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知っておきたい年金のはなし    第323号 2014年3月10日発行

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ファイナンシャルラーニング社のサイトでコラムを書いています。
「病気やケガで困ったときの支援制度」シリーズ、全4回です。

コラム掲載は今月一杯となる予定ですので、興味のある方はごらんください。

さて、3月、4月は人の動きが多くなる時期ですね。
退職する人、仕事に就く人、それぞれ、新生活が待っています。

今回は、退職時期を考える方からの相談事例です。

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第323号 失業給付と老齢厚生年金
★★★ 退職するのはいつがいい? ★★★
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孝子さんは59歳になりました。
これまでパートで仕事を続けてきました。

仕事は半年ごとの契約更新で、特別に更新を拒否されるようなこともありません。
希望すれば65歳までは働き続けられるようになっています。

孝子さんは、65歳まで働くかどうかわかりませんが、60歳で退職する予定もありません。

ところが、一足先に退職した友人から、
「次の契約更新で退職したほうがいい。60歳になって退職して、雇用保険からの給付金をもらうと年金がもらえず損をする」
と言われました。

そんなこともあるのかと思って、孝子さんは迷いはじめました。
損はしたくないものですが、ちょうどよい退職時期があるものでしょうか。

●雇用保険の失業給付

退職すると、雇用保険から失業給付(基本手当)を当然のようにもらえると思っている方もありますが、それは違います。

●基本手当の条件

あくまでも、働く意思があって、働ける状態にあって、仕事を探しているがまだみつからないという条件に該当しないと給付金は受け取れません。

年金のように、保険料を払っているから受け取れるというものではないのです。

●基本手当と老齢厚生年金

60歳〜65歳未満の間で、基本手当と老齢厚生年金を受け取る時期が重なることがあります。
この期間に2つの給付が重なっていると、両方はもらえません。

●59歳10か月で退職した場合

実際にハローワークへ手続きにいったのは60歳になってからというケースでは、基本手当と老齢厚生年金期間が重なるので、両方はもらえません。

●60歳で退職した場合

男性は、老齢厚生年金は61歳からですので、もともと基本手当の期間と老齢厚生年金の期間は重なりません。 女性は期間が重なるので、両方はもらえません。

●64歳と11ヵ月で退職

実際にハローワークへ行って手続きをして基本手当を受給するようになるのは65歳以降になるので、基本手当と年金は調整されることなく、全部もらえます。

●期間が重なるときは

要するに、60歳〜65歳未満の間で、基本手当と老齢厚生年金の支給が重なる場合は、どちらかを選ぶことになります。

●基本手当が多い場合

ハローワークで手続きをすると、老齢厚生年金はストップします。
年金を請求するときに雇用保険番号を記載しますので、自動的に調整されます。

●老齢厚生年金が多い場合

ハローワークで失業給付の手続きをしないでおきましょう。
手続きをしたあとに判明した場合は、ハローワークへ受給しないことを届出てください。

●孝子さんのケース

孝子さんは60歳から老齢厚生年金を受給できる人です。
孝子さんの雇用保険からの基本手当は90日分です。

●友達は何をアドバイスしている?

自分の都合で退職届を出すと、退職理由は自己都合になり、基本手当をもらうまで3か月待たなければなりません。
給付制限期間3か月と基本手当受給期間3か月を逆算して、60歳になる前に雇用保険からの給付金を全部もらい終わるように退職時期を決めればよいと、友人はアドバイスしているのです。

●それはお得なの?

孝子さんの老齢厚生年金は年額36万円です。月に3万円。

60歳以降に退職すれば、基本手当を受け取っている3か月間年金がストップします。
もらえない年金額は3か月で9万円です。

●働いて得る給料

この9万円がもったいないと考えて、60歳の半年前に退職すると、半年間の給料はありません。
給料が月に10万円としても、6ヵ月で60万円です。

●入ってくるお金と生きがいを考えて

60歳以降も働き続けたいと思っているのなら、9万円の年金のために、今退職する必要はないかと思いますが、いかがでしょうか。

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このようなご相談を受けることは多いものです。

年金制度と雇用保険制度、ふたつの制度での調整があり、もらえなくなったり、減額されたりすると、なんだか損をしたような気持ちになるのでしょう。

長い間保険料を払ってきたのにもったいない!
その気持ちはわかります。

しかし、社会保険制度は貯蓄ではなく保険です。

私たちは火災保険に加入しますが、火事を起こさなかったので損をしたと思う人はないでしょう。火事は起きないほうがよいのです。万が一のリスク対策として保険に加入するのです。

ほんとはそれと同じことなのですが、社会保険になると、そのように考えられないことが多いようですね。

孝子さんは、これからどのくらいの収入が必要なのでしょう。

もう十分にお金もあり、今の仕事を辞めたいと思っているなら、退職もいいでしょう。 しかし、まだお金が必要で、仕事を続けたいと思っているのなら、9万円の年金のために仕事を辞める必要もないのでは?

孝子さんは65歳になる前に退職を考えてもいいのです。
今後、法改正があるかもしれませんが、65歳の少し前に退職すると、年金も全部、雇用保険の給付も全部受け取ることができます。

また、65歳以降も働けるのであれば、働いてもいいのではないかと思います。
何のために働くのか、今からどのくらいお金がいるのか、それを考えずして、今後の計画はありません。損得だけで考えられません。

私は、それをアドバイスしたいと思っています。

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■□■ お知らせ ■□■

●FP専門家ネットワーク「マイアドバイザー」にてコラム掲載中

「年金ミステリー」
年金のミステリアスな世界をお届けします。
http://www.my-adviser.jp/column/index_cat.php?cat=5

●書斎りーぶる主催 「やさしくためになる すがのみわこの くらしとおかねカフェ」

毎月、くらしとお金にかかわるテーマでお話しています。
次回は2014年3月19日(水) 19:00〜20:30 
福岡市中央区天神 「書斎りーぶる」にて 参加費500円(コーヒーとクッキー付き)
今回のテーマは「退職時に知っておきたいお金のはなし」

●アサヒSR年金研究会からのお知らせ

アサヒSR年金研究会では、年金を勉強したい方のための支援等を行っています。
次回、福岡での勉強会は4月12日(土)13:00〜16:30です。
テーマは「事実婚者の遺族年金請求代行業務の手順」
講師は社会保険労務士 小林賢介先生(大阪会所属)です。
会員は無料。会員外のオープン参加も歓迎します。
会場は福岡市中央区赤坂 中央市民センター