★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第287号 2012年3月10日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 社労士事務所を開業して10年。 年金相談員は、開業前から続けている仕事です。 最近は、月に4〜5日は、相談員として年金相談業務を担当しています。 年金相談できる場所が必要だと思います。 もちろん年金事務所で相談できるのですが、年金事務所ではできない相談もあります。 年金相談は人生相談でもあります。 これまでの業務の中で、もらえないと思っていた年金をもらえるようになったなど、喜んでいただいたこともたくさんあります。 年金相談の現場の仕事は、ご依頼をいただける限りは続けていきたいと思っています。 …………………………………………………………………………………………… 第287号 受給資格期間25年 ★★★ もらえないと言われた年金 ★★★ …………………………………………………………………………………………… 俊彦さんは64歳になりました。 現在、アルバイトの収入で生活しています。 56歳のときに会社をやめました。 そのあと、自営業をはじめましたが、現在は、アルバイトで生計をたてています。 会社を辞めるときに、当時の社会保険事務所で相談をしたことがあります。 そのとき、年金の期間が不足しているので、年金はもらえませんと言われました。 そうか、年金はもらえないのかと、俊彦さんはそのときから年金をあきらめました。 最近、友人に「年金はもらえない」という話をしたところ、厚生年金は加入期間が短くてももらえるのではないかと言われました。 だめでもともと、もう一度だけ確認しようと、俊彦さんは、金融機関の年金相談会へ行ってみることにしました。 ●俊彦さんの加入歴 俊彦さんのこれまでの年金加入記録は複雑です。 会社をいくつも変わっていますし、転職期間の保険料未納もあります。 ●56歳時点での受給資格期間 国民年金と厚生年金合わせて252月でした。 そのうち、厚生年金は180月でした。 ●年金をもらうためには最低300月! 年金を受給するのに必要な期間は300月。 保険料を納めた期間ばかりではなく、保険料免除期間やカラ期間も含めます。 俊彦さんの場合、カラ期間はありませんでした。 確かに、56歳時点では、年金をもらうのに必要な期間を満たしていませんでした。 ●あきらめるのはまだ早い 「56歳の現時点では受給資格期間を満たしていません」というのが正確な内容です。 この時点では必要な期間を満たしていなかったのですが、俊彦さんはまだ56歳です。 あと4年あります。 このあと国民年金に加入すれば、300月を満たすことができます。 ●60歳までの期間 その後の期間が国民年金の未納期間となってしまえば、俊彦さんは年金をもらえません。 ところが、俊彦さんの年金記録を見ると、全額免除期間が60歳になるまで続いていました。 ちょうと60歳になる前に300月を超え、ぎりぎりで年金の受給権ができたのです。 ●免除の手続き 俊彦さんには免除の手続きをしたという記憶がありません。 思い出してみると、自宅に国民年金の係からだという人がきて、書類にサインをしたことがあります。 免除をすすめにきた担当者だったのでしょう。 よくわからないまま、俊彦さんは免除の手続きをしていたのです。 ●もらえる年金 もらえないと思いこんでいたのですが、60歳から老齢厚生年金を受給できることがわかりました。 よくわからなかったとはいえ、免除の手続きをしていてよかったのです。 しかも、厚生年金基金加入期間がありました。 仮に本体の老齢厚生年金がもらえなくても、基金からの年金は受け取れます。 …………………………………………………………………………………………… 俊彦さんには、年金請求書も届いていました。 受け取ったねんきん定期便にも年金額が書いてあります。 50歳以上の人で、年金の受給権が確認できない人のねんきん定期便には、年金見込額が書いてありません。 また、年金請求書も送付されません。 年金請求書が届いているということで、年金の受給権があるとわかるのです。 しかし、このようなしくみを知っているからわかるだけであり、多くの人はわからないでしょう。 もらえないと言われたときは、確かにもらえなかった。 でも、知らないうちに権利ができていたのです。 免除の手続きをしていたからですが、免除が年金の権利にどう関係するのかについても、説明がないとよくわかりません。 年金をもらえないと説明するだけでは足りません。 年金をもらうためにはどういう方法があるか、そこが大切なことなのです。 結果として、俊彦さんは年金をもらえることがわかり、60歳からさかのぼって受け取ることになりました。 結果はめでたしなのですが、このケースは、めでたしとばかり言っていられません。大きな問題を投げかけています。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ファイナンシャルラーニング社の社会保障コラムを担当しています。 現在「海外で暮らす」を掲載中。力をこめて書いています。 http://www.flkk.co.jp/ …………………………………………………………………………………………… ■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。 詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません) 電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。 すべての相談について、菅野美和子がお答えします。 返信可能なメールアドレスでご連絡ください。 |