シングルマザー・子連れ再婚

シングルマザー

結婚する、しない、子どもを生む、生まない、人それぞれです。どんな人生であっても、自分で選択した人生なら、それが一番です。

結婚した後も幸せな生活が続くと一番よいのですが、思うようにいかないこともあります。これからを考えて離婚を決意することもありますね。

結婚よりも離婚に、より大きなエネルギーが必要だと言われていますが、子どもがいればなおさらでしょう。

離婚時の問題は、女性にとっては、子ども、住まい、仕事だと言われています。子どもを育てていけるだけの経済力があるかどうかは、離婚への決意に大きな影響を与えます。新しい人生を歩みたいのに、ただ、お金のためだけに、思うような人生を選択できないことは悲しいことですね。

現在、シングルマザーを応援してくれる制度はあります。シングルマザーといっても離婚した人ばかりではなく、夫と死別した人、未婚の母など、その立場は様々ですが、今回は、シングルマザーにスポットをあてて、どのような支援制度があるかについてお話ししていきます。

★離婚を決意するとき

2人の小学生の子どもがいる香織さん。家庭裁判所でようやく調停離婚が成立しました。子どもの親権も取りました。
でも、ここに至るまでは、長い道のりでした。
「いったい何があったの?」とまわりの人たちは心配してくれました。離婚の理由をたくさん挙げることはできます。でも、ほんとの理由はひとつだけです。「もうこれ以上、この人とはいっしょに生きていけない」ということでした。

わがままと言われかねないので、人に話すときはいろいろな理由をつけていましたが、生活の中でのすれ違いが重なり、夫と別れて生きていく道を香織さんは選んだのです。

しかし、離婚を決意するには、たくさんの困難がありました。出産のために退職し、その後専業主婦を続けてきた香織さんには、ふたりの子どもを育てていくだけの経済力がありませんでした。子どもを愛する気持ちはあっても、気持ちだけでは生活していけません。お金がなくては生きていけません。現実的な生活を考えて、香織さんは悩みました。

香織さんはその問題を解決するために、いろいろと努力を始めました。まず、仕事をみつけました。子育てしながら働くので、職場に迷惑をかけることもあろうかと思い、その分しっかりと認めてもらえるように、通信教育で必要な資格にもチャレンジしました。そして職場で上司や同僚の信頼を得るようになり、ここで働いていけそうだと感じたときに、香織さんは離婚の話をすすめました。

離婚の話し合いは難航しました。家庭裁判所での調停となりました。その間に、子どもたちを連れての別居も実行しました。そして、時間はかかりましたが、ようやく離婚が成立しました。その間、香織さんは一生懸命仕事をし、子育てをし、シングルマザーとして生きていく準備を始めていたのです。

離婚が成立して、香織さんはシングルマザーとして生きていくことになりました。そのため、シングルマザーを支援する制度も調べました。いろいろな制度を利用すれば自立していけるのではないかと、香織さんは、離婚が決まって、むしろ、晴れ晴れとした気持ちになりました。

★離婚後の健康保険

簡単に離婚が成立するケースは少ないでしょう。多くの場合、離婚には時間がかかります。エネルギーも必要です。とにかく別居し、離婚の話し合いをすることもあります。そんなときに、気になるのが健康保険です。

自分自身が勤め先で健康保険に加入している場合はよいのですが、夫の健康保険の扶養家族となっている場合、健康保険証が使えなくなるかもしれないというのは、とても心配なことです。病気がちの人にとっては、「健康保険証がない」ということに、恐怖に近いものを感じるでしょう。

子どもの健康保険証のことも気になります。共働きの夫婦の場合、子どもが夫の健康保険の扶養家族になっているというケースが多いでしょう。

共働きでは、子どもをどちらの扶養家族としてもよいような気がしますが、そうではありません。健康保険では、収入の多い方の扶養家族になるというのが原則です。

税法上は、子どもをいずれの扶養に入れてもよいし、また、ふたりの子どもがいれば1人ずつ夫婦間で分けても問題ありませんが、健康保険はそうではありません。

離婚するときに、また離婚に向けて別居するとき、子どもの健康保険証をどうしようと考えてしまいます。

職場で健康保険に加入しているのであれば、自分の健康保険の扶養家族として申請します。その際、別居したこと、離婚したこと、扶養していることなどの証明を求められる場合もあります。住民票を異動し、住民票で自分自身が扶養していることの証明をすることも必要です。ただし、健康保険組合では取扱いが異なることもあるので、勤務先で確認してください。

