★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第291号 2012年5月20日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 問い合わせることがあって、ねんきんダイヤルに電話をしました。 こちらからの質問に、マニュアルどおりの答が返ってきます。 それではわからないので、質問を変えてみましたが、マニュアル以外の答は返ってきませんでした。 そのあと年金事務所に電話をしました。 今、手続きがどの程度進んでいるかを調べていただき、今月には年金証書が届きますという返事をいただきました。 最初から年金事務所に電話をすればよかったのですが、同じ日本年金機構へ電話をしているのです。 年金はマニュアルどおりでは回答になりません。 ひとりひとり、みんな違います。 だからこそ、個人の事情をよく聞いて、相談に応じないといけません。 マニュアルどおりの返事を返しても、それでは解決しないことがあるのです。 ということで、私も肝に銘じましょう。 今日は、最近お問い合わせが多くなった企業年金です。 心配に思う人が増えてきたように思います。 …………………………………………………………………………………………… 第291号 厚生年金基金 ★★★ よくわからない年金額 ★★★ …………………………………………………………………………………………… 一郎さんはまもなく60歳になります。 最近、元同僚だった康夫さんといっしょに飲に行く機会がありました。 ふたりは同じ会社で働いていましたが、一郎さんは、途中で転職し、今は別の会社で働いています。 康夫さんは、その後もずっと同じ会社で働いています。 2人の話は、定年や年金の話になりました。 一郎さんの年金額は70万円。ずっとサラリーマンだったのに少ないなあと思います。 康夫さんの年金は95万円。 康夫さんは、途中で企業年金制度が変更になって一時金を受け取ったから年金額が少ないと言っています。 なんだかおかしいと一郎さんは思いました。 一郎さんは、途中で何も受け取っていないのに、康夫さんより年金が少ないのです。康夫さんは一時金を受け取っているのに、一郎さんより年金が多いのです。 ふたりは同じくらいの年収です。 給料に大きな差があれば年金額も違ってくるでしょう。ところが、給料に大差はありませんでした。 一郎さんはわけがわからなくなってきました。 ●年金額の決め手 年金額の決め手は、給料、ボーナス、厚生年金の加入月数です。 給料やボーナスが多いほど、加入期間が長いほど、年金額が多くなります。 (給料やボーナスには上限がありますので、多ければ多いほど増えるという表現は正しくはありませんが) ●生年月日も影響 老齢厚生年金は生年月日によっても違ってきます。 生年月日によって計算上の率が異なります。 若い人ほど少なくなると言っていいでしょう。 ●年金額が少ない! ねんきん定期便に書いてある年金額が少ないというご相談はよくあります。 確かにどう考えても少ない人がいます。 多くの場合、厚生年金基金加入期間が影響して、ねんきん定期便に記載されている年金額が低額になっています。 ●ほんとうは少なくない! ほんとうは少なくないのです。 厚生年金基金は、国の年金を企業(基金)が代行しています。 つまり、企業から年金を受け取るので、国から受け取る年金額は少なくなります。 ●合算すれば多い! 国からの年金と企業からの年金を合計すれば、厚生年金だけに加入している人より年金額は多くなります。 ●一郎さんの場合 転職前の会社は厚生年金基金に加入していました。 基金から受ける年金額が入っていないので、年金額が少ないように思えます。 しかし、定期便に記載されている70万円の他に、基金から受け取る年金があります。 ●康夫さんが受け取った一時金とは? 康夫さんの会社は、途中で、厚生年金基金を代行返上しました。 代行返上のときに、一郎さんは一時金を受け取りました。 ●代行返上とは? 本来国が運営すべき年金を、国に返すということです。 その後、企業は代行部分のない企業年金制度を運営していきます。 代行返上をすると、年金は基金からではなく国から受け取ることになります。 ●加算部分 基金はかならず加算(プラスアルファ)をつけるようになっていますので、代行返上をするときに、それまでの加算部分については、次の制度に移行したり、精算したりします。 康夫さんは、加算部分を一時金で受け取っていたのです。 ●では一郎さんは? 代行返上するときに一郎さんにもお知らせがあったと思います。 一郎さんは一時金で受け取らなかったので、一郎さんの年金が残っているのです。 一郎さんの年金は、企業年金連合会へ移されています。 …………………………………………………………………………………………… 一時金を受け取った康夫さんの年金が多くて、何も受け取らない一郎さんの年金が少ないわけは、謎解きのような感じがしますね。 ふたりの年金額は、同じような条件であれば、それほどかわらないはず。 基金がかかわってくると、年金はわかりづらくなります。 そして、基金に加入していたかどうかさえ、わからない人がたくさんいます。 わからない人は手続きもしませんので、結局、損をしてしまいます。 これまでに一時金で受け取っていなければ、年金資産は残っています。 「そんなこと言われてもわからない」と言われそうですが、むずかしく考える必要はありません。 ねんきん定期便をよくみましょう。 ねんきん定期便に基金加入期間が書いてあれば、基金から受け取れる年金がある、何も書いてなければないと理解してください。 もちろん、年金記録が間違っている場合もありますので、自分の記憶と違うときは、納得いくまで調べましょう。 基金の記録と国の記録に不整合があることも多いようです。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ファイナンシャルラーニング社の社会保障コラムを担当しています。 現在「障がいのある子を持つ」を掲載中。ごらんください。 http://www.flkk.co.jp/ ●アサヒSR年金研究会からのお知らせ アサヒSR年金研究会は大阪の社会保険労務士である小林賢介氏主催の年金研究会です。 次回、福岡開催は7月29日(日)に決定しました。(福岡市中央区にて) テーマは「年金問題について国民はどこまで理解しているのか?」 今回は、社労士ばかりではなく、FPの方にもおすすめです。 http://www.asahi-sr.com/ …………………………………………………………………………………………… ■□■ 年金相談室のご利用案内 ■□■ 「女性のための年金相談室」では、メールによる無料相談を受けております。 詳細はホームページでご確認ください。(男性・女性にかかわりません) 電話・面談による相談は有料ですが、メール相談(回数制限あり)は無料です。 すべての相談について、菅野美和子がお答えします。 返信可能なメールアドレスでご連絡ください。 |