★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第290号 2012年5月1日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 先日、「自分の家で死にたいと言われたら読む本」(中経出版)を読みました。 社会保険労務士・FPである関屋利冶さんが書かれた本です。家族介護の実体験から書いておられるので、思いがよく伝わってきます。 私は家に帰りたいという父を家に帰してあげることはできませんでした。 なぜかというと、家族も生きていかねばならなかったからです。 でも、私自身が最期を迎えるときは、はやり家がいいと思います。 自分のことを重ねながら、この本を読みました。 興味のある方はぜひどうぞ。書店で購入できます。 さて、今日は、久しぶりに「離婚時の年金分割」を取りあげてみます。 こんなことを考える人もいるんだと、あらためて思った事例です。 …………………………………………………………………………………………… 第290号 離婚時の年金分割 ★★★ 別れても夫を思う? ★★★ …………………………………………………………………………………………… 直子さんは58歳です。 これまでいろいろなことがあり、63歳の夫と離婚をすることになりました。 夫はなぜ妻から離婚されるのかわからなくて、話し合いはもめました。 専業主婦である直子さんは財産分与と年金分割を要求していました。自分の老後を考えると、要求を引き下げることはできませんでした。 なんとか話合いがつきました。年金分割についても50%で分割することになりました。 直子さんは、パートで仕事を始めることにしていましたので、夫から分割された年金で暮らしていけるだろうと計算していました。 ところが、話をすすめていくうちに、年金について自分が勘違いしていたことがわかりました。 ●離婚時の年金分割 結婚後、ずっと専業主婦で夫の扶養家族だった直子さんは、離婚時の年金分割により、夫の老齢厚生年金を受け取ることができます。 婚姻期間については、最大50%に分けることができます。 ●分割の請求は2年以内 直子さん夫婦は離婚に際して、弁護士を入れて話し合いを行いました。 年金分割については、公正証書を作成することになりました。 年金分割請求は離婚後2年以内です。 ●2年を過ぎたら 離婚後2年を経過すれば、年金分割はできないということです。 無期限としていると、離婚後何十年たっても分割を要求できることになるので、期限を切ったのでしょう。 ●夫の年金はいつから減額? 直子さんの夫は63歳です。 退職後はアルバイト程度。現在年金で生活しています。 分割の請求をした翌月から年金が改定(減額)されます。 実際に年金事務所に書類を持ていった翌月から減額されるという意味です。 ●直子さんはいつからもらえる? 夫の年金が減額されるので、直子さんはすぐに受け取れるだろうと思っていました。 ところが、違うのです。 直子さんが分割した年金を受け取れるのは、直子さんが自分の年金をもらえるようになるときからです。 ●65歳から これまでずっと専業主婦で、厚生年金に加入したことのない直子さんは、65歳から老齢基礎年金を受け取ります。 つまり、65歳までは分割した年金を受け取れないのです。 ●これはおかしいのでは? 夫の年金が減額されているのに、妻は受け取れないのです では減額された年金はどうなっているのでしょう。 それは年金財政の中にとどまり、年金財政に貢献したということです。 ●直子さんは考えた 今月、年金事務所に書類を出せば来月から夫の年金は減額される。 請求は2年以内なので、ぎりぎり2年まで待って書類を出せばどうだろう。 夫の年金は減額されずに済む。何も国に貢献することはない。 ●これはよい方法? 確かに理論的にはそうです。 請求した翌月から改定されるので、請求が遅ければ減額も遅くなります。妻の受取りには関係がないので、妻は損をしません。 ●わからないのが人の命 しかし、これは危険です。 もし、夫のことを考えて請求を待っているうちに、夫が死亡してしまったら? 年金分割は死亡後にはできませんので、直子さんは分割した年金をもらえないことになります。 仮に、直子さんが死亡すれば、夫は年金分割をしなくて済んだということになります。 ●さてどうしますか? 離婚とは、夫と別の人生を歩むということ。 自分のことだけを考えていいと思いますよ、直子さん。 …………………………………………………………………………………………… 日本年金機構は「疑義照会回答」というものをホームページ上に出しています。 これは、各年金事務所からの質問に対する答が書いてあります。 年金事務所からの質問ですので、判断がむずかしいものばかり。 ここに、今回の事例のようなケースがありました。(平成23年12月公表分) 年金分割の合意は成立しているが、請求を出さないうちに死亡した場合にどうなるかということなのです。 死亡したあとの改定請求は行えないとしながらも、特例によって離婚後2年以内であって、死亡後1ヵ月以内であれば、死亡日の前日に改定請求があったものとみなすという回答になっていました。 今回の直子さんのケースでは、夫が死亡したら、すぐに書類を出せばよいことになります。 でも私なら直子さんに、夫の年金減額まで心配することはないので、早く出しておいたほうがよいとアドバイスするでしょう。 死亡後1ヵ月以内といっても、別れた夫のことですから、死亡したことが伝わらないかもしれません。 リスクは大きいと思います。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ファイナンシャルラーニング社の社会保障コラムを担当しています。 現在「退職後に起業する」を掲載中。ごらんください。 http://www.flkk.co.jp/ ●エフピー研究所 継続教育セミナーを担当します 5月27日(日)10:00〜16:00 福岡開催 「5時間でわかる公的年金 年金達人FPになるために」 法改正情報もお届けします。今後の年金制度についても、出されている情報について解説します。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。 詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません) 電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。 すべての相談について、菅野美和子がお答えします。 返信可能なメールアドレスでご連絡ください。 |