国民健康保険については、住民票を異動して加入を申請してください。いろいろな事情がある場合は窓口で相談してみましょう。

DVによる別居のため、住民票の異動ができないなどという場合は、担当窓口で相談されることをおすすめします。

★児童扶養手当

シングルマザーが直接的に経済的な支援を受けられる制度として、児童扶養手当制度があります。児童扶養手当とは、離婚などによるひとり親家庭の生活の安定と自立の促進に寄与し、子どもの福祉の増進を図ることを目的として支給される手当です。支給額は子ども(18歳年度末まで)の数によって決まります。また、所得に応じて減額され、一部支給となることもあります。所得が基準を超えていれば全額停止です。この所得には別れた夫から受け取る養育費(8割)が含まれます。ですから、養育費が多いと、支給されないということにもなります。

収入が少ないときの手当は生活の支えとなります。香織さんも離婚成立後、手続きに行きました。単なる別居では支給されません。香織さんは、今は全額支給となっていますが、今後、支給を受けなくても暮らしていけるようになりたいと願っています。

児童扶養手当の申請は離婚が成立したらすぐに手続きしましょう。該当する場合は、申請の翌月から支給されます。月末に近い場合は、手続きを先延ばしにせず、月内に申請にいきましょう。

児童扶養手当は シングルマザーの所得額によって決まりますが、たとえば母と子が実家で暮らしている場合は、実家の家族の所得額も影響します。なぜなら、児童扶養手当は離婚後の生活援助の為、他に援助しなければならない人がいればその方を優先しなければならないからです。対処法として、実家で暮らす場合でも まったく別家計(母と子の離婚後の生活が実家での生活とは異なる事)であることを証明できれば児童扶養手当の支給が受けられることがあります。

児童扶養手当は、現在では、シングルマザーだけではなく、父子家庭の父親(所得基準に該当する場合)にも支給されるようになっています。

また、夫死亡による遺族年金を受給できる人は、児童扶養手当を受け取れません。

★ひとり親医療助成制度

ひとり親家庭の親と子ども等の通院・入院医療費の個人負担額を助成するのが、ひとり親医療助成制度です。

助成対象者は、ひとり親家庭の父又は母及び子ども、配偶者のない養育者及びその養育者が養育する父母のない子ども、父母のない子どもです。子どもとは18歳に達した以後の最初の3月31日までの子どもです。高校を卒業するまでの子どもと考えるとわかりやすいです。

ただし、所得によっては助成を受けられないこともあります。所得に応じで内容が異なったりします。また、市区町村ごとに異なります。

助成基準を児童扶養手当の一部支給と同様の基準としているところが多く、児童扶養手当が全部停止となると、ひとり親医療の対象外となってしまいます。このために収入調整をしているシングルマザーもあるのでは? 果してそれが、プラスになるのかどうかは別問題ですが。

香織さんは、この制度はありがたいと思います。限られた収入の中で、突然の病気やけがによる医療費は負担になります。自己負担が軽減されるので、安心して治療を受けることができます。

★就学援助金

就学援助金はシングルマザーに限ったことではありませんが、シングルマザーの場合、該当する可能性が高いでしょう。

就学援助制度とは、経済的に厳しい家庭に対して、自治体が学用品その他をサポートする制度です。具体的には、毎年必要な学用品代、給食代などの支給が受けられます。修学旅行などの費用についても援助があります。援助金を受けるには申請が必要ですし、所得制限があります。問い合わせ先は学校や教育委員会です。

★寡婦控除

手当の支給だけではなく、所得税でも、シングルマザーには負担が軽くなるように配慮されています。

シングルマザーの場合は特別の寡婦(特定の寡婦)として控除を受けられます。

特別の寡婦に該当する人は、離婚して子どもを養育するシングルマザーで、合計所得金額が500万円以下の人が対象です。離婚の場合は、子どもが独立したあとは、特別の寡婦とはなりませんので、子どもが扶養からはずれたとたん、一気に所得税が増えることもあります。夫と死別した人は、合計所得金額が500万円以下であれば、扶養親族の有無は問いません。

寡婦控除は27万円、特別の寡婦に該当する場合は、8万円が加算されます。この控除は「寡婦」ですので、女性に限った控除となります。

この控除を受けることで、所得税や住民税が軽減されます。この控除を受けるには、勤務先で「扶養控除申告書」を提出します。申告書では「寡婦」あるいは「特別の寡婦」に○をつけるようになっていますが、該当する人は忘れずに○をつけてください。そのための証明書は必要ありません。

