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知っておきたい年金のはなし    第315号 2013年9月17日発行

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年金のセミナーではよくお話しするのが、「正しい情報で判断しましょう」ということです。

年金制度は複雑なので、誤解が多いです。

誤解、勘違いで、これからのプランを考えていくと、とんでもないことになります。

年金受給前には専門家への年金相談をおすすめします。

同じことは、会社の経営者の方にもいえますね。

会社を立ち上げるときには、必要な社会保険関係の知識を持っておくことが大切です。

あとで大変なことに発展するかもしれません。

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第315号 社会保険は強制加入
★★★ 自分で選択できること、選択できないこと ★★★
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直樹さんは10年前に会社を退職。
在職中の経験を活かして、自分でお店を始めました。
従業員も雇用するようになりました。

退職してからは、国民健康保険と国民年金に加入してきました。

数年前、個人事業を法人化しました。
それでも、国民健康保険と国民年金のままでした。

そして、60歳になりました。
国民年金は60歳になったので、加入義務はありません。

直樹さんは61歳から老齢厚生年金をもらえます。
61歳を前に、年金が気になってきました。

直樹さんは毎月50万円の役員報酬を受け取っていますが、61歳から年金はもらえるのでしょうか。

●60歳台前半の在職老齢年金

年金を受け取りながら給料も入るのであれば、「年金は全額必要ないだろう」というのが厚生年金における在職老齢年金の仕組みです。

●働くとは、どんな働き方?

厚生年金に加入する働き方です。
厚生年金に加入しながら、老齢厚生年金を受給すると年金はカットの対象となります。

●どれだけ減額になるの?

給料(総支給額をイメージしてください)と年金の月額が28万円を超えたら、超えた額の半分、年金がカットされます。
過去1年間に受け取ったボーナスも関係あるのですが、話が複雑になるので省略します。

●働き方もいろいろ

厚生年金に加入しない働き方であれば、年金がカットされることはありません。
短時間のパートは問題ありませんよ。
個人事業でも問題ありません。

●直樹さんは個人事業主?

直樹さんは自分ではそう言っています。ほんとうにそうでしょうか。

●株式会社

株式会社は法人です。
社長ひとりであっても、法人に間違いありません。
法人であれば、社会保険に加入しなければなりません。

社長ひとりの法人の場合、「個人で仕事をしています」と言われる方は意外に多いです。会社名をたずねると、すぐにわかりますが。

●法人の場合、社会保険は強制?

そうです。選択の余地はありません。
選択できるように思っている人もいますが、そうではありません。

●直樹さんもほんとうは厚生年金加入?

法人化したときに、健康保険・厚生年金の加入手続きをしなければなりませんでした。
それをしていかなったのです。

●直樹さんの年金はどうなる?

直樹さんは現在、役員報酬として50万円を受け取っています。
この金額であれば、在職老齢年金は計算するまでもなく、全額支給停止、受け取り額はゼロです。

●でも厚生年金には加入していないよ

適正に加入していないだけであり、本来は加入しなければなりません。
加入しなければならないことがわかると、最大で2年前にさかのぼって加入することになるかもしれません。

●さかのぼっての加入となれば?

直樹さんが年金を受給しはじめてから、過去にさかのぼって厚生年金に加入すると、もらえないはずの年金をもらっていたことになりますので、年金は全額返還です。

●いったん受け取ったものを返すの?

それは困るというのであれば、法人を廃止するか、直樹さんが会社から手を引くか、役員報酬を年金に影響が出ないくらいに下げるか・・・
ただ、これらは今後の話。
今から対策をとっても、過去の分(過去2年分)は消えません。

●なにかよい方法はある?

厚生年金のために、法人を廃止することにならないでしょう。
現実的ではないですね。
社会保険の加入手続きを取ってください。
社会保険に加入しても赤字にならないような経営対策を考えてください。

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社会保険への加入等は自分で選択することができると勘違いしている人は多いものです。

制度が複雑なのでしかたのない点もありますが、法務局で法人登記するときに、社会保険への加入を報告させるとか、それくらいの措置をとらないと、社会保険に加入しない事業所はあとを絶ちません。

許認可制の事業では、許認可を受けるときに、社会保険加入状況を確認するので、加入しないと許認可を受けられないとなっています。
それぐらいきびしくする必要があるかもしれません。

ただし、社会保険制度、とりわけ年金制度を魅力あるものをしていく必要があります。
入りたくなるような制度です。

保険料は上がる、年金額が減額するでは、魅力が下がっていきます。
もちろん財政確保が大切ですが、国民に理解を得られるように、説得力のある資料を示し、国民からの声を聴くようにすれば、また違ってくるのではないでしょうか。

罰則だけを厳しくしても、制度はよくなりません。

直樹さんは、「そんなことは知らなかったよ」と言っています。
実際に社会保険加入基準を知らなかったのです。
しかし、知らなかったから法律違反しても許されるということではありません。
経営者になるには、当然、知っておくべきことでした。

この直樹さんの問題には、実はいろいろな課題がみえてきますね。

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■□■ お知らせ ■□■

●書斎りーぶる主催 「やさしくためになる すがのみわこの くらしとおかねカフェ」

9月18日(水) 19:00〜20:30 お仕事帰りにお立ち寄りください。
福岡市中央区天神 「書斎りーぶる」にて 参加費500円(コーヒーとクッキー付き)
「病気や介護にかかるお金」
病気になったときのお金、介護が必要になったときのお金についてお話します。
お申し込みは「書斎りーぶる」へ。
http://www.shosai-livre.com/main/welcome.html

●福岡県古賀市主催 男女共同参画セミナー

「これからのくらしと年金」 講師:菅野美和子
10月5日(土)10時〜12時 古賀市役所にて 参加費は無料
知っておくときっと役に立つお話をお届けします。
お申込みは 古賀市役所総務課男女共同参画係 092-942-1260
お近くにお住まいの方、ご参加ください。

●保険市場にて年金コラム担当中「女性と年金」

女性にとって役立つ情報をお届けします。

http://www.hokende.com/static/pension/features/woman/

●FP専門家ネットワーク「マイアドバイザー」にてコラム掲載中

「ライフプラン別コラム」女性と社会保険を担当しています。

http://www.my-adviser.jp/column/index_cat.php?cat=5