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知っておきたい年金のはなし    第292号 2012年6月1日発行

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協会けんぽが署名活動に取り組んでいます。
健康保険料の地域格差の解消や、保険料負担の軽減を国に要請する署名です。
協会けんぽがこういう署名活動をするとは意外でした。
政府管掌時代には考えられないことですね。

それほど、財政がきびしいということでしょう。

もともと、社会保険事務所で健康保険も厚生年金も取り扱っていたのに、それをふたつに分けたのです。
なぜ、分ける必要があったのか、私は疑問に思っています。
分割することにより、不都合なことや、経費の増加もあったのではないでしょうか。

それでは、今回は、在職老齢年金のお話をしましょう。よくある誤解です。

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第292号 在職老齢年金
★★★ 落とし穴にはまる ★★★
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信彦さんは3月に60歳を迎えました。定年は3月末。
会社には継続雇用制度がありますが、信彦さんは、継続雇用を希望しませんでした。
信彦さんは、定年後は自分で事業を開始することにしていたのです。

定年前から準備し、会社を設立。
4月1日から心機一転、自分の会社で仕事を始めました。
社員を2人、雇い入れました。

システム開発の仕事です。
定年まで勤めた会社から仕事の発注を受け、まずまずのスタートを切りました。
とはいえ、軌道に乗るまでは、自分の役員報酬は多くは取れません。

信彦さんは、考えました。
60歳から年金が月に10万円。
役員報酬を18万円にする。
すると、年金は全額受け取れる。

妻も会社を手伝うことにしました。勤務はパート勤務で、給料は月額10万円。
10万円なら、健康保険の扶養家族になれるので、ちょうどいいと信彦さんは考えました。

信彦さんは4月になって年金の手続きをしました。
全額受け取れると思っていた年金ですが、決定通知書が届き、びっくりしました。
年金は支給停止になって、わずかしか受け取れません。

計算が違います。
年金全額もらえるように役員報酬を18万円としたのに、なぜ、年金は全額もらえないのでしょうか。
生活費が入ってこないと大変です。


60歳以降、自分の老齢厚生年金をもらえるようになった人が、厚生年金に加入する会社で働いていると、年金が減額されることがあります。

●減額の仕組み

簡単にいえば、給料が多くなると、年金額が減額される仕組みです。
給料は標準報酬月額(厚生年金の等級表の額)を基準にします。

●給料だけではない

ただし、毎月の給料だけではありません。
過去1年のボーナスの12等分が加わります。
標準報酬月額プラス過去1年間のボーナスの12分の1を総報酬月額相当額といいます。
これを基準にして年金額を減額します。

●28万円

年金月額と総報酬月額相当額が28万円を超えると、減額がはじまります。

●会社は辞めたよ!

退職後、再就職した場合も、前の会社でもらったボーナスが年金額に影響します。
信彦さんは退職前に受け取ったボーナスも含めて計算しなければならなかったのです。
引き続き厚生年金に加入する場合は、会社が変わっても影響を受けます。

●年金が減額されたわけ

信彦さんは昨年の12月に100万円のボーナスをもらいました。
退職間際の3月に期末手当が50万円ありました。
昨年夏のボーナスは80万円。
いまどき、これだけボーナスをもらえるということはうれしいことですが、結果として年金額に影響を与えています。

●なんとかならない?

信彦さんはボーナスをもらったとはいえ、会社設立でかなりの資金を出しました。
なんとかよい方法がないかと考えましたが、届け出た役員報酬を間違っていたなどと訂正はできません。
また、今から役員報酬を下げたとしても、すぐに年金が全額支給されるわけではありません。

●待つしかない

ボーナスが影響するのは、ボーナスをもらったときから1年間です。
最後に受け取った期末手当から1年経過すると、ボーナスの影響がなくなり、年金は全額受け取れます。
当初の計算どおりです。
それまで我慢して、待つしかありません。

●自営業という選択

法人化することなく自営業であれば、年金全額をもらえていました。
だからといって、自営業がよいというのではありませんが。

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信彦さんのように在職老齢年金の落とし穴にはまることはよくあります。
継続雇用であれば、ボーナスが影響するだろうということはわかりますが、いったん会社を辞めてしまったあとは間違いやすいです。

個人の相談者から時々あるのは、会社の担当者に計算してもらった額と違っていたというお話。
試算よりも大幅に少ないというときは、責任問題にも発展します。

お話を聞くと、ボーナスを計算に入れていないのです。
信彦さんのケースは、よくある話です。

まったく年金の知識がなければ、在職老齢年金を計算しようと思いませんが、知識があるがために、間違った計算をすることがあります。 ボーナスについては気を付けてくださいね。

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お仕事帰りにお立ち寄りください。詳細は追ってお知らせします。
自分自身のねんきん定期便の読み方がわかります。
年金額を誤解している方は、とても多いのですよ。一度確認してみませんか。

●ファイナンシャルラーニング社の社会保障コラムを担当しています。
現在「障がいのある子を持つ」を掲載中。ごらんください。
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