簡単な手続きですが、この記載もれは意外に多いです。本人が申告しない限り、会社ではその人が寡婦に該当するのかどうかわかりません。

たったひとつの○のつけ忘れが税額に影響してきます。簡単なことであるだけに、注意が必要です。もし、申告書を提出するときに、○をつけ忘れてしまったという場合は、あとで確定申告をしてください。また、会社に「寡婦」であるということを知られたくない人は、年末調整のあとで確定申告をすれば税金は戻ってきます。

★シングルマザーのライフプラン

ひとことでいうと、「シングルにはあとがない」のです。夫婦であるということは、お互いに困ったときには支えあえるということです。

困ったときの支えをどう準備しておくか、それがシングルマザーのライフプランのポイントです。

いざというときのお金も準備しておかねばなりません。入っているお金と出ていくお金のバランスを考えながら、「残すお金」をどう確保していくのかを考えていかねばなりません。

勤め先で社会保険に加入している場合はよいのですが、パートの場合、条件を満たさず社会保険に加入できないこともあります。そのようなケースで、国民健康保険料は払っているけれど、国民年金の保険料は払っていないし、免除など何の手続きもしていないという人がいます。

あとのないシングルには老後資金の確保も大切なこと。子どもにお金がかかるとき、老後の生活のことまで考えられないかもしれませんが、国民年金の保険料は納付しておきたいものです。

せめて、免除申請はしておきましょう。いったん免除制度を利用すると、免除が認められる間はずっと免除のままになってしまいがちです。しかし、収入が増えてきたら、どこかで免除に区切りをつけたほうがよいかもしれません。

もともと国民年金だけでは、老後の生活は不十分です。免除期間が長いと、少ない年金がさらに少ないものになってしまいます。今は年金なんて関係ないと思っていても、どんな老後がやってくるかはわかりません。

また、年金制度へ加入することで、病気やケガでの障害年金、万が一自分が死亡した場合に残された子どもたちへの遺族年金という保障が準備できます。家族のためにと考えて、必要な手続きをしてください。

子どもにかかるお金、まさかのときのお金、どんなお金が必要か検討しておきましょう。子どもの教育費として少なくないお金が必要になりますが、奨学金制度を利用するのもひとつの方法です。何もかも親が準備するのではなく、「勉強したいのならお金のことも考えて」と奨学金利用について話し合ってみましょう。奨学金はそれを受け取った子ども自身が働いて返すのが原則です。教育ローンよりもまず奨学金を考えてみましょう。

まさかのときのお金も用意しておきたいものです。病気になったとき、働けないときの資金をどのように準備しておくかも合わせて考えておきましょう。

これらのことも含めて、これからのプランをたててみるといいですね。

★子連れで再婚

シングルマザーが再婚を考えることもあるはずです。そんなとき、シングルマザーにとっては、やはり子どものことが気がかりとなります。再婚して、子どもが幸せになれるだろうかと。新しい父親とうまくやっているのだろうかと。

こればかりはわかりませんが、再婚を決めたら、子どもたちが理解してくれるように努力をかさねていくしかないでしょう。子どものために自分の夢をあきらめないで、努力してみてください。子ども自身も、母親が一生懸命自分を育ててくれたことはわかるはず。きっと母親の幸せを理解してくれると思います。

再婚する場合、再婚相手と子どもが養子縁組を結ぶことがなくても、当面問題は生じません。養子縁組をしていなくても子どもは夫の健康保険の扶養家族になることができます。姓が異なっていると健康保険の扶養家族にはれないと思っている人もありますが、住民票で「妻の子」と確認できれば大丈夫です。所得税においても、夫が妻の子を扶養親族とすることも可能です。

ただし、再婚すると、児童扶養手当は打ち切りとなります。夫死亡による遺族年金を受給していた人は、再婚によって遺族年金の権利はなくなります。遺族年金の権利は、一度なくなってしまうと、復活することはありません。

シングルマザーを支えてくれる社会保障制度は、それだけでは充分ではないにしても、活用できるものはしっかり活用しましょう。そして前へと進んでいけるといいですね。

社会保障制度の充実も大切なことですが、シングルマザーにとって、自分を助けてくれるのはまわりの人たちです。困ったときに助けてくれる友人やお隣さんなど、支え合いが大きな力となります。

制度が充実すればよいのはいうまでもありませんが、人と人との助け合いがあってこそ生きていけます。まわりの人とのつながりを大切にしていきたいものですね。これはシングルマザーに限ったことではありませんが。