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知っておきたい年金のはなし    第333号 2015年2月9日発行

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1月末に27年度の年金額が発表されました。
「年金額は下がっていくばかり、上がることはないでしょうね」という、嘆きの声を聴くことが多かったのですが、27年度は上がります。

でも、この裏にはからくりが・・・
今回は、上がっても、上がらない年金額のお話です。

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第333号 27年度の年金額アップ
★★★ 上がっても上がらない ★★★
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今年63歳になる真知子さん。
60歳から老齢厚生年金を受け取ってきましたが、毎年、年金額が下がります。
もともと多くない年金が下がる一方では、がっかりです。
病気になったら生活していけるのかしらと心配になります。

さて、真知子さんは、最近、4月から年金額が上がると聞きました。
上がらないと思っていたので驚きました。
暮らしはよくなるのでしょうか。

●年金と物価

年金は物価と深い関係があります。

●昨年の物価は上昇

昨年は、食料品など、日常必需品の価格が上がりましたね。
発表された物価変動率は2.7%です。(26年平均の全国消費者物価指数による)

●物価が上がれば年金も上がる?

物価が上がれば年金額も上がる。これは公的年金の良さとも言えます。

●物価以外も年金額に影響する

ところが、年金額の決め手は物価だけではありません。
名目手取り賃金変動率という、わけのわからないものが、年金額に影響します。
賃金の伸び率とイメージしてください。

●27年は賃金の伸び率で改定

年金額の改定には決まりごとがあります。
物価変動率と名目手取り賃金変動率を比べて、物価の変動が大きい場合は、名目手取り賃金変動率で改定するということになっています。
物価変動率は2.7%ですが、名目手取り賃金変動率2.3%によって改定されます。

●スライド調整率

スライド調整とは、公的年金に加入する人の数が減ったり、平均余命が伸びたりすると、年金額を減額する仕組みです。(マクロ経済スライドと言われる仕組みです)
今後、高齢社会が進むと年金額が減額されることになります。

●初めて実行

マクロ経済スライドは、今回、初めて実行されます。
0.9%減額です。

●過去に多く支給していて年金の減額

さらに、過去に年金額を下げなかったときの分をとして、0.5%が下がります。
「特例水準の解消」と言われるものです。
そんなにたくさんの年金を受け取っていたなんて、思いもしませんが。

●0.9%アップ

2.3% マイナス0.9% マイナス0.5%
結局、本来は2.3%年金額が上がってもよいのに、そこから、マイナスしていき、結果として0.9%のアップにとどまります。

●私の年金はどうなるの?

自分の年金額が0.9%増えるというわけではありません。
難しい計算をします。人によっても異なりますので、一律0.9%ではありません。
ちょっと増える程度と理解してください。

●暮らしはきびしくなるということ?

物価が上がったけれど、それに伴って、年金額は上昇していないということなので、使えるお金は少なくなるということですね。

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「名目手取り賃金変動率」とは、わかりにくい言葉です。

年金額改定のしくみを説明するのに、「名目手取り賃金変動率」という難解な用語を使わずに説明できるか考えましたが、結局、使わざるを得ませんでした。

上がると思っていなかった年金額が上がってよかったということではありません。

これまで実行していなかったマクロ経済スライドを実施させているのです。
年金は上がったけれど、暮らしはきびしくなるのです。
見かけの数字ではなく、なぜ、こうなるのかをしっかりみておきたいと思います。

※ 参考までに今年の数字です。

老齢基礎年金 780,100円(年額)
加給年金額 224500円(3人目の子 74800円)
中高齢寡婦加算 585,100円
本来水準の改定率 0.999
在職老齢年金の計算 46万円は47万円に改定(28万円は変更なし)

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