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知っておきたい年金のはなし    第289号 2012年4月16日発行

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自筆の遺言状は、なかなか開封できないものですね。
家庭裁判所での「検認」が必要で、その手続きにも相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明が必要です。

書類を提出してから、1ヵ月程度かかるようです。

時々、「遺言」で年金の受取人を指定したいという人もいます。
また、事実婚などで、夫が遺言で年金の受取人に指定したからもらえるはずという方もおられます。
でも、それは違います。

遺族年金をもらえる人は、あくまでも要件を満たした人。
遺言状に書いたとしても、そのとおりにはなりません。

さて、今日は、夫が受け取る遺族年金についてです。

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第289号 妻死亡による遺族厚生年金
★★★ もらえるのに、もらえない! ★★★
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58歳の富夫さんは、半年前に妻を亡くしました。
妻は56歳でした。

50歳ごろから病気で体調が悪くなり、妻は仕事を辞めました。
その後、療養を続けてきましたが、病状が急変して死亡。
だんだん回復していくものと思っていた富夫さんは言葉もありません。

死亡後の手続きをしているうちに、富夫さんには妻死亡による遺族厚生年金の権利があることがわかりました。
すすめられるままに手続きをしました。
年金証書が届きましたが、現在58歳の富夫さんは支給停止となり、実際には受け取れません。

富夫さんは、仕事も続けているし、妻の死亡による遺族年金はなくてもよいと思いますが、富夫さんが遺族年金をもらえることはあるのでしょうか。

●妻の年金加入歴

20歳でお勤めし、厚生年金加入期間が5年。
結婚で退職し、国民年金に加入。
育児が一段落して、再び厚生年金に加入。
病気退職後は、国民年金の第3号被保険者です。

●25年以上の加入期間あり

56歳の死亡時には、すでに25年以上の加入期間があり、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていました。

●妻死亡による遺族年金は?

遺族基礎年金は関係ありません。もともと、夫は対象外です。
妻には老齢厚生年金をもらえるだけの加入期間があり、なおかつ、妻死亡時に富夫さんは55歳以上でしたので、遺族厚生年金の権利が発生しました。

●専業主婦だったのに?

妻は老齢厚生年金をもらえる条件を満たしていたので、死亡時に専業主婦であっても、夫に遺族厚生年金の権利が発生します。

●年金額の計算は?

遺族厚生年金には短期要件と長期要件という年金額の計算方法があり、このケースは長期要件です。
長期要件とは、実際の厚生年金加入期間で年金額を計算するということです。

●老齢厚生年金の4分の3

遺族厚生年金は、老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。
妻の厚生年金加入期間はそう長くなかったので、富夫さんの遺族厚生年金は少ないものでした。
夫には中高齢寡婦加算のような加算はありません。

●60歳までもらえない!

遺族厚生年金の権利が発生しても、夫は60歳になるまで支給停止です。

●60歳になれば?

支給されます。
ただし、自分の老齢厚生年金をもらえる人は、いずれか選択となります。

●富夫さんの場合

富夫さんの老齢厚生年金(報酬比例部分)は61歳からです。
61歳までは遺族厚生年金を受け取ります。

●働いていてももらえるの?

遺族厚生年金には、働いていて収入があれば支給停止になるというしくみはありません。

●61歳になればどうなる?

自分の老齢厚生年金か、遺族厚生年金か、いずれか選択します。
会社勤めをしていて、自分の年金が支給停止になってしまうようであれば、遺族年金を選択すればいいですね。

●65歳になればどうなる?

選択ではなく、自動的に調整された年金が支給されます。

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富夫さんは短い期間ながら遺族厚生年金を受け取れますが、妻が払った保険料分はとうてい取り戻せません。
年金は積立貯金ではありませから、取り戻せるという言い方はおかしいかもしれませんが。

サラリーマンの場合、一般的に男性が遺族年金を受け取るのは、至難の業といえるかもしれません。

「父子家庭にも遺族基礎年金を支給する」という年金改革案が出されていますが、さて、どうなることでしょう。

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