★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第294号 2012年7月4日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ たくさんの年金相談をいただきますが、気持ちが沈んでしまうこともあります。 相談の内容がつらいのです。 相談者はもっとつらいだろうと思いますが。 年金とは生きるための制度です。 しかし、長く生きていくことが無理であるとわかっている人に、どんな説明をすればよいのでしょうか。 遺族年金がある! 遺族年金は残された家族が受け取る年金です。 でも、遺族年金をもらえないこともあるのです。 結局、年金制度から何もないこともあるのです。 もらえないとわかっているとき、さて、何とお答えしますか。 …………………………………………………………………………………………… 第294号 未納の結果 ★★★ 捨てるのは自分の年金だけ? ★★★ …………………………………………………………………………………………… 絵美さんは55歳。夫は56歳です。 夫は17年の会社勤めのあと、個人事業主として事業を始めました。 絵美さん自身は国民年金の保険料をずっと納付してきましたが、夫は納付していません。 事業資金で大変なときもありました。 だんだんと事業も上向いてきてほっとしていたとき、夫は発病しました。今から3年前です。 がんを宣告され、治療を続けてきましたが、あと数年、生きられるかどうかという状態です。1年も生きられないかもしれません。 夫にもねんきん定期便が届いています。 厚生年金加入月数が17年(204月)。他はありません。 納付状況には「未加入」という文字。 あと数年も生きられない夫に、年金は関係ないように思えます。 しかし、サラリーマン時代に17年も支払った保険料は、ただ、捨ててしまうしかないのでしょうか。 ●25年の準備期間はありますか? 老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取るためには、保険料納付済期間や免除期間などが、原則25年必要です。 絵美さんの夫の場合、17年の厚生年金加入期間のみでは老後の年金は何も受け取れません。 会社を辞めたあと、国民年金の手続きをしておくべきでした。 ●あと数年の命! 病状からみて、あと1年か、長くて数年。 長生きできれば年金の価値はありますが、生きることができないとわかっていれば、老後の年金は価値のないものになります。 ●老後以外の年金もある 年金は老後ばかりではありません。 障害年金もあれば、遺族年金もあります。 ●障害年金はどうでしょう 絵美さんの夫は、国民年金の被保険者中、しかも未納期間中に発病しています。 未納期間が長いので、保険料納付要件は満たさず、障害基礎年金をもらえません。 病状が悪化すれば、障害等級2級に該当するでしょうけれど、未納のためにもらえないのです。 ●今から納付してももう遅い 障害年金の保険料納付要件は初診日の前日で判断します。 今から納付しても遅いのです。 ●遺族基礎年金はどうでしょう? 子どもは成人しているので、遺族基礎年金はもらえません。 遺族基礎年金は18歳の年度末までの子どものいる妻に支給される年金です。 ●それでは遺族厚生年金は? 25年の受給要件を満たしていえれば、国民年金加入中の死亡であっても、遺族厚生年金を受け取ることが可能です。 厚生年金実加入期間で計算した遺族厚生金が支給されます。 ●要件を満たしていない! ところが、絵美さんはもらえません。 夫には17年の厚生年金加入期間しかなく、25年の要件を満たしていないのです。 ●免除の手続きをしていればよかった? 納付できないときに、免除を申請していれば、また違ってきたでしょう。 特に病気をしてからは満足に働けない状態であったので、免除は認められていたでしょう。 ●今からどうすればよい? これから手続きして免除が認められても、障害年金はもらえない、遺族年金はもらえない。老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給する前に亡くなれば、何もありません。 ●保険料納付は義務 それではこのまま保険料を納付しなくてもよいかというとそうではありません。 納付は義務としか言えません。納めなくてもよいとは言えません。 ●免除申請をすればどうなる? 今、7月です。 7月中に免除申請をすれば、昨年の7月にさかのぼって、免除となります。(免除の要件に該当したとすればの話です。) しかし、免除の手続きをきっかけに、さらに1年前(2年前)の保険料は請求されます。 ●保険料納付でメリットはある? その保険料を納付しても、受け取れるものはありません。 でも、義務なのです。 …………………………………………………………………………………………… 絵美さんの夫は、10月からスタートする年金確保支援法で過去10年以内の未納を納めてしまうと、受給資格期間の25年を満たすので、絵美さんは遺族厚生年金を受給することができます。 しかし、約140万円の保険料が必要です。それを納付して、受け取れる遺族年金額はどのくらいになるでしょう。 夫の報酬比例部分(2階の年金)の4分の3なので、年間20万〜30万円程度かもしれません。 こういった選択もありますが、140万円は大金です。 絵美さんの夫の年金の加入記録をみて、気がついたことは記録が「未加入」となっていたことです。 20歳以上60歳未満の日本国内に住む人は国民年金へは強制加入です。 ほんとは「未納」です。 絵美さんの夫が会社を辞めたあと国民年金への手続きをしていないので、「未加入」と記載されているのでしょうけれど、強制的に被保険者となるので、「未納」ではないかと思います。 「未加入」などと書いてあると、加入しなくてよいという印象を受けます。 「未納」となっていて、納付書が届くと、なんとかしなければならないと思うでしょう。 絵美さんへのアドバイスは、むずかしいものです。 余命いくばくもないとわかっていて、病気で生活も大変だというのに、原則的なアドバイスでは対応できません。 未納の結果は、これまでの保険料を捨ててしまうことになるばかりではなく、残された家族への遺族年金の道を断ってしまうことにもなるのです。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ 7月24日(火) 19:00〜20:30 福岡市中央区天神 「書斎りーぶる」にて お仕事帰りにお立ち寄りください。 自分自身のねんきん定期便の読み方がわかります。 年金額を誤解している方は、とても多いのですよ。一度確認してみませんか。 参加費は500円(コーヒー&クッキー付き) 連絡先092-713-1001 お席に限りがありますので、お早目にお申し込みください。 ●アサヒSR年金研究会からのお知らせ アサヒSR年金研究会は大阪の社会保険労務士である小林賢介氏主催の年金研究会です。 福岡開催 7月29日(日)(会場は福岡市中央市民センター) テーマは「年金問題について国民はどこまで理解しているのか? 今回は、社労士ばかりではなく、FPの方にもおすすめです。 http://www.asahi-sr.com/ |