SOHOと社会保険

第1話 個人事業主の健康保険 その1

任意継続か国民健康保険か、選び方の基準は?

会社に所属しているときは、保険や税金などすべて「会社まかせ」でよかったですね。ところが、SOHOとして自分で仕事を始めるということは、それまで「会社まかせ」だったことがすべて「自分まかせ」になるということなのです。

まず、気になる退職後の健康保険についてお話しましょう。病気になったら、ただちに必要なものが保険証ですから。

退職後の健康保険には3つの選択があります。
@ これまでの健康保険を任意継続する(2ヶ月以上健康保険に加入していた人)
A 国民健康保険に加入する
B 扶養家族になる

今回は、多くの人が該当する@とAについて、お話しします。
どちらを選んだらよいのかという問題です。何を基準に判断すればいいでしょうか。
ずばり、それは保険料です。どちらがより保険料の負担が少なくてすむかということで判断しましょう。
まず、これまでの会社の健康保険を継続する場合の保険料は、退職時に自己負担している保険料の倍ですが、上限があります。政府管掌の健康保険では、22960円(介護保険に該当する人は26404円)が上限額です。上限以上の保険料を負担することはありません。

次に国民健康保険料は、住民登録している市区町村役場でたずねてください。市区町村毎に計算方法は異なり、前年の収入や世帯の人数に応じて保険料は決まります。
そして、どちらか、負担の少ない方を選びましょう。

その他のことは考えなくていいのでしょうか。

任意継続のメリットとして、退職後の出産手当金(産前産後の保障)や傷病手当金(病気やケガで働けないときの保障)がありましたが、健康保険法の改正により、2007年4月から、任意継続しても出産手当金や傷病手当金が受けられなくなりました。保険料以外のメリットはなくなってしまったと言っていいでしょう。

なお、病院にかかったときの自己負担はどちらでも同じです。

任意継続の場合、気をつけておきたいことは、退職後20日以内に手続をしなければならないということです。20日目が土曜日曜で、社会保険事務所がお休みになる場合は、必ず金曜日までに手続きしておきましょう。
そして、毎月10日までに保険料を払わないと、それでおしまい! 資格を失います。うっかり忘れたので、なんとかしてほしいといっても、なんともしてもらえません。また継続できるのは退職後2年間のみです。

では、よく調べてメリットのある方を選んでください。

第2話 個人事業主の健康保険 その2

仕事が起動に乗るまで、夫の扶養家族になれますか?

今回は、3番目の「扶養家族になる」について、今回は解説しましょう。
もちろん、独身の人や、家族にお勤めの人がいない場合は利用できませんが、家族に会社員など健康保険に加入している人がいる場合は、SOHOとして仕事が安定するまで健康保険はその扶養家族になるということもできます。

ここでは、夫あるいは妻の扶養家族になるというケースで、説明しましょう。夫が妻を扶養するというのはよくあることですが、その反対、つまり、妻が夫を扶養するということも問題ありません。

その条件のひとつは、今後の収入の見込みが130万円未満であることです。
パートなどで勤めている場合は、給与として受け取った金額すべてが対象ですが、自営業の場合は、売上げから経費を引いたものが130万円未満であれば、健康保険の扶養になれます。

むずかしいのは、過去の収入ではなくて、これからの見込みであるということです。この1年、130万円を超える見込みがなければよいのです。次第に収入が増え、年間130万円を超えそうになったときに、扶養からはずせばよいのです。

また、年収130万円未満ということの他に、扶養になる人の年収が「被保険者の年収の半分未満であること」という条件があります。しかし、半分を超えたら扶養になれないかというとそのように機械的に決められるものではありません。総合的に判断されますので、社会保険事務所などで相談してください。

政府管掌の健康保険はこのとおりですが、健康保険組合の場合は、その組合独自の基準がありますので、それぞれの組合で確認してください。

扶養になるという方法では、保険料はゼロ。一番負担のない方法です。配偶者の扶養になるということは、健康保険料の負担がないばかりではなく、国民年金においても自分で保険料を負担する必要のない第3号被保険者となれます。

ほんとは最初から売上げがあがり、どんどん収入を見込めれば、一番いいのですが、最初はきついなあというとき、起動に乗るまでは、扶養家族となって保険料を節約するというのもよい方法でしょう。

実は私も開業後しばらくは、この方法を選択し、とても助かりましたよ。


第3回 パートタイマーの社会保険加入

健康保険や厚生年金に加入しなければならない働き方とは?

