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知っておきたい年金のはなし    第321号 2014年1月24日発行

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4月から改正される年金制度について詳細なことがわかってきました。

夫にも遺族基礎年金を支給という改正は男女平等を考えると当然のことですが、その裏側で、第3号被保険者が死亡した場合は、遺族基礎年金を支給しないなど、改悪とも言えることが予定されていました。

しかし、反対意見が多く、当初の案を修正して閣議決定されました。

何がいったいどうなっているか、見えにくいかと思います。

今回は、遺族基礎年金改正についてのお話です。

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第321号 4月以降の遺族基礎年金
★★★ 妻から配偶者へ 夫もOK ★★★
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杏子さんは8年前に夫をがんで亡くしました。
会社員だった夫は、病気治療のために退職し、その後、治療も及ばす、帰らぬ人となりました。

杏子さんは会社で仕事をしていました。
夫が退職したあと、無収入となってしまった夫を自分の扶養家族にしていました。

夫が退職するときは、休職を繰り返したあとだったので、すでに傷病手当金の支給も終わり、夫に収入はありませんでした。

夫が亡くなったあと、杏子さんは、遺族年金を受け取るようになりました。
当時、下の子どもが高校生だったので、遺族基礎年金と遺族厚生年金でした。
子どもが高校を卒業したのちは、遺族厚生年金のみとなり、今に至っています。
杏子さんは働いていましたが、遺族年金は生活していく上でたすかりました。

ところが、共働きの友人夫婦で、妻が亡くなるということがありました。
子どもは高校生でしたが、妻が死亡しても、夫は何も受け取ることはできませんでした。

男女差があるのだと杏子さんは初めて知りましたが、4月からその男女がなくなるということも聞きました。

夫でも妻でも同じように遺族年金をもらえるようになるのだねと杏子さんは思いましたが、何がどう変わるのでしょうか。

●遺族基礎年金の改正

遺族基礎年金を受け取ることができる遺族とは、子どものいる妻、子です。

子どもは18歳の年度末まで(一般的には高校卒業するまで)、障害等級1級、2級にある子どもは20歳未満という年齢制限があります。
法改正で、「妻」が「配偶者」となります。

●これまで夫は対象外

遺族基礎年金は夫を対象外としていました。
夫を除外しているにはわけがあって、国民年金の制度ができたときは、一般的に夫が働き、妻が家庭を守るという世帯が多かったことから、妻を守る制度としてスタートしたのです。
夫を守るべきだとは考えなかったのですね。

●時代は変わる

今や共働き世帯が増え、しかも、男性の給料が多いとも限りません。
夫婦いずれかに万が一のことがあっても、困るのは同じです


●男女平等も後押し

男女平等という視点から考えても、遺族基礎年金の仕組みは時代に逆行しています。

●「妻」から「配偶者」に

むしろ遅すぎた感じはありますし、消費税と抱き合わせにしてなくてもよいと思いますが、妻が「配偶者」に改正されます。
これまで「妻」となっていたところを「配偶者」と読み替えてください。

●これで夫も対象に

妻が死亡したとき、対象となる年齢の子どもがいる夫であれば、遺族基礎年金を受け取ることになります

●これは改正だね!

改正とみえますが、実は、政令で気になることが予定されていたのです。

●死亡者が第3号被保険者の場合は対象外

死亡した人が第3号被保険者である場合は、遺族基礎年金を支給しないというものでした。

●結局もらえないの?

そうです。第3号被保険者である妻が死亡して、幼い子どもと夫が残されたようなケースでは、結局、夫は遺族基礎年金をもらえないとなるところでした。

●心配なのは逆のケース

杏子さんの夫が死亡したとき、夫は第3号被保険者でした。
働けなくなった夫を第3号にしていたのは当然のことです。
こんなときはどうなるのでしょう。
第3号被保険者の死亡を対象外となると、杏子さんのようなケースでは、遺族基礎年金をもらえないことになります。

●反対意見が多く

杏子さんのような事例をあげて、これはおかしいと指摘する声がたくさんあり、結局、第3号被保険者を対象外とする案は修正され、現行のままとなりました ……………………………………………………………………………………………

4月以降は、妻が死亡したとき、夫も遺族基礎年金の対象者になると理解してください。

私が気になったのは、今回は見送られたものの、もし反対意見が出てこなかったら、そのまま通っただろうという「第3号被保険者はずし」です。

夫が病気で自分の扶養に入れた杏子さんのようなケースで、遺族基礎年金がもらえないというのは、不合理だと思います。

しかし、遺族年金を父子家庭にという情報だけでは、「それはいいんじゃないの」と終わってしまいます。
その裏側に何があるのか、私たちはもっと見ていかなければなりません。

実際に、怖いなあと思ってしまいました。
社労士として、不合理な改正が実行されようとしているときは、意見を出していかねばならないとあらためて思いました。

それから、遺族厚生年金については、何ら改正がありませんので、ご注意ください。やはり、夫は不利です。

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■□■ お知らせ ■□■

●FP専門家ネットワーク「マイアドバイザー」にてコラム掲載中

「ライフプラン別コラム」女性と社会保険を担当しています。
http://www.my-adviser.jp/column/index_cat.php?cat=5

●書斎りーぶる主催 「やさしくためになる すがのみわこの くらしとおかねカフェ」
毎月、くらしとお金にかかわるテーマでお話しています。

次回は2014年2月19日(水) 19:00〜20:30 
福岡市中央区天神 「書斎りーぶる」にて 参加費500円(コーヒーとクッキー付き)