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知っておきたい年金のはなし    第298号 2012年11月1日発行

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福岡の書斎りーぶるさんで、「ワンコイン年金セミナー」を毎月継続しています。
質問がどんどん出て盛り上げります。
今月は、女性と年金。女性のための年金10カ条が登場するなど、これまでにないスタイルでお話しします。
(遠方の方には申し訳ありません)

ところで、いよいよ年金空白時代がやってきます。
昭和28年4月2日以降に生まれた男性、つまり60歳で年金をもらえない世代が、来年度、60歳をむかえます。

そんな世代のご相談も増えてきました。
ほとんどの方が働かざるをえないと言われます。

よい方法はないのでしょうか。

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第298号 老齢厚生年金の繰上げ
★★★ 年金空白時代の助っ人となる? ★★★
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昭和28年4月5日生まれの直人さんは、60歳で年金をもらえるものと思っていました。
現在、サラリーマンですが、人間関係に疲れてしまい、定年でやめる予定です。
ねんきん定期便でみる年金額では不十分ですが、アルバイトすればなんとか暮らせるだろうと思っていました。

会社の先輩、まわりの人は、60歳から年金をもらっています。
ところが、送ってくる定期便をよく見ると、支給開始年齢は61歳と書いてあります。
急に気になって、年金相談にいきました。

そこで説明されたのは、昭和28年4月5日生まれの男性は、61歳が支給開始であるということです。

そんなこと、いつ、誰が決めたのかと直人さんは真っ青になってしまいました。
しかし、年金相談の窓口で怒っても始まりません。

今の会社は定年で辞めたいと思っています。

なにかよい手立てはないのでしょうか。

●年金空白世代

昭和28年4月2日以降に生まれた男性は、61歳が厚生年金の支給開始年齢です。
これは急に決まったことではなく、前から決められていたのです。

●60歳で退職すれば

60歳定年で退職すると、収入の道が閉ざされてしまうことになります。
61歳から年金を受給開始しても、金額的には多くはありません。
65歳までは、貯蓄を取り崩していくことになるでしょう。

●失業給付

60歳で退職したあとは、雇用保険の失業給付があります。
もちろん、働く気持ちがないともらえませんが、最大で150日(5か月)は給付金があります。
しかし、定年後、給付金でつなげるのは、半年足らずです。

●老齢厚生年金の繰上げ

仕事を辞める、年金もない、収入がなくて困るという人には、老齢厚生年金を繰り上げるという方法があります。
61歳から受け取る年金を早く(一番早くて60歳0カ月から)もらうのです。
早く受け取るかわりに年金額は減ります。

●老齢基礎年金の繰上げ

老齢厚生年金の繰上げは、老齢基礎年金も併せて繰上げしなければなりません。
老齢厚生年金だけを繰上げすることはできません。
仮に60歳0カ月で繰上げをするのであれば、老齢基礎年金は7割になります。

●それでよければ空白時代をカバーできる

繰上げは、空白時代を補うことができる制度です。
どうしても年金がなければ生活できないというときの方法と考えてください。

●繰上げのデメリット

繰上げすると、年金額は減ります。
いったん繰上げすると、取り消しや変更はできません。
障害基礎金を請求できなくなったり、他にもいろいろなデメリットがあります。

●損益分岐点

通常どおり受け取る場合と、繰り上げて受け取る場合を比較すると、損益分岐点が出てきます。
損益分岐点よりも前に死亡すると繰上げの効果があり、分岐点を超えて長生きすると、総受取額で損をするということになります。

●そんなことはわからない

そうです。人の寿命はわかりません。
総受取額で得か、損かと考えるのではなく、年金空白時代をどう乗り越えていくかという視点で考えてください。
老齢厚生年金の繰上げという手立てもあるということなのです。

●繰上げするとすれば

失業給付を受ける人は、失業給付終了後に繰上げの手続きしてください。

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個人的には、繰上げはおすすめしたくないですね。
長生きリスクに対応できないし、繰り上げたことを後悔する可能性があるからです。
できることなら、何らかの対策を講じて、年金空白時代に備えたいものです。

他に方法がないというときに、繰上げという方法があるということなのです。

まもなくやってくる年金空白時代については、企業としての対応も迫られてくるでしょう。
60歳以降、継続雇用はするが賃金は下げるという制度を導入している企業がほとんどでした。

賃金を下げるというのは、年金や雇用保険の給付金を活用できる賃金を設定するということだったはず。

しかし、状況は変わってきます。
年金を理由に賃金を下がられません。だって、その年金が支給されないのですから。
これまで理由として通っていたことが、通らなくなります。
企業も60歳以降の賃金体系などを見直さなければなりません。

そして、年金を受け取れない人は、どうやって65歳まで生活するのか、考えておかねばなりません。
働かないという選択をする場合は、準備が必要です。
働きたくても働けないということもあります。

公的年金を満額もらえるようになっても、生活するに充分な額とはいえません。
ますます老後への備えが必要になってきています。
そのことを知っておいてほしいと思います。

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11月15日(木) 19:00〜20:30 お仕事帰りにお立ち寄りください。
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お席に限りがありますので、お早目にお申し込みください。
「書斎りーぶる」さんでは、著書を置いていただいていますので、ごらんください。