仕事の仕方はいろいろ。パートとして働きながら、SOHOとして仕事もする、そんな仕事のスタイルもありますね。
今回は、パートタイマーの社会保険(健康保険・厚生年金・対象者は介護保険)の加入基準についてお話します。

よく間違われるのが、健康保険の扶養になれる条件と、働いている会社で社会保険に加入しなければならない条件です。健康保険の扶養と会社での社会保険への加入は、まったく別ものだと考えてください。
社会保険への加入基準は、1日の労働時間、1月の労働日数、どちらも正社員のおおむね4分の3以上あることです。やはりむずかしいのが、「おおむね4分の3」というところ。正社員が週5日、1日8時間の場合で例をあげてみます。

週5日、1日6時間という契約なら、社会保険加入。
週4日、1日6時間でも、社会保険加入。
週3日、1日8時間では、社会保険加入となりません。

ただし、これはひとつの目安です。一律にあてはめて機械的に決められるというわけではありません。

この加入基準をみると、収入額には関係がないということがわかります。
よくあるのは、収入が130万円未満なので、扶養家族になっていたほうがいいから、週5日、1日6時間以上働いているのに、社会保険には加入したくないというケースです。これはできない相談です。

その反対に、どうしても社会保険に加入したいという人もいます。130万円を超えたから社会保険に加入したいといっても、基準に達しないと、加入できません。
130万円を超えてしまい、扶養からはずれたのに、会社で加入もできず、結局、国民健康保険に加入ということもありますよ。

社会保険への加入は、「入りたい」「入りたくない」という本人の気持ちにかかわらず、条件に該当すれば強制加入だということを理解しておきましょう。

また、今後、法律は見直されていくので、この基準も変わっていくと考えられます。


第4話 個人事業主と年金

何かと話題の多い年金ですが、個人事業主は国民年金加入です。
配偶者の扶養になる場合は別として、SOHOとして仕事を始めたら、年金は国民年金の第1号被保険者。自分で保険料を納めなければなりません。
保険料は毎月14,100円。(平成19年度)
SOHOを始めたばかりで、これだけの保険料の負担は大変という場合は、そのまま滞納しないで、免除を受けられるかどうか、調べてみましょう。

所得によって、4段階の免除がありますので、どの段階の免除に該当するか、また、複数の段階に該当する場合は、免除方法も選択できるので、よく相談してください。免除を受けると、年金をもらう権利にもつながります。免除の割合によって、将来年金として受け取ることもできます。

30歳未満の場合は、若年者納付猶予制度といって、免除よりもゆるやかな基準で「納付猶予」を受けられます。納付猶予とは、今は保険料を納めなくてもいいけれど、将来(10年以内)ゆとりができたら納めることができるというしくみです。

一番まずいのは、滞納のままにすること。老後の年金は少しぐらい少なくなってもいいと思う人もいるかもしれませんが、年金は老後だけではありません。

障害年金や遺族年金もあります。自分が障害の状態になってしまったときには、障害年金が助けてくれます。また、死亡という場合でも、遺族基礎年金があり、残された子どもの生活を援助してくれます。

免除などきちんと申請をしておかなかったために、事故にあって重い障害が残ったのに障害年金がもらえない、夫が死亡しても妻や子どもに遺族年金がないという気の毒なケースもあります。

こういったことを考えて、保険料を滞納したままにならないように気をつけましょう。

それでは、老後の年金としては、どのくらいの金額になるのでしょうか。

年金制度は2階建てになっていて、サラリーマンや公務員などの場合は、上乗せの年金がありますが、自営業者は1階の基礎年金だけ。65歳からもらえる老齢基礎年金は、満額で792,100円。1月あたり、66,000円ほどです。滞納があれば、もっと少なくなります。
生活のベースとなる公的年金ですが、これだけで生活するのは、かなりきびしいですね。

私たちの生活のベースとなる公的年金。苦しいときは免除も利用して、滞納することなく、今後の生活に備えたいものです。そして同時に、その上乗せも自分自身で考えていく必要がありますね。