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知っておきたい年金のはなし    第306号 2013年4月1日発行

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今日から4月です。
昭和28年4月2日生まれの人は、今日(誕生日の前日)で満60歳となります。
「お誕生日おめでとうございます」とともに、男性には、「年金は来年からになる」とつけ加えなければなりません。

継続雇用制度で65歳までを義務化していますが、抜け穴もあり、継続雇用制度がありながら、退職せざるとえないケースもみています。

年金をもらえないのに定年退職。
この年金空白期間をそのように考えていけばよいのでしょうか。

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第306号 年金空白期間の到来
★★★ 60歳定年で年金を受け取れない ★★★
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真一さんは4月5日に60歳をむかえます。
亡くなったおかあさんから聞いた話では、予定日は3月末だったのに、1週間ほど遅れて生まれてきたとか。

真一さんはずっと事務職を続けてきました。
会社には再雇用制度があり、希望すれば継続して働くことができますが、これまでほとんどの先輩たちが辞めていきました。
いったん再雇用された人も1年経過後には退職していきます。

その原因は再雇用後の職種でした。
再雇用後は営業職となります。顧客を訪問する仕事が中心となります。
給料は時給です。フルタイムで働くことができますが、月額は6割程度に下がります。

真一さんの会社で継続雇用が機能しないのは、給料よりも、職種の変更に原因があるようです。

事務職しか経験のない真一さんは、営業職はとても無理だと思います。また60歳になって、慣れない仕事はしたくありません。
先を見越して再就職先をみつける同僚もいましたが、真一さんはできませんでした。

結局、真一さんは「本人が継続雇用を希望しない」という理由で退職することになりました。

退職金はありますが、年金はもらえません。
再就職先はすぐに探すつもりですが、事務経験しかない、60歳の男性を雇ってくれる会社はあるのでしょうか。

60歳までがんばって働いたのに、妻にも不機嫌な顔をされて、真一さんは、自分の家にも居場所がありません。
さて、どうしたらよいのでしょうか。

●雇用保険の手続きから

まず、最初にするのは雇用保険の手続きです。
会社から離職票が送られてきたら、ハローワークへ出向きましょう。

●3か月待つことはない

自己都合の場合は、3か月待って失業給付(基本手当といいます)となります。
真一さんは定年退職ですので、通常の自己都合退職とはちがい、3か月待つ必要はありません。
ハローワークへ申し込みに行った日から、7日間経過後より基本手当は支給されます。

●基本手当の金額は?

退職前6ヵ月の賃金(賞与は除く)で計算された金額となります。
ただし上限があります。60歳以上の人の上限は1日6,759円です。
(上限は毎年8月1日に変更されます)

●基本手当の給付日数は
35年会社勤めをした真一さんは150日です。
20年以上の雇用保険加入期間がある人は150日となります。
5か月間は受け取れるということですね。

●年金は考えなくてもよい

60歳から65歳に到達するまでは雇用保険の基本手当と老齢厚生年金は同時に受け取れません。
しかし、60歳で年金をもらえない人は、年金との調整を考える必要はありません。
次の仕事を探している間は、失業給付を受け取るしかないですね。

●年金支給開始までの空白

5か月で失業給付は終わります。仕事がみつかればよいのですが、みつからない場合は年金の支給開始までまだ半年程度あります。

●老齢厚生年金の繰上げ

その間、どうしても年金を受け取りたいという場合は、老齢厚生年金の繰上げという制度があります。
半年前に繰り上げるのであれば、老齢厚生年金の繰上げ減額率は0.5%×6月で3%ですので、たいして減額はされないと考えていいでしょう。

●老齢基礎年金の繰上げ

ところが、老齢厚生年金を繰り上げる場合は、老齢基礎年金を合わせて繰り上げることになります。
65歳から受け取る老齢基礎年金を4年半早く受け取ることになると、減額率は27%です。(0.5%×54月=27%)
※ 減額率は請求月により異なります。

●繰上げを考える

どうしてもお金が必要、繰上げをしたいということであれば、繰上げもひとつの方法です。
ただし、繰上げは慎重にしなければなりません。

●再就職でのデメリット

繰上げ後に再就職したとします。
老齢厚生年金は再就職後の給料でカットされます。
全額支給停止となれば、老齢厚生年金はもらえないので、繰上げした意味がありません。
(繰上げした老齢基礎年金だけはもらえます)
そういうことを含めて考えておかねばなりません。

●障害年金でのデメリット

もし、繰り上げしたあとで事故や病気で、障害年金をもらえるような状態になっても、繰り上げしている人は請求できません。

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年金空白期間への対応のひとつは、やはり働くことです。
年金が入ってこなければ、働いて収入を得るしかないでしょう。
それ以外には、お金に働いてもらうという方法(金融商品の活用)もありますが、誰でもあてはまりません。
それは手元資金がないとできませんし、必ず成功するとも限りません。

60歳で継続雇用に移行するとき、賃金を減額する理由のひとつに年金がありました。給料は減額しても年金があるから手取り額が大きく減少しないという言い訳ができました。
しかし、この言い訳、これからは通用しません。

雇用保険制度には賃金が下がった人に支給する高年齢雇用継続給付金がありますが、給与の減額を一部カバーするにすぎません。
収入を多く得たいと考える人から言えば、できるだけ60歳前と同じ条件で働き続けたほうがよいということになります。

もうひとつは繰上げ制度の利用ですが、繰上げはあとで取り消しをすることができないので、慎重に選択しなければなりません。のちに後悔する人も多いのです。

いずれにしても61歳から年金を受け取るようになっても、それだけで生活費はまかなえません。

年金の支給開始年齢の引き下げは、実は若い人の問題でもあるのです。
どのような生活設計を描き、お金はどうするのか、早いうちに考えておかないといけない時代がやってきました。

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■□■ お知らせ ■□■
●ファイナンシャルラーニング社にてコラム掲載中
「専門家でつなぐ介護コラムで」介護保険とお金の分野を担当しています。
http://www.flkk.co.jp/

●FP専門家ネットワーク「マイアドバイザー」にてコラム掲載中
「ライフプラン別コラム」女性と社会保険を担当しています。
http://www.my-adviser.jp/column/index_cat.php?cat=5

●書斎りーぶる主催 ワンコイン年金セミナー
4月23日(火) 19:00〜20:30 お仕事帰りにお立ち寄りください。
福岡市中央区天神 「書斎りーぶる」にて 参加費500円(コーヒーとクッキー付き)
今回は「火曜 年金ミステリー劇場」
複雑怪奇な年金制度。ミステリアスなこともたくさんあります。年金制度の真実に迫ります。
ワンコイン年金セミナ−は今回が最終回です。
5月以降は「くらしとお金カフェ」が始まります。第3月曜日を予定しています。

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5月25日(土)10時〜16時 講師は菅野美和子です。
「5時間でわかる公的年金」2013年改正ポイント徹底分析編
最近(2012年〜2013年)の法改正、実施予定(2016年まで)の法改正について
成立した4法案を中心にお話します。年金空白世代への対応についても解説します。
この機会に年金改正点をマスターしましょう。
http://www.kyoukara.jp/school/detail.php?id=51
FPの継続教育研修ですが、どなたでも参加できます。