★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第288号 2012年4月2日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 2月7日に政府は「社会保障・税一体改革大綱」を閣議決定しました。 年金制度についてもいろいろな改正内容が盛り込まれています。 最近は、パートの社会保険加入問題についても、新聞紙上などでよく取り上げられています。 このメルマガでも「これからの年金制度」について考えてみたいと思います。 年金制度を作っていくのは、一部の政治家ではなく、私たちですから! おかしいと思うことには「NO!」と声をあげてみましょう。 今日は、パートの社会保険加入について考えてみます。 …………………………………………………………………………………………… 第288号 パートタイマーの厚生年金加入 ★★★ メリットはあるの? ★★★ …………………………………………………………………………………………… 正恵さんはデイサービスの経営者です。 民家を改築して、家庭的な雰囲気のミニデイサービスで、介護が必要な高齢者を受け入れています。 正社員は3名です。その他は、パートタイマーです。 この仕事は、利用者さんしだい。 急に入院されると利用が減り、事業高も減ります。 正社員ばかりでは経営が成り立ちません。 パートタイマーという雇用形態が必要です。 ところが、正恵さんはパートも社会保険に加入するようになるという話を聞いて、心配になってきました。 社会保険料の負担は大きいです。 介護事業では介護報酬が定められているので、事業高にも限界があります。 働いているパートタイマーには主婦が多く、社会保険には加入したくない、夫の扶養がよいと本人たちも言っています。 この先、どうなっていくのでしょうか。小規模企業の経営者としては不安になります。 ●パートタイマーの社会保険加入 現在の法律では、1日の所定労働時間、1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者(正社員)のおおむね4分の3になると、パートタイマーも社会保険に加入しなければなりません。 ●強制ですか? 強制です。入りたい、入りたくないなどの個人の気持ちは関係ありません ●年間収入は130万円未満ですが? 収入は関係ありません。 130万円未満というのは、健康保険の扶養家族となる、国民年金の第3号被保険者となるための収入要件です。 社会保険の加入とは関係ないのです。(誤解が多いですが…) ●働く時間は日によってまちまちですが 1日の労働時間や働く日数がまちまちである場合は、総労働時間で判断することがあります。 例えば、正社員の労働時間が月に168時間であれば、その4分の3は126時間なので、126時間を超えると社会保険に加入するというふうに判断します。 ●総合的に判断して このケースでは、126時間を超えるとすぐに加入となるのかというと、そうでもありません。 たまたま今月は忙しくて働く時間が多くなったけれど、通常月はそうではないということもありますね。 「おおむね」とか「総合的に判断して」という言葉がついているので、機械的には判断しません。 ●わかりにくいですね そうです。わかりにくいです。雇用保険のように、「所定労働時間が週に20時間以上、31日以上の雇用の見込み」と決まっているのならわかりやすいのですが。 ●パートへの適用拡大案は? 対象者は雇用期間1年以上で週20時間以上、年収94万円以上で働く人。501人以上の企業を対象とします。 3年以内に対象者を拡大することになっています。 ●大企業で働くパートということ? 当面は大企業が対象になるということです。 501人をどのようにカウントするかという問題はありますが。 ●標準報酬月額の下限も下げる 現在の厚生年金の標準報酬月額(保険料の計算基準額)の下限は9.8万円です。 しかし、年収94万円は、月額7.8万円となりますので、標準報酬月額も7.8万円を下限とすることが法案に盛り込まれます。 ●女性の年金にプラスになる? 女性だけではありませんが、主婦パートが多い中、あらたに社会保険対象となる女性が増えます。 確かに社会保険加入で年金額は増えますが、保険料という負担も増え、女性が受け取る機会が多い遺族厚生年金を考えると、メリットばかりではありません。 …………………………………………………………………………………………… 企業はパートタイマーを社会保険に加入させたくないと考えることが多いでしょう。今回、中小企業は対象外ですが、やがて拡大されていきます。 そして、パートで働く人、特に夫の扶養になっている人は、社会保険に加入したくないと考えることが多いのです。 そこで利害関係が一致します。 次に考えることは、社会保険に加入しなくてよいような働き方です。 年収を94万円未満に抑えるとか、所定労働時間の調整とか、方法はあります。 つまり、今よりももっと悪い条件で働く人が増えるということが考えられるのです。 その他、デメリットについても確認しておきましょう。 主婦が自分自身の老齢厚生年金額を増やしていくと、遺族厚生年金の支給額は減ります。 自分自身の厚生年金加入期間が20年以上になると、配偶者加給年金や振替加算もつきません。 配偶者加給年金という制度がよいかどうかは別として、加給年金が加算されなければ、それでけ年金額は少なくなります。 そんな説明は一切出てこないですね。 この問題はもっと議論を重ねていく必要がありますし、メリット・デメリットを確認しておくことも必要です。 …………………………………………………………………………………………… 個人的なことですが、3月末に実父が亡くなりました。 みなさまにはあたたかいお言葉をいただきまして、ありがとうございました。 現在、母の遺族年金の手続き中です。 厚生年金だけではないので、けっこう煩雑です。 一般の人なら、いやになってしまうだろうなと思います。 他にもいろいろ手続きがあり、ややこしいのは死んだ人のこれまでの戸籍です。 生きているうちに、これまでの自分の戸籍を全部そろえておくことも必要だと思いました。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ファイナンシャルラーニング社の社会保障コラムを担当しています。 現在「海外で暮らす」を掲載中。ごらんください。 http://www.flkk.co.jp/ …………………………………………………………………………………………… ■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。 詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません) 電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。 すべての相談について、菅野美和子がお答えします。 返信可能なメールアドレスでご連絡ください。 |