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知っておきたい年金のはなし    第330号 2014年10月21日発行

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年金制度は複雑すぎますが、私たちにとって身近な制度です。

そのため、マスコミ等でいろいろな情報が出されます。

年金相談を受けるとき、「テレビで聞いたけれど・・・」と言われる方が多いです。
確かに、報道された内容は正しくても、それが自分に当てはまるかどうか、わかりません。
勘違いで損をする人も多いものです。

遺族年金を受け取っている方からの相談もよくあります。

亡くなった夫の遺族年金と自分の老後の年金は、両方受け取れないと思いこんで、受け取れる年金まで受け取っていない人もいます。
里美さんもそうでした。

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第330号 死亡した夫の遺族年金と自分の老後の年金
★★★ 両方はもらえない? ★★★
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里美さんは53歳のときに、会社員の夫を病気で亡くしました。
上の息子は23歳(社会人)、下の娘は17歳(高校2年生)でした。

夫は会社の定期健康診断で病気がみつかりました。その後休職して治療に専念していましたが、病気の進行は早く、休職中に亡くなりました。

死亡後は、会社の担当者が協力してくれて、いろいろな手続きをすませました。
遺族年金の手続きもできました。

里美さんには、高校2年生の娘がいたので、子どものいる妻としてい遺族基礎年金、会社員の夫が死亡したことにより遺族厚生年金を受け取ることになりました。

遺族年金額は娘が高校を卒業したときに減額されました。

その後、年金額は大きく変わらず、里美さんは65歳になりました。
ところが、年金額の通知が届き、遺族年金が急激に減額されたのです。

里美さんにはそのわけがわかりませんでした。あてにしていた年金です。

●妻が受け取る遺族年金

在職中の夫が死亡したときに、子どものいる妻は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れます。

●遺族基礎年金

遺族基礎年金は子どもが18歳になった年度末まで、つまり高校を卒業するまで受け取れます。
高校を卒業すれば、遺族基礎年金約77万円がなくなります。

●遺族厚生年金

遺族厚生年金は、再婚しない限りは受け取れます。
そして、子どもが高校を卒業したとき(18歳の年度末)に、妻が40歳以上であれば、遺族厚生年金には中高齢寡婦加算約58万円が加算されます。

●差し引きすれば

遺族基礎年金がなくなっても、中高齢寡婦加算が上乗せされるので、差し引きすれば、約19万円の減額にとどまります。

●60歳になったとき

妻自身にも厚生年金加入期間があり、60歳から自分の老齢厚生年金を受け取れる人は、60歳で自分の老齢厚生年金か、遺族厚生年金か、選択することになります。

●基本的には金額の多い方を

遺族厚生年金が多ければ遺族厚生年金を選択します。

ただし、老齢厚生年金が多くても、遺族厚生年金を選択したほうが有利な場合もありますので、注意してくださいね。

●もらえないのなら手続きしなくていい?

遺族年金を受け取っているため、自分の老齢厚生年金を受け取れないのなら、老齢厚生年金の手続きをする必要がないと思う人もいます。

しかし、それは間違いです。

●手続きはする

手続きはしておきましょう。
それは65歳以降に備えるためです。
(国民年金加入期間のみ人は65歳で手続きします)

●65歳になったとき

65歳になると、中高齢寡婦加算はなくなります。
そのままでは58万円の加算がなくなり、受け取る年金額が少なくなります。
まさに里美さんはこの状態だったのです。

●老後の年金の手続きをすれば

自分自身の老齢基礎年金が受け取れます。すなわち、遺族年金の急激な減額を防げます。
老齢基礎年金と遺族厚生年金という組み合わせで年金を受け取ることになります。
(もともと老齢基礎年金の権利がない人はもらえません)

●老齢厚生年金と遺族厚生年金

自分の老齢厚生年金の権利がある人は、まず、自分自身の老齢厚生年金を受け取り、計算上の差額を遺族厚生年金として受け取ることになります。

(計算については省略します)

●65歳以降は自動計算

65歳以降の老齢厚生年金と遺族厚生年金は選択ではなく、自動的に年金額が決まります。

実際の年金額が気になる人は、年金事務所で問い合わせましょう。

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このような仕組みに気がついていない方はおられませんか。

遺族年金を受け取っている人も、老後の年金を手続きする必要があります。
65歳まではいずれかを選択しますが、65歳以降は併せて受け取れます。
手続きしないと老齢基礎年金を受け取れず、損をしてしまいます。

気が付いたら手続きしましょう。
年金は5年前までさかのぼって支給されますので、5年以内なら大丈夫。

ただし、さかのぼっての手続きはめんどうなこともあります。
支給開始年齢がきたら年金の手続きをすると覚えておいてください。

「種類の異なる年金は両方もらえない」が原則です。
しかし両方もらえることもあるのです。
やはり、年金は複雑ですね。

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■□■ お知らせ ■□■

●アサヒSR年金研究会からのお知らせ 

アサヒSR年金研究会では、年金を勉強したい方のための支援等を行っています。
今回は社労士の方を対象とした内容です。
福岡会場 11月3日(祝日)13:15〜16:45
「障害年金の請求代行作業を引き受ける前の相談・契約・事例からみた相談」
講師は社会保険労務士 小林賢介先生(大阪会所属)です。
会員は無料。会員外のオープン参加も歓迎します。(非会員は5,000円)
会場は福岡市中央区赤坂 中央市民センター
問い合わせはこちらから↓
http://www.asahi-sr.com/

●FP専門家ネットワーク「マイアドバイザー」にてコラム掲載中

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