚生年金
老齢基礎年金と遺族厚生年金
老齢基礎年金と老齢厚生年金の2分の1と遺族厚生年金の3分の2
この3つのうちから「選択」します。

●選択とは

自分で有利になるものを選べるということです。選択届を出すと、翌月から変更となります。
さかのぼっての変更はできません。

●早い方がよい?

そうです。有利な年金を1カ月でも早く受け取りたいのであれば、該当した月にすぐに手続きにいくことです。

●友子さんの場合

友子さんは平成19年3月以前に遺族年金の権利が発生しており、その時点で65歳以上でした。65歳以降の遺族厚生年金と老齢厚生年金は「選択」です。

遺族厚生年金を選択しましたが、それが一番多かったからです。

●ところがその後に記録が判明

ところが、そのあとで厚生年金の加入記録がみつかりました。
当然、老齢厚生年金額は増えます。
しかし、遺族厚生年金を受け取っていた友子さんは、あまり関係がないと思い、特に深く考えることはありませんでした。

●選択を見直す

しかし、最近、老齢厚生年金額が増えたことにより、老齢厚生年金の2分の1と遺族厚生年金の3分の2で計算された金額が多くなることがわかりました。 ●選択届を出す

そこで選択届を出しました。ところが、届を出した翌月から年金額は変更になりますが、さかのぼっての変更はできないといわれました。

●責任は誰に?

年金記録が間違っていたのです。それで正しく変更されたのです。年金額が異なるなら、選択も異なります。
年金記録の間違いについて、友子さんに責任はありませんよね。
国の管理が悪かったのです。
最初から記録が間違っていなかったら、こんなことにはならなかったはずです 記録の間違いでも、選択届にさかのぼりなし。友子さんは納得できません。

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今回のケースも社会保険審査会での案件です。
年金記録の訂正があったときに、「選択届」を提出していると厚生労働省側は言っていますが、本人の認識はありません。
こんな仕組み、一般の人にわかりますか?

それぞれの金額を出して、その上でどちちを選びますかと確認しないと、何のことだかわからないでしょう。

年金記録の訂正が入る場合は、特別な対応ができるように法律を見直しするべきだと思います。

法律とは、変更できるものなのです。当時は絶対的なものであっても、問題があれば変更できるのです。

確かに、今現在の法律で考えると法違反。
しかし、その法律が合理的なものでなければ、変更すればよい。
そう思うと、法律っていったいなんだろう、法で人をさばけるのかと思ってしまいますが・・・

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