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知っておきたい年金のはなし    第335号 2015年5月7日発行

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10月からいよいよ共済年金が厚生年金に統合されます。

共済年金を受け取っている人、これから受け取る人は、年金はどうなるのだろう、減らされるのではないかと心配されているでしょう。

共済年金以外の人は、あまり関係ないなあという感じでしょうね。
でも、まったく関係ないこともないのです。
影響もあります。

共済年金の厚生年金への統合については、今後もメルマガで取り上げますが、今回は、離婚にまつわるお話をお届けします。

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第335号 共働き夫婦の離婚
★★★ 夫は公務員、妻は会社員 ★★★
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菜々美さんは57歳。まもなく60歳定年を迎える夫と離婚協議中です。
原因はいろいろ。

菜々美さんは、ずっと共働きでがんばってきました。
子ども2人は成人しましたが、夫婦のすれ違いがだんだんと大きくなっていきました。

菜々美さんは、60歳定年を前に退職するという夫とは、いっしょに暮らしていけないと思いました。

妻からの離婚に夫は驚いていましたが、離婚することには合意が得られました。
ところが、家をはじめとして、財産の分け方では、まとまりません。
夫は妻から離婚を言いだされて、それに財産まで持っていかれるとはとんでもないことだと譲りません。
菜々美さんは家の名義を自分にすることと、年金分割を条件にしています。

菜々美さんも働いてきましたが、ずっと公務員であった夫の給料のほうが多く、年金にも差があります。
菜々美さんは出産や子育てが給料にも影響しています。

菜々美さんは、夫婦の年金の差額は受け取れると聞き、少しでも老後のために年金は増やしておきたいと思うのでした。

共働き夫婦の年金分割はどうなるのでしょうか。

●離婚時の年金分割

離婚時の年金分割では、1階部分の年金(老齢基礎年金)は分けられませんが、2階の年金(報酬比例部分の年金)を分けます。

●具体的には?

専業主婦と会社員の夫の場合、専業主婦には収入がありませんから、夫が受け取った収入を最大で50%に分けて、それぞれに収入があったとみなして、年金額を計算するというものです。
50%に分割するということは、夫の収入の半分を妻の収入とみなして年金額を計算するということです。

●共働きは?

お互いの収入の差(そこから生じる年金額の差)を分けるということです。
わかりやすい例で言えば、夫の給料が40万円、妻の給料が20万円であれば、差額を半分に分かる(分割の割合が50%の場合)、つまり、夫も妻も30万円の給料であったものとして年金額を計算するということです。

●収入がまったく同じだとすれば?

まったく同じということはありえませんが、まったく同じなら年金分割も意味がないということです。差がなければ分けられません。
仮に、夫の給料が40万円、妻の給料が40万円であれば、差がないので分けられません。

●共働き夫婦の年金分割の効果は?

同じくらいの給料を受け取っているというような場合は、分割しても増える額が少なければ効果がありません。

●労力を使い分割する意味はある?

離婚は結婚よりも大変です。
ほとんど増えない年金であれば、労力を使う意味はあまりないでしょう。

●共済年金

共済年金も離婚分割のしくみは同じです。
ところが、菜々美さんのように、夫が共済年金、妻が厚生年金の場合は違うのです。

●菜々美さんの場合

菜々美さんが共済年金へ分割を請求すると、菜々美さんには共済年金の加入がありませんから、夫の共済年金を分割することになります。
つまり50%ということで合意が成立すると、専業主婦と同じように、菜々美さんは夫の年金半分を受け取れることになります。

●菜々美さんの厚生年金はどうなる?

共済年金への請求だけでは、菜々美さんの厚生年金は自動的には分割されません。
夫が何もしなければ、菜々美さんは夫の年金半分と自分の年金を全部受け取れることになるのです。

●なんだか不公平ですね

これに気がついた夫は、夫から妻の年金分割を請求すればよいのです。
そうすると、夫は菜々美さんの年金半分を受け取れる可能性があります。

●請求は別々

共済年金と厚生年金ではそれぞれに請求をしないと、お互いの年金が分割できないということですね。

●厚生年金への統合後は

10月以降、共済年金は厚生年金へと統合されますので、このようなことは生じません。
共働き夫婦はいずれも厚生年金となりますので、どちらかが請求すれば、お互いの収入を合わせて年金分割するということになります。

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気がつくとは思います。
しかし、菜々美さんの夫が気づかなければ、菜々美さんは自分の年金は全額確保し、夫の年金は半分もらうというようなことが、制度上起こります。

知らないということはこわいことです。
それでよいという人は別でしょうが、あとで、知らなかった、知っていれば請求したとなると大変です。

年金分割は離婚後2年以内に請求しなければなりません。

共済年金が厚生年金に統合されると、このようなことは解消されます。
離婚するなら9月までとはちょっと考えすぎでしょうけれど、そんなことを考える人も出てくるかもしれません。
※お断り
メルマガでは、わかりやすく説明するために、あえて専門用語の使用は避けています。
「標準報酬月額」とするべきとことを「収入」などと表現しています。

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■□■ お知らせ ■□■

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6月27日(土)10時〜16時
福岡市中央区天神 書斎りーぶる 2階セミナールーム
年金の基礎を復習しながら、法改正などしっかりチェックできます。
共済年金の厚生年金への統合についても解説します。
FP継続教育研修に対応しています。
講師は菅野美和子です。
http://www.kyoukara.jp/school/detail.php?id=87

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7月12日(日)13:15〜16:30
当日のテーマは「ハッピーリタイアに向けたライフプランセミナーの行い方」
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個別指導や資料提供もいたしますので、興味のある方はホームページをご覧下さい